ハスの葉から「汚れない素材」を考えた人、天才! ヨーグルトから万博アートまで活躍
はじめに
「ヨーグルトのフタを開けたら裏に中身がベッタリ」
スプーンで取ろうとしても少し残ってしまい、なんとなく損した気分になってしまう。誰もが経験する「フタの内側のヨーグルト問題」です。
ところが、ある日見かけた商品は「中身がつきにくいフタ」とあります。試しに買ってみると確かにフタの内側にはあまりついていない。

気になってその仕組みを調べたところ、「これ考えた人、天才!」と唸ってしまう仕組みがありました。しかも、なんと大阪・関西万博のアート作品でも同じ仕組みが活用されているというから驚きです。
池に浮かぶ「汚れない葉っぱ」から開発
内側にヨーグルトがつきにくい便利なフタ。
そのヒントは意外にも「ハスの葉」にありました。
ハスは泥水で育つにもかかわらず、その葉はきれいな緑色を保っています。「ハスは泥より出でて泥に染まらず」という言葉まであるぐらいです。

では、なぜ泥の中でも葉が汚れないのでしょうか。
ハスの葉はワックスのような物質で薄くコーティングされ、水や汚れがつきにくくなっています。
しかし、それだけではありません。
ハスの葉の表面を顕微鏡で観察すると、ミクロサイズの細かい突起がびっしりと並んでいます。
一見すると「ツルツルのほうが汚れにくそう」と思いがちですが、この「ミクロのデコボコ構造」が決定的な役割を果たします。
表面に水が付着する
↓
突起のすき間に「空気の層」ができる
↓
水が葉に接触せず、空気に浮いたような状態になる
↓
表面張力で水が球状にまとまる

その結果、ハスの葉に落ちた水は、ベチャッと広がらず、葉の表面にはじかれるようにしてきれいな球状になります。このように水を強くはじく性質を「超撥水(ちょうはっすい)」と呼びます。
球状の水滴は葉のわずかな傾きでコロコロと転がります。その際に泥やゴミを巻き込んで除去するため、ハスの葉はきれいに保たれるのです。
この現象はハスの英語名(lotus)から「ロータス効果」と呼ばれています。
ヨーグルトのフタに突起を作る
ヨーグルトがつきにくいフタは、このロータス効果を人工的に再現したものです。
フタの内側には、ハスの葉と同じようにミクロサイズのデコボコが無数に存在します。そのため、表面は曇っていて指でなぞるとザラつきを感じます。
ここにヨーグルトを少し垂らすと違いは明確です。
普通のフタではベチャッと広がるのに対して、この特殊なフタでは表面にはじかれるように丸みをおびた水滴状になります。そしてフタを傾けると転がり落ちていきます。

その結果、フタの内側にはヨーグルトがほとんど残らず、あの「もったいない」がかなり解消されるわけです。
池に浮かぶハスの葉をヒントに日常品のヨーグルトのフタに応用してしまったメーカーの設計者たち。自然の仕組みをうまく借りてくる発想は「これ考えた人、天才!」と言いたくなりますよね。
万博でもアートとして活躍
大阪・関西万博でもロータス効果を応用した技術が使われました。ブルーオーシャンドームに展示された「水が流れる大型アート作品」です。

この作品では白い盤面の上を水がゆっくりと流れていきます。
小さな水滴がビー玉のようにコロコロと転がったかと思えば、途中で合体して一本の筋になり蛇のようにうねりながら進んでいく。
まるで意志を持った生き物のような不思議な水の動きに思わず見入ってしまう来場者も多くいました。
この独特な動きの秘密がロータス効果です。
もともと水を強くはじくフッ素樹脂という素材を使い、さらにミクロサイズのデコボコを形成させることでハスの葉と同じ「超撥水」のコーティングをつくり出したのです。
興味深いのは、このデコボコ構造は「液状のコーティング剤を塗るだけ」で自発的につくり出すように設計されている点です。
そのおかげで、巨大な作品の表面を均一に処理することができ、こうしたスケールの大きい表現が可能になったのです。
この技術は、本来はアンテナに雪や水滴が付着したり、建物の外壁に汚れが付かないようにする目的で開発されたものでした。
ここに「不思議な水のふるまいを通じて循環を表現する」というアートの発想を掛け合わせたことで、まったく新しい価値が生まれたのです。
おわりに
ハスの葉というありふれた植物。
でも、そこから…
・便利なヨーグルトのフタを考える人
・塗るだけでデコボコ構造になる塗料を作る人
・それをアート作品に昇華させる人
世の中には天才がたくさんいて我々の生活は豊かになっていますね。
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