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【ショートショート】青い時雨

「ああ、暑いな、今日の昼は素麵にでもしようかな。」

 何せ電気代の節約にと、冷房をつけたり消したりしているので、この暑さが堪らない。悲鳴を上げてしまいそうだ。

「やっぱり、冷房つけよう。」

 つけた途端に勢いよく回り出した冷房に、アパートの室内の温度がいっきに下がる。今度は下がりすぎた冷房の温度に頭痛がしてきた。
 私は冷え性なのだ。

 そういえば、この間丁度めんつゆを切らしていたのだったが、昨日仕事帰りに買い物をしたのに、買い忘れていたことを思い出した。

『土日はゆっくり休もうと思ってたのに、面倒くさいな』と思いながら床から立ち上がる。昨日忘れていた自分を恨めしく思いながら、外へ出た。

 雲一つない青い空が広がっている。しかし、暑いことには変わりがない。

 木々の青葉には、早朝まで降り続いていた深夜の雨が少しだけ残っていていて、太陽の光に反射してキラキラとして綺麗だった。

 アパート前の駐車場まで歩いていく。

 自分の車の定位置は道路の端だった。隅には、大きなアカシアの木が茂っていた。

「うわっ、冷たいっ、」

 突然、頭上からにわか雨が降ってきたのだった。
 空を見上げたが、雲一つない青空。だから雨が突然降るはずはない。気のせいのはずはないのだが・・・

 辺りを見渡していたその時、不意に、隣のアカシアの大木が目に留まる。暫し、その木陰に揺らぎまどろむ日の光に僅かな涼を感じていた時だった。

「・・・なんだ、青時雨か。ほんとに時雨みたい。」

 目の前の大きな緑の葉っぱからキラキラとした水滴が風に揺られて落ちていた。

 なぜか、急におかしくなり、ふふっと軽い笑いが漏れ出ていた。

 そこへ、偶然青年が通りかかるのが目に見え、目が合ったような気がして、急にいたたまれなくなった。いつからそこに居たのだろうか。
 その青年もくすっと笑っているのが見えたのだ。

 恥ずかしさに顔が赤くなっていく。
 私は急いて車に乗り込み、出発した。

 気を紛らわせるように車のラジオ電源に手をつける。
『・・・えー、アカシアの花言葉は、友情、感謝、秘密の恋などがありまして・・・』
 ラジオのパーソナリティの声を遥か耳の遠くに感じていた。




青時雨・・・木々の青葉に溜まった水滴が不意に落ちてくる、その様子を時雨に見立てた言葉

青い雨で調べたら、この言葉が出てきました。とても綺麗な言葉だなと思ったので、使ってみました。

#シロクマ文芸部

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