素人のための法学入門 #7
はじめに
このコーナーは、法律の素人がプロ並みの思考を持つことができるように鍛えるためのコーナーです。
前回の記事はこちら!気に入った方は拡散応援よろしくお願いします!
自然権国家と法治国家
先生 「アベノマスクどころではなく、今世界ではもっとすごいことが起きていますね。自然権は何でもしていい権利ですから、戦争を起こすこともできます。例えばロシアはウクライナに侵略をしました。この戦争の発動は、戦争を仕掛けた軍の兵隊たちにさえ事前に知らされていなかったことです。軍事演習だと嘘をついていたのです。プーチンがウクライナのネオナチに虐げられている人を救うため、という嘘の理由で、後から国民の同意を取り付けようとしました。」
学生A 「戦争を起こすことが自然権の行使であるとしても、だからといって戦争を起こしていいわけありません。ウクライナはロシアに反抗しているわけですよね。そして、ロシアの戦争開始は国際的に非常に非難を浴びています。これだと自然権を行使しても、ロシアにとっては不都合なことになるのでは?」
先生 「ロシアにとって、この戦争の開始は自分達にも痛みを伴うものであることは確かです。」
学生A 「ロシアを非難している国々はロシアに対して経済制裁を、ウクライナに対しては軍事支援を行ったんですよね。」
先生 「はい。ロシアは世界各国から厳しい経済制裁を科せられましたし、ウクライナには多額の資金援助、軍事物資の調達が行われ、今もそれは継続されています。」
学生B 「自然権の行使をしても、それが相手や周りにとって嫌がられるものだったら、自分達にしっぺ返しがくるんですね。」
先生 「その通りです。自然権の種類は、それこそ星の数ほど存在しています。その中でも、行使をする権利の内容によっては、他の自然権の行使者にとって不都合なことがあるのです。ですから、自然権の行使が不都合だと考える人は、その自然権の行使を止めるよう求めることがありますし、それでも相手が強行してくるような場合だと、激しく抵抗することもあるわけです。ちょうど最初にお話しした、食べ物を盗む人と盗まれる人の関係と同じですね。このように、お互いの自然権の衝突がある場合に、私たちの自然権が制約を受けることがあります。それをするのがルールの役割でした。」
学生B 「つまり、好きに商品を持っていこうとする人に対して、ちゃんとお金を払えと文句を言う人とが対立するわけで、その衝突を抑えるために、ルールをあらかじめ作っておく、ということが大切なんですね。」
先生 「はい。その法律のおかげで、商品を勝手に持っていくという自然権の行使にはストップがかけられたわけです。そして、もしそれでもルールが破られた場合、国による強制的な行為が介入することになるわけですね。」
学生A 「ですけど、戦争の場合は、個人と個人ではなくて、国と国なんですよね?一方的に攻撃をしかけてきて、じゃあやられたからやり返すということになっているようですが・・・、こういう時にもルールがあるんじゃないでしょうか。これをそのまま商品の例に当てはめると、取られたからじゃあ今度は私があなたのものを取ってやる、という形で、商品の奪い合いや壊し合いになっている状態ですね。」
先生 「ルールは一応あります。例えば、国連憲章2条4項は、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定しています。そして、ロシアもこの国際連合に加盟していますから、今回のウクライナ侵攻はまずこれに違反していますね。ロシアはウクライナに対して様々な攻撃的自然権の行使を行っています。ウクライナも、相手からかかってきたというだけで、今では犯罪とされている多くの自然権の行使を行っています。ロシアの侵攻がきっかけになったことは間違いありません。」
学生B 「でも、ウクライナは被害者ですから、仕方がないんじゃないんですか?ちょっと前に話した、正当防衛とか緊急避難みたいな感じだと思うんですけど。それに、どうして他の国はウクライナと共に戦争をするか、あるいは二つの国に入ってどちらの国にも強制的な力を行使しないのでしょうか?」
先生 「どうして他の国が介入できないのかは、ご自身で調べてください。
確かに、刑法は、正当防衛を個人に対して当てはめますが、国レベルでも同じように考えることができます。この防衛戦争はウクライナにとって正当防衛であると言えるでしょう。
自然権は国民が自分達の国に信託したものです。つまり、他の国については基本的に全く関係がないのです。今度は、国を個人と捉えなおしてみてください。そうすると、ロシアという個人と、ウクライナという個人が、互いに自然権の行使をしあっている状況だということがわかります。そしてお互いを傷つけあっている。しかしこういうことが起きると困るので、あらかじめ国際条約が結ばれるわけですね。」
学生A 「なるほど・・・。だからルールはルールでも条約と法律は違うのか・・・。それにしても、ロシアは本当に自由奔放に行動していますね。」
先生 「はい。殺人、強盗、強姦、誘拐、証拠隠滅、器物損壊、放火、他にも数々の条約違反など、国をあげた犯罪のオンパレードといっていいでしょう。これが戦争なのです。戦争になると、何でもありの自然権の実体がよく見えますね。」
学生A 「それもすべて、自然権の行使なんでしょうか?」
先生 「そうです。全て自然権の行使です。条約で禁止されている兵器の利用などは、自然権の行使が国際的なルールを破って行われた典型的な例ですね。日本も日ソ不可侵条約を破られた過去があります。」
