映像美×バイオレンス×エロス『ヴァージン・パンク』梅津ワールドが令和で再起動
梅津泰臣監督ってビジュアルとフェティッシュな描写に独特のセンスがある方で、劇場の大画面でその世界にひたれるというのは最高の体験になりました。それが40分程度なのは短かい!それこそ90~00年代のOVAぐらいの長さだし、キャラクターや世界観の説明、ストーリーとしては序章で終わる感じです。特別料金で1700円。美少女ガンアクションというのはまさに梅津監督の領域ですし、A KITEを思わせる美少女殺し屋が雇い主を殺そうとする話なので、「作家性×映像美×バイオレンス×エロス」の伝統的OVAが好きだった人は必見だと思います。
舞台はイタリアっぽい赤い屋根が続く治安の悪い街で、体の一部を機械に入れ替えるとか科学技術が現代より進んでる世界みたいですね。最後の風呂のシーンにもカラフルなステンドグラスがありましたし、音楽もルパンで流れそうなジャズっぽい曲があったりして、ヨーロピアンで色彩鮮やかな攻殻機動隊って感じです。梅津監督って元々セルアニメ全盛の時代に作画演出で頭角を現した人ですから、尺が短くても“画面で語る”力はすごかったですね。
ただわたしとしては、ルパンで流れそうなスタイリッシュでおしゃれな音楽が他のガンアクションアニメで流れるってダサいと思うんですよね、だってルパンじゃないから。特に、主人公がミスターエレガンスを殺そうとしても電源を切られて目覚めるたびに違う場所にいるっていうシーンで流れた軽快な音楽は銃と血、暴力の世界には軽かったように感じました。最後の戦闘シーンの音楽は激しいガンアクションと合っててよかったんですけど。
それとわたしはミスターエレガンス以外、登場人物の名前をひとりとして覚えられなかったです。あと主人公たちの職業、なんとかハンターってのも聞き取れなかったです。尺が短い割に情報量が多いから仕方ないんですけど、世界観が独特なこともあって耳慣れない言葉(固有名詞)があると混乱してしまって。公式ホームページで調べたら主人公の名前が神永羽舞さんみたいなんですけど、羽舞はマイって読むんですか?公式ホームページは読みまでちゃんと書いておいて欲しいです。主人公たちの職業はバウンティハンターとありました。つまり懸賞首ハンターってことですね。義体がソーマディアで、主人公が属することになった組織がアルキメdeathみたいですね。ホームページを見ないとわからないじゃなくて、作品は作品のなかだけで完結すべきだし、観客の没入感のためにも最低限の情報は明確に伝えてほしかったです。
あと主人公がいた児童養護施設の園長は、子供の親を殺して児童養護施設を運営してたそうですが、それってどういうことですか?この児童養護施設が税金だか寄付だかでまかなわれててそのお金を横領してたんでしょうけど、わざわざ子供の親殺さなくてもあんな治安の悪い町なら孤児いっぱいいるんじゃないですか?主人公が過去に「実は施設によって親を殺されていた」という悲劇を背負っている、敵に復讐する動機をわかりやすくするという展開にしたかったんでしょうか。
でも音楽や脚本の方がわるいわけじゃないと思います。それを通したのは梅津監督なんですからね。梅津監督ってもともとビジュアルとキャラ作画の天才肌で、前から言われてますけど、1カット1カットは天才なのに、1本の作品として見ると解せないところがあるんですよね。
とはいえまだ序章ですからね。今後、生身の体で戦っていたちょっとヘタレっぽい男とバディになって、外見と実年齢が逆転してる男女の関係性が描かれるんじゃないでしょうか。義体だらけの世界で「生身を残してる」という属性だけでももう対比として機能してるし、あの男は象徴的なポジションになりそうですね、すぐ死ぬ可能性もありますけど。背景にある「義体技術の倫理」や「支配構造」みたいなテーマが深掘りされるのかもしれません。なんにしろ続きが早く見たい!梅津監督の絵が好きなんですよ。A KITEを見て、あの影のある雰囲気や女の子の輪郭の柔らかさと瞳の描写、アクションシーンの間の取り方、そういうのが唯一無二で好きになりました。『ヴァージン・パンク』で梅津ワールドが令和仕様で再起動した感じがしてワクワクしますね。とにかく続編が楽しみです。
ちなみに、成人女性の肉体を消して脳だけ機械の少女の体に入れて人形のように操り、チェリーちゃんと呼ぶというあの変態野郎、ミスターエレガンスは梅津監督自身ってことでいいんですか?自分の中の美少女フェチを過剰にデフォルメして悪役にしたんですよね、本当に流石です。大好きですよそういうの。
