【ショートショート】あざといあの子は私の親友
「あざとい。」
私の推しのYouTubeを見せると、みんながだいたい同じ反応を示す。
黒板の端に置いてある黒板消しをカタカタ言わせながら、先生の書いた達筆な文字を消す。チョークの煙で噎せそうになりながら、私は、『次の授業は体育だ』、などと考えていた。
私は体育が大嫌いだ。今消している途中の数学の問題文よりも嫌いだ。体育館なんてなくなればいいのに。
「亜紀はいいよね。苦手な科目なんてないでしょ。」
私は、親友の亜紀に声を掛ける。亜紀は、次の体育の運動着をカバンから取り出していた。
亜紀はいつも成績優秀で運動神経もいい。私から見れば、天は2物も3物も与えたような人物だ。
そんな亜紀は「私にだって苦手な科目はあるよ。」とムッとした表情で答える。
「なになに、教えて」と興味津々に詰め寄る私に、「美術と音楽、」と小さな声で言う。そして
「それを言うなら、裕美だって英語と国語得意じゃない。テストの点数は私より高いよ。」とプンプン怒りながら、今出したばかりの運動着を涼しそうな麻袋に詰め替えていた。
黒板を消し終わって、慌てて体操着を準備する私は、「いや、そんなことないよ」と答える。私の場合、苦手と得意科目の差があり過ぎるのだ。
『あっ、ヤバ。そう言えば体操着洗い忘れてた。ずっとカバンの中に入れたままだった。どうしよう。』
体操着に鼻を近づけクンクン臭いを嗅いでみる。
『まだ大丈夫。先週は涼しくて良かった。』
なとど、思っていると、亜紀が気づき、
「また洗い忘れたの?」と。
呆れ顔の亜紀は、
「私の予備があるから、貸してあげる。」
とカバンからもう一つの体操着を取り出した。
「ちゃんと洗って返してね。」と一言を添えて。
きれいに折りたたんである体操着は柔軟剤だろうか。仄かに青林檎の爽やかな甘い香りがしていた。
短い昼休みの終わりを馴染みのチャイムが告げる。
私の心臓はバクバクしていた。
私の最愛の推しYouTuberは、二人組グループの右側の人。
亜紀はその推しの女の人とちょっとだけ似ているのだ。
了
片想い文芸部初めて参加させていただきました。
仄かな初恋、恋心を描いてみました。
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