「無職」という言葉を自分に使えるようになるまでに、時間がかかった話
「今、何してるの?」とLINEが来て、私はしばらく返信欄を眺めていました。4月から東京に単身赴任している、大学時代の同級生からでした。
こんにちは、じゅんです。
昔の友人からの何気ない一言ほど、今の自分を試されることがあります。
別に責められているわけではありません。近況を聞かれただけです。
それなのに、私はすぐ返せませんでした。
この記事は、「無職」という言葉を自分に使えるようになるまでの話です。
仕事を離れたあと、自分の状態をどう説明すればいいかわからない。
そんな引っかかりを持っている人に向けて、少し正直に書いてみようと思います。
会社員のころは、名乗る言葉に困らなかった
会社員だったころ、人に近況を聞かれて困ることはあまりありませんでした。
「今、何してるの?」
「〇〇会社で医療機器の開発をしてるよ」
それで会話は進みました。
細かい説明をしなくても、会社名と職種があれば、相手はだいたい受け取ってくれます。
もちろん、仕事の中身をちゃんと説明しようとすると長くなります。
でも、最初の一言には困りませんでした。
会社という看板は、思っていた以上に便利でした。
自分の代わりに、社会との接点を説明してくれていたからです。
名刺も同じです。
役職や部署名が書いてあるだけで、「私はこういう場所にいます」と言えた気になります。
当時は、それを特別なことだと思っていませんでした。
むしろ、当たり前に使っていました。
けれど、会社を離れたあと、その当たり前が急になくなりました。
人から「今、何してるの?」と聞かれたとき、出せるカードが手元にない。
その瞬間に、肩書きがなくなった寂しさよりも、言葉が見つからない心細さのほうが先に来ました。
返信欄に打った言葉が、どれもしっくりこなかった
同級生からのLINEは、夜に届きました。
たぶん仕事終わりだったのだと思います。
「今、何してるの?」
軽い文面でした。
大学時代の友人なので、変にかしこまる相手ではありません。
それでも私は、既読をつけたまま手が止まりました。
最初に打ったのは、たしかこんな感じでした。
「今はちょっと転職活動中かな」
悪くありません。
実際に転職活動はしています。
でも、送信ボタンを押す前に止まりました。
「ちょっと」と入れているあたりに、自分の逃げが見えました。
次に打ったのは、もう少しぼかした言い方でした。
「今はいろいろ準備してる感じ」
これも嘘ではありません。
AIの活用を続けたり、noteを書いたり、仕事の方向性を考えたりしています。
ただ、これだけ送ると、何か大きな計画がある人のようにも見えます。
実際の私は、そこまで整っていません。
さらに、こんな文も打ちました。
「フリーランスも考えたりしてる」
これも本当です。
けれど、言い切れるほど形になっているわけではありません。
返信欄の中で、私は自分を少しだけ良く見せようとしていました。
昔の同級生だからこそ、変な見栄も混ざります。
情けない話ですが、そこで一番打ちにくかった言葉がありました。
「無職」
この二文字だけ、指が止まりました。
「無職です」と言うのが、なぜこんなに重かったのか
「無職」という言葉には、妙な重さがあります。
辞書的には、仕事に就いていない状態を表すだけです。
でも、自分に向けて使うと、急に違う意味を帯びてきます。
ちゃんとしていない。
止まっている。
何者でもない。
そんな余計なイメージまで、一緒にくっついてくる感覚がありました。
もちろん、実際にはそこまで単純ではありません。
仕事を離れる事情も、人によって違います。
次を探している人もいれば、立て直している人もいます。
私の場合も、何もしていないわけではありません。
転職活動をしながら、AI活用や発信を続けています。
今後の働き方についても、毎日のように考えています。
それでも、収入がまだない。
所属先もない。
予定表に会社の会議もない。
その状態を外から見れば、たしかに「無職」です。
わかっているのに、言いたくない。
そこに、自分の中の抵抗がありました。
たぶん私は、「無職」と言った瞬間に、相手から低く見られるのではないかと怖かったのだと思います。
昔を知っている友人ほど、その怖さは少し強くなります。
学生時代の自分を知っている人に、今の不安定な状態を見せる。
それは、思っていたより勇気がいることでした。
送ってみたら、相手の反応は思ったより普通だった
結局、私は少しだけ言い方を変えて返信しました。
「今は無職で、いろいろ考え中」
かなり短い文でした。
でも、その一文を送るまでに、思ったより時間がかかりました。
送ったあと、スマホを伏せました。
大げさですが、少し身構えていました。
どんな返事が来るだろう。
驚かれるだろうか。
気まずい空気になるだろうか。
しばらくして、通知が鳴りました。
「そうなんや。いろいろあるよな」
「せっかく東京に単身赴任になったし、また近々飲もうや」
それだけでした。
拍子抜けしました。
励ましすぎるわけでもなく、深く詮索するわけでもない。
昔の同級生らしい、ちょうどいい距離感の返事でした。
その画面を見て、少し笑いました。
私は何をそんなに構えていたのだろう、と。
相手は、私が思っていたほど「無職」という言葉に反応していませんでした。
むしろ、そのあとに続く「いろいろ考え中」のほうを、自然に受け取ってくれた気がします。
そこでやっと気づきました。
重かったのは、言葉そのものではありませんでした。
その言葉に、自分でいろいろ貼りつけていただけでした。
状態を説明する言葉は、評価ではなかった
「無職です」と言うことは、自分の価値を下げることではありません。
少なくとも、今の私はそう思うようになりました。
もちろん、今でも少し抵抗はあります。
堂々と言えるようになった、とはまだ言い切れません。
でも、前よりは使えるようになりました。
それは、開き直りとは少し違います。
現実を雑に受け入れることでもありません。
今の状態に、いったん名前をつける。
そのうえで、次に何を考えるかを自分で持つ。
それくらいの距離感です。
会社員、求職中、準備中、フリーランス志望。
どの言葉にも、それぞれの意味があります。
ただ、そのどれにも収まりきらない時期があります。
私にとって、今がたぶんそうです。
だから最近は、無理にきれいな言葉へ置き換えなくてもいいのかもしれないと思っています。
「今は無職です」
「いろいろ考えています」
「次の働き方を探しています」
このくらいで十分な場面もあります。
相手にどう見られるかを気にする前に、自分がその言葉をどう受け取っているか。
そちらのほうが、意外と大きかったのだと思います。
おわりに
会社を離れると、仕事そのものだけでなく、名乗り方も一緒に失います。
それは、思っていたより小さくありません。
人に説明するたびに、自分でも今の状態を確認することになるからです。
でも、言葉は評価ではありません。
今いる場所を、とりあえず指差すための言葉です。
「無職」という言葉を使ったからといって、そこで自分が止まるわけではありません。
むしろ、変に飾らなかったぶん、次の話がしやすくなることもあります。
あの日、同級生に送った短いLINEを、私はまだ少し覚えています。
今の自分を説明するとき、どこまできれいに言おうとしているのか。
そう考えると、返信欄で止まっていた指の重さにも、少しだけ理由が見えてきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
私も試行錯誤しながら、毎日更新を続けています。
考え方の整理から、キャリアのこと、子どもとAIの付き合い方など、
同じように悩んでいる方の、小さなヒントになれば嬉しいです。
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