金融機関における「自己査定」と「格付」とは?ざっくり解説
はじめに: 銀行が融資審査を行う際によく登場するキーワードに「自己査定」と「格付」があります。これらは一体何を意味しているのでしょうか? 本記事では、金融機関ごとに細かな違いはあれど、その大まかな全体像をざっくりと解説します。
こんな方におすすめ:
銀行の融資審査で何を見ているのか知りたい経営者・財務担当の方
「自己査定」や「格付」という言葉を耳にしたものの意味がよく分からない方
銀行との取引で与信方針や融資条件がどう決まるか理解しておきたい方
自己査定・格付の全体像
自己査定とは、銀行が自社の融資先(債務者)の財務状況などを分析して、その貸倒リスクを 自己(各銀行の判断)で査定するプロセスのことです。一方、格付とは、その自己査定に基づいて債務者の信用度をスコア化しランク付けすることを指します。つまり自己査定と格付はセットで行われ、銀行はこれによって貸出先の健全性を評価しています。
ざっくりまとめると、自己査定・格付の目的や流れは以下の通りです。
・目的: 債務者の貸倒リスク(返済不能リスク)を測定し、必要な貸倒引当金を計上すること
・同時: 債務者の信用度をスコア化して内部的なランク(格付)を決定する。債務者区分に応じて格付けする。(例えばA1,A2,B1,B2,B3,C,Dなど)
・流れ: おおまかなプロセスは、
①決算書の徴求(提出してもらう)
②表面財務分析
③実質財務分析
④債務者区分の判定(格付の決定)
という流れになります
・区分: 自己査定の結果、債務者は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」などの区分(後述)に分類され、それに応じた格付が付与されます
・結果: そうして決まった区分・格付は、適切な引当金の積み増しや、今後の与信方針・融資条件、さらには回収方針の策定に反映されます(詳細は後述)
表面財務分析と実質財務分析
銀行は自己査定を行う中で、提出された財務諸表を 表面的な分析 と 実質的な分析 の二段構えで評価します。
表面財務分析:
まずは企業から提出された決算書の数字をベースに、その表面的な財務内容を分析します。損益計算書や貸借対照表の基本項目をチェックし、売上や利益の動向、借入金や資産の状況などを把握します。
実質財務分析:
次に、表面上の数字を補正して実質的な自己資本や返済能力を評価します。決算書の科目を額面通りに受け取るだけでなく、内容を精査して実態に即した評価を行うのがポイントです。具体的には、以下のようなプラス・マイナス要素を考慮して財務内容を調整します。
マイナス評価項目: 回収不能なおそれのある不良資産や実態の伴わない資産が計上されていないか、減価償却の不足によって資産価値を過大評価していないか、といった点を差し引いて評価します。
(例)
単年度減価償却不足~当該年のPLの利益から控除。・・・場合によっては実質赤字となる
減価償却不足累計額~実質自己資本から控除・・・場合によっては実質債務超過となる
プラス評価項目: 社長からの役員借入金(※返済義務の低い社長からの借入金は、実質的に自己資本とみなせる場合があります)など、財務基盤を実質的に補強する項目は加点要素として評価します。
返済原資となるキャッシュフロー: 利益だけでなく、実際に借入金の返済に充てられる現金収支(営業キャッシュフロー)が充分にあるかも重要なチェックポイントです。
債務者区分のイメージ
上記の分析を踏まえて、銀行は債務者ごとに信用リスクの程度を評価し、内部的な債務者区分を決定します。代表的な区分のイメージは以下の通りです。
正常先: 業績が黒字で財務状態に大きな問題がなく、借入金の返済も順調に履行できている企業(信用リスクが低い)
要注意先: 赤字が続いていたりキャッシュフローに不足が見られるなど、財務内容にやや不安がある企業。また、リスケジュール(条件変更)や返済の一時延滞が発生しているが、現在債務超過であっても将来的に改善できる見込みがあるケースなど、注意が必要な企業です(信用リスク中程度)。
破綻懸念先: 債務超過の状態が続き改善の見通しが立たないなど、このままでは将来的に債務履行が困難となり破綻が懸念される企業です(信用リスク高い)。
実質破綻先: 法的整理には至っていないものの、すでに資金繰りが破綻して、実質的に倒産状態にある企業です。場合によっては法的整理手続き直前の段階も含みます。
破綻先: 法的に破産手続き・倒産処理が行われている企業です。銀行にとっては回収不能が確定した状態になります。

※債務者区分の名称や細かな基準は金融機関によって異なる場合があります。上記はあくまで一般的なイメージです。
債権の分類(Ⅰ~Ⅳ区分)と貸倒引当金
債務者区分(格付)が決まると、それに応じて銀行は各貸出債権ごとに Ⅰ~Ⅳ のグループに分類します。これは「その債権がどの程度回収可能か」に基づく区分で、貸倒引当金を算出するための基礎となります。
Ⅰ 全額保全:
担保や保証(保証協会保証など優良なもの)によって債権額の100%が確実に回収可能と認められる債権。⇒この区分の債権については、貸倒引当金はゼロ(引当不要)とされます。
Ⅱ 一部保全:
債権の一部は担保・保証でカバーされているものの、一部は無担保でリスクが残る債権。⇒カバーされていない部分について、比較的低めの率で貸倒引当金を積みます。
Ⅲ 欠損見込:
担保評価額が小さく大部分が無担保となっているか、債権の元本に大きな欠損(毀損)が見込まれる債権。⇒将来の欠損見込み額に備えて高めの率で貸倒引当金を積みます。
Ⅳ 貸倒見込:
回収不能が確定しているか、もはや破綻状態にある債権。⇒事実上回収不能なので、債権額の100%を引当計上します(全額引当)。
このように債務者の格付(信用度)と各債権の保全状況を踏まえて、銀行は将来の貸倒リスクに備えるのです。
自己査定の結果はどう活かされるか
自己査定と格付の結果は、銀行の内部で以下のような重要な判断に直結します。
貸倒引当金の計上: 自己査定に基づき、債権ごとの貸倒リスクに見合った引当金を適正に積むことで、銀行決算の健全性・信頼性を確保します。
与信判断への反映: 評価結果は今後の融資方針にも反映されます。格付の高い先には追加融資を前向きに検討しますが、格付の低い先への新規融資は見送り、または貸出金利を引き上げるなど融資条件を厳しくするといった判断材料になります。
回収方針の決定: 格付によっては「要管理先」「危険先」などと位置付けられるケースもあり、その場合は債権回収専門の部署が中心となって、具体的な回収策の方針を立てることになります(例:担保処分の検討や追加保証の要請など)。
以上、すっごく簡単にではありますが、銀行における自己査定と格付の全体像を説明しました。専門用語を極力かみ砕いて紹介しましたので、まずは大枠のイメージをつかむ参考にしていただければ幸いです。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました! 自己査定や格付の流れを知ることで、金融機関が融資先をどのように見ているかのヒントになれば嬉しいです。今後、銀行との対話や財務改善に活かしてみてください。
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