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『ショートショート』紅葉の季節~霜月掌編集

※三條凛花様の『tote』霜月掌編集さんに初参加させていただきます。文字数、プロフィールは文末にまとめて書いています。よろしくお願いいたします。

本文

 紅葉はもう少しで終わりかな。

 小枝を踏みしめて歩く足元には、黄色い落ち葉が敷き詰められていた。

 山道は、いつに増して寒さを感じて、私は襟元のチャックを上まで引き上げる。しかし、つた沼へと続く一本の歩道は観光客でまだまだ賑わいを見せていた。

 山の空気は独特で気持ちいい。四季により、空気にも違いを見せる。今は、夏の燃えるような草木の匂いは過ぎ去り、落ち着いた実りの香りを漂わせてた。

 私は、隣を歩く夫の純一を見つめる。一か月前に挙式を上げたばかりなのに、何だか最近少しギクシャクとしていて、何とか改善したいと思い、少し遠くまで訪れたのだった。見る限り、つた沼の紅葉はうっとりする程に満開だった。

「ねぇ、すごい紅葉。きれいだね。」
「ああ、そうだな。」

 純一は、言葉が少ない。出会った頃は、もっと会話が超絶で言葉が尽きることがなく一緒にいてずっと楽しかったのに、どうしてなんだろう。不安が過き、自然とその視線が上から下へと軌道を描くが、私はその足元に釘づけになった。

 「あっ、栗。」

 純一の足元に栗が一つ落ちていたのだ。見渡すと通りすがりの道端に、一口大の小さな栗の実がたくさん落ちている。

 見上げる大木はまだ辛うじて葉っぱが青い。たくさんの家族ずれがその小さな栗の実を拾っていた。まだ覚束ない足取りの小さな子供が近くの広場で一所懸命拾っている姿には、意識もしないのに笑みがこぼれる。

「かわいいね。」

 何だか、楽しそうで、私も一緒に参加していた。それをじっと見ていた純一が口を開く。

「それ、食べるの?」
「えっ、分かんないけど、美味しそうじゃない?」
「そうかな、・・・。山栗だろ。」

 純一の言う通り、正直に言って、美味しそうにも見えなかったが、通行人の邪魔にならないよう10粒ばかり拾い、向こう側へいる純一のもとへと急ぐ。

「あそこに、焼き栗屋さんがあるよ。買って帰るか?」
「焼き栗?どこ?」

 純一の指さす方向に、簡易テントを張ったお店が見えた。

 まだ熱い買い立ての焼き栗の袋を手に、車に乗り込み、栗を一粒純一に手渡す。純一は、「熱い、熱い」と言いながら器用に歯で二つに割り、中身を食べていた。

「どお?」
「・・・・普通・・。」

 ふーーん、

 私も食べてみるが、普通と言ったら普通?な味だった。現代人の私たちが贅沢すぎるのかもしれない。純一は、二つ目に歯を立てる。冷たい空気とあたたかな焼き栗。少しだけ、私の心は満たされる。

「俺達も、何年後かには、こういう風になっているのかな。」
「・・こういう風って?」
「・・・・」

 車の開けた窓からは、熟した葉っぱと土の交じり合った香りが通り過ぎていた。

「なあ、ボジョレーヌーボー買って帰るか?」
「えっ、急にどうして?」
「子供が出来たら、暫く飲めなくなるから。」

一枚のイチョウの葉っぱが、私の手元にひらひらと舞い降りた。

「焼き芋も買ってもいい?」


(1186文字)

主にショートショートを書いているアラフィフ主婦です。
talesでも執筆中。少し長めの小説を書いています。

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