学生A 「ロシアって、ルールとか関係ない国に見えますね。」
先生 「まぁ、間違いないですね。私もロシアの歴史を見てみますと、随分とルールを無視した行動が目立ちます。ルールは破るためにある・・・といわんばかりですね。」
学生B 「ロシアの中には、日本の憲法みたいなものはないんでしょうか?」
先生 「もちろんあります。しかし、ロシアはすぐに自分たちの都合のいいように憲法を改正してしまうのです。北朝鮮とかもそうですけど。」
学生A 「えっ~・・・。じゃ、結局はルールの意味がないのではないですか?」
先生 「そうですね。ルールは自然権の行使を抑えるためのものです。しかし、自然権の行使をするためにルールの方を変えてしまっている。まさに逆転しているわけです。」
学生B 「こんな国、どこからも信用されないんじゃないでしょうか。」
先生 「事実、近隣諸国では自ら兵役志願をする人も増えたようです。日本も北方領土をロシアに一方的に取られてしまった歴史があるうえ、間に海があるとはいえ、国境を接していますから、他人事ではありません。
国際的な非難を浴びているロシアですが、完全にどの国からも見捨てられたわけではなく、ロシアの味方をしている国も数十か国あります。」
学生B 「うわ~。そんなに!?」
先生 「ええ。中国や北朝鮮を見てみますと、ロシアと似たり寄ったりのことをしています。例えば香港は中国に飲み込まれるようにしてなくなってしまいました。最初は香港の意思決定機関を中国の息がかかった人にすげ替えたり、反発する香港の人に対しては国家の治安を乱すものとして処罰の対象とする法律を作りましたね。つまり、自分達の自然権の行使ができるように法律を作りました。」
学生A 「本当だ。似ている・・・。」
先生 「香港の200万人がデモに参加し反対の意思を表明していたのに、全く意に介さずという感じでした。もし民主主義であるならば、200万人が直接表明する意思を無視できるはずがありません。およそ全体の4分の1の人口です。デモに参加したくてもできなかった人は多かったでしょうし、調査では少なくとも6割が中国に反対していたと言われています。中国はこの民主的な意思表明をテロリストとして扱いました。1997年にイギリスから返還され、その後50年は香港の自治が認められるはずでしたが、2014年に突然無効だとされました。彼らは法治国家とは言えません。実質は自然権国家といえるでしょう。これは私が個人で名づけた言葉です。他にも、原始国家と言ってもいいかもしれませんね。」
学生B 「そうですね・・・。でも、自然権国家であるというのは、国の本来の姿なんですよね。」
先生 「その通りです。ロシアや中国も表向きは法治主義です。北朝鮮なんて国名に『朝鮮民主主義人民共和国』と大嘘を堂々と書いています。日本も法治主義国家です。しかしながら、国というものの本性は、どれも自然権国家なのです。日本も法治主義であることを維持できなくなれば、自然権国家としての顔をのぞかせるようになります。そして、もうそのようになってきています。一党独裁で野党が弱いというのも大きな理由ですね。」
学生A 「一党独裁はほとんど独裁者と変わりがないのでしょうか。」
先生 「そうですね。あまり変わらないと言っていいでしょう。」
学生A 「日本はアメリカの属国だと聞きます。ということは、結局私たちの意思が国に伝わっても、アメリカにとって都合が悪ければ変えられちゃうんでしょうか。」
先生 「同盟国というのは、建前だと思います。」
学生B 「日本の自然権は・・・自然権が他の国に抑え込まれている自然権ってことか。」
先生 「辺野古基地は沖縄県民の反対が相次いでいるにもかかわらず着々と進められているわけですし。沖縄の米軍基地の方が、沖縄県民の意思よりも大切だと言わんばかりですね。米軍による犯罪も多く起きていますが、日本は彼らを十分にさばけないのです。国が国民の自然権の信託によって成り立っているということを前提とすれば、こんなことは起きないはずです。」
学生A 「自然権を抑え込まれると、他国の自然権を思う存分行使されてしまうのですね。」
先生 「その通りですね。」
学生A 「アメリカがいるからこそ日本は守られてるって聞きますけど。」
先生 「同盟という名の質取りのように私は思いますけど。人質はいうことをきかないと人質を殺すぞ、だから言うことをきけ!というパターンです。一方、私たちがいないと中国をはじめとした国に侵略されるぞ!だから言うことをきけ!ということですね。どちらも、国の存命を天秤にかけて要求を呑むよう突きつけられているのと同じなのですよ。同盟は、お互いの国に完全な主権が認められた上で成り立つものです。片っぽがもう一方の主権を押さえつけて従わせるものや、相手に危機感を与えていうことをきかせるものではありません。」
学生B 「そうですね。」
この章のまとめ
① 憲法などの法律で国の自然権を制限する国家を法治国家という。逆に、自然権を行使するために法律の方を変えてしまう国がある。これを自然権国家という。原始国家でもいいかも。
② 自然権国家は国の本来の姿。
③ 自然権はあくまでも自分の国に対して信託がなされるのみ。したがって他の国との間では全く関係がない。もちろん自国以外の者に個人が自然権を行使する余地は自然権の性質から当然認められるが、国に信託を預けた以上はこれも制限される。
④ 個人と個人の間の自然権の行使では、法律に基づいた解決がなされるが、国と国との間では、条約に基づいた解決がなされる。
