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実務担当者を守ってあげて

先日、以前勤めていた当時の職場の近況を聞く機会がありました。

そこで耳にしたのは、私が退職した後に起きた「優秀な社員たちの相次ぐ離職」という話でした。

特に印象的だったのは、新しい取り組みや人事制度・勤怠管理の改定に意欲的に取り組んでいた現場の社員たちが、相次いで会社を去ったことです。
彼女たちは親会社から出向してきた新しい部長のもと、組織を良くしようと愚直に実務を推進していました。
しかし、その結果待っていたのは、社内からの強い不満と摩擦でした。
推進役であった彼女たちが社内の批判を一手に浴び、最終的に評価されることもなく疲弊し、離職に至ってしまったのです。

この話には、単なる個人の離職問題では片づけられない構造が透けて見えます。
組織改革を進める際に、経営陣や管理部門トップが担うべき役割が果たされていない、典型的な構造的欠陥です。

勤怠管理の厳格化や人事制度の改定など、組織の仕組みを変える場面では、必ず社内から抵抗や不満が生じます。
従来のやり方に慣れた社員からすれば、手間の増加やプロセスの変化はストレス以外の何物でもないからです。
このとき、最も危険なのは「制度を変更・運用する実務担当者」が、現場の不満の矛先になってしまうことです。
実務担当者は制度を定着させようと説明や指導を行いますが、現場からは「なぜこんな面倒なことをさせるのか」と非難されます。
実務担当者には制度そのものを変える決定権はありません。
しかし、現場の窓口であるため、直接的に文句をぶつけられます。
組織のために努力しているにもかかわらず、社内からは嫌われてしまいます。
このとき、経営層からの適切な精神的フォローや正当な評価がなされない場合、改革を推進する意欲の高い優秀な社員ほど、この摩擦の渦中に投げ込まれ、擦り切れていくことになるのです。

実務担当者を社内の批判から守るために必要なのは、精神論ではなく、「不満を受け止める責任の所在」を明確にすることだと考えられます。
現場からの文句を受け止める役割は、実務担当者ではなく、意思決定を行った経営陣や管理部門の責任者が引き受けるべきものです。
改革に伴う不満の「防波堤」になること。
それこそが、管理職および経営陣が存在する意味の一つと言えるでしょう。経営陣、あるいは管理職には、自らが社内の「嫌われ役」を引き受ける覚悟が求められます。
制度変更の目的と必要性を経営トップの言葉として全社員に直接発信し周知すること。
「文句や意見があるならば、実務担当者ではなく、決定した自分に言え」という姿勢を社内に示すこと。
現場の批判から実務担当者を物理的・精神的に隔離し、彼女たちが業務をやり切れる環境を保障すること。
こうした姿勢の積み重ねが、防波堤としての機能を支えます。

同時に、経営陣、あるいは管理職が防波堤になるだけでなく、社内の不満や意見を実効的に吸い上げる仕組みを整えることも重要になってきます。
不平不満が現場の個人に向かって噴出するのは、不満を適切に伝える公的なルートが存在しないからです。
新制度に対する疑問や不満、改善案を匿名で提出できる仕組みを設け、集まった意見に対しては実務担当者ではなく経営陣、あるいは管理職が回答・説明を行う。
文句を言う相手を「実務担当者個人」から「組織の仕組み」へと逸らすことで、人間関係の悪化や個人のメンタル疲弊は大幅に減らせるはずです。
経営陣、あるいは管理職がそれらの意見を受け止めることは精神的に負荷のかかる作業ですが、組織の変革を推し進める以上、その負荷を引き受けるのが責任者の務めではないでしょうか。

今回聞いた元職場の事例は、組織の若返りや出向部長による新しい取り組みが進む一方で、それを支える実務の現場が崩壊していたことを示しています。
いくら魅力的な新制度や事業改革を掲げても、それを愚直に動かしてくれる優秀な実務担当者が離職してしまっては、組織の基盤そのものが揺らいでしまいます。

今回の事例のような事態がおこらないように、経営陣、あるいは管理職は、実務担当者を守ってあげてください、そう願うばかりであります。

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