素人のための法学入門 #9
すいません。1つ飛ばしてました。これが#9です。で、これ以降の#10, #11, #12は1つずつずれていきます。本当に申し訳ありません。
自然権の行使に対する三つの限界
先生 「自然権でも絶対にできないことはあります。」
学生A 「それは何でしょうか?」
先生 「それは、自然の力に対して自分達の今持ちうる力を超えた行使を行うことです。例えば原始時代でも、人は宇宙に行くことのできる権利を持っていました。でも、原始時代に宇宙に行くことは、不可能でしょう。また、マリアナ海溝のような深海にも行くことができる権利を持っていたはずです。しかし、それも同じように不可能だったでしょう。このように、権利はあるけれども、それが自然の制約によって不可能である場合のみ、自然権は制限を受けるのです。ただ、今では技術力が格段に上がっていて、どちらにも到達可能な状態になっています。」
学生A 「それは、仕方がないっていうだけなんじゃないでしょうか。」
先生 「そうです。仕方がない場合にだけ、自然権は制約を受けるということです。逆に言えば、できることは何だってやっていい。だから、自然権とは自然の力のみによって制約を受ける権利といってもいいでしょう。これが素の状態です。
法治主義は、法に基づかせることによって、自然権を制約します。ですから、法治主義の場合には、自然の制約と、法律の制約、2つの制約があるわけです。そのうち、法律は人間が作り出したものです。自然は言葉や飾りが通用しないので厳しいですが、人間が作り出したルールは、人間の気持ち次第でコロコロ変わってしまうのですよ。」
学生A 「自然権があるからこそ法律ができるのに、自然権がその法律の制限を受ける・・・。まるで自分が生み出した子に自分で押さえつけられているみたいですね。」
先生 「はい。そこまで理解していただけたならたいしたものです。」
学生B 「自然の力のみによって制限を受ける。そうか・・・だから自然権っていうのかな。」
先生 「生まれながらにして当然有しているという意味で自然に持っているということが元々の由来です。例えば、法律が人間に権利を付与することはあります。法律は人工的に作られたものですから、自然ではありません。よって、法律によって付与された権利は、自然権ではありません。法律によって認められた権利は、人工権と言ってもいいかもしれませんね。」
学生B 「なるほど。」
先生 「もう少し考えていくと、自然権国家は、他国を好き勝手にする自然権を持つのですが、この場合も一応制約がありますね。こういうことをすると、他国からの反発が来ます。しかし、戦争を起こして相手に勝ってしまえば、その制約を解除することができるわけです。」
学生A 「なるほど。自然の状態にあっては自然の制約。国を作ったら法律による制約。国際間では他国からの制約ということですね。」
先生 「その通りです。その制約を排除したいと考えるのが、戦争の一つの動機であるとも言えるでしょうね。ただ、国を個人と考え直すと、個人対個人の自然権を制限するルールとして条約を作ることになりますから、今となってはこれも法律の制約とカウントしてもいいかもしれません。戦国時代など、昔はもっとお互いに攻め込み合ってたでしょうけどね。」
この章のまとめ
① 自然権は何でもできる権利だが、自然の制約を持つ。それは人間の能力の限界によってもたらされる。
② 法治国家は、自然権を法律で抑制する。したがって、法治国家には自然の制約と法律の制約の二つの制約がある。
③ 自然権を持つ以上、他国に好き勝手なことをできる権利を持つのだが、相手の反発を乗り越えなければならないという制約がある。
