夏休み世界一周のすヽめ(会社員でもできる世界一周)
地球を東西に1周する「世界一周」。「究極の旅行」とも称されるなんとも魅惑的な言葉だが、会社員をしていると「長い休みが取れず、夢のまた夢だ」と諦める人も多いようだ。実は短期間でも世界一周は十分可能だ。ではどのくらい楽しめるのか、考えてみた。

世界一周の歴史的な意義やその面白さについては拙著『8の都市からよむ「世界一周」の世界史』(日経ビジネス人文庫)もご参照ください。「はじめに」は無料で公開しています。
世界一周に何日必要か?
19世紀後半の汽船の時代には、地球を1周する移動だけで数ヶ月単位で時間がかかった。例えば、横浜〜サンフランシスコ間の移動には3週間程度かかったし、米大陸を横断するにもかなりの時間を要した。
1872年に発表されたジュール・ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』の主人公は期日通りの世界一周に成功するが、船が出航しないなどの足止めや乗り継ぎのスケジュールなども考えると、当時の世界一周には2〜3ヶ月程度は必要だったようだ。

ヴェルヌの小説に感化されて1889〜90年に世界一周を敢行した米国のジャーナリスト、ネリー・ブライは72日間で世界を回った。その後、63日、40日…と次第に時間は短縮されるが、汽船の時代の世界一周は移動時間だけをみても、会社員の夏休み期間にはちょっと実現は難しそうな旅だった。
20世紀後半に入ると、航空機のネットワーク拡充、さらにジェット機の導入による長距離の直行便実現も相まって、世界一周はずっと簡単になった。現代は半日あれば、ニューヨークやロンドンにも到達する時代になったのだ。

単純な移動時間だけなら、最短2〜3日で地球1周は可能だ。1995年に超音速旅客機コンコルドを使い、地球を1日ちょっとで回った記録もある。
1972年に作詞家の永六輔さんが6日間で世界一周をしている。
時間をかけて遊びながらの世界一周、あるいは早廻り記録に挑戦しようというのではない、なにげなく、それでいて常に出発点を目指しているような世界一周、それが長い間の夢だった。
永さんはこの時、南米やアフリカも訪れたため、6日間のうちホテル宿泊は1泊しかしていない。ほぼ飛行機の中にいたといってもいい独特の旅だった。
結局、世界一周はかなり短い期間でもできるようになったが、その中で何をしたいかによって日数はかなり変わってくる。個人的な印象では7日間は苦しいが、10日間あればなんとか面白い旅ができるのではないかと思う。
僕は地球をどう回ったか?
僕は2024年と25年の2回、世界一周をした。2回の訪問地はそれぞれ以下の通りだ。
ロンドン→アテネ→ペトラ(ヨルダン)→イスタンブール→シンガポール→バンコク→東京→ニューヨーク→ロンドン(15日間)
東京→ニューヨーク→オスロ→ベルリン→ヘルシンキ→東京(11日間)
24年の世界一周は英国留学中の一時帰国を兼ねて、各地の友人・知人に会うことや、当時、イギリスの大学で研究していたレポートのネタ集めなどを目的としていた。なお、イスタンブールはトランジット時間を長くして、半日観光した。

健康診断の兼ね合いで東京に5日間滞在していることもあり、ややスケジュールが長期化した。実際にはもう少し、期間を短くすることも可能だと思う。
25年の世界一周はずっとシンプルだ。各都市で2〜3泊するプランで、最後、ヘルシンキで1泊して帰国した。ノルウェーでは友人と会い、各地で16の美術館・博物館を巡った。ブロードウェーではミュージカルも見た。個人的にはこれくらいでお腹いっぱいという感じだ。

世界各国をくまなく回ることは難しいが、会社を辞めなくても2週間ほどの長期休暇だけで世界を回ることもできる。
どんな人が短期間世界一周を楽しめるか?
楽しみ方は人それぞれだとは思うが、僕の考えていることは以下のことだ。
世界一周自体に意義を見出せる人
理念的な話ではあるが、世界一周をしてみることで「世界の小ささ」や「世界各国のつながり」といったことについて理解が深まったと思う。移動が楽しめる人
飛行機好きや鉄道好きの人は特にいいかもしれない。空港や機内も楽しめる人ならどうしても移動が長くなる世界一周旅も最大限満喫できるはずだ。その意味で、ビジネスクラスやファーストクラスを使って非日常的な体験をするのも悪くないと思う。トラブルに動じない人
これは世界一周に限ったことではないが、短期間の世界一周ではスケジュールの乱れは全体に大きく影響する。僕は1回目の世界一周の際にインドに行く計画もあったが、ビザが期日までに発給されずに断念。出発直前に行き先をシンガポールに変更した。
どう計画を立てるか?
仮に夏休みを使って14日間程度の日程を組むとしたら、どうするか?僕は次の順番で計画している。
一番行きたい場所を決める
1回目は東京で健康診断の日程があり、東京行きはマストだった。2回目はオスロの友人に会うのが中心だった。経路を決める=航空券の確保
世界一周をするなら、多くの場合、バラバラに航空券を買うより、航空連合oneworld(JAL、アメリカン、BA、キャセイパシフィックなど)やStar Alliance(ANA、ユナイテッド、ルフトハンザ、シンガポール航空など)の世界一周航空券を利用する方が圧倒的にお得になる。とりわけ、ビジネスクラス利用の場合にはかなりお得感がある。一番行きたい場所に多く飛んでいる方を使うのがいいかもしれない。なお、Skyteamは世界一周航空券の販売をやめてしまった。途中、どうしても乗り継げない区間が出たら、その区間だけ別にチケットを購入する。各国の入国条件を調べる=ビザ、ESTA、予防接種等
日本のパスポートの場合、多くの国でビザなしで入国できる。ただし、米国や英国、オーストラリアなどでESTAと呼ばれる電子渡航認証システムが導入されていて、出発の数日前までには申請→承認を得る必要がある。また国によっては予防接種の証明が必要なこともある。(特に黄熱予防接種を証明するイエローカード)。ルート選定と並行して調べる必要がる。外務省のサイトや航空会社のサイトで正しい情報を確認する必要がある。場合によっては大使館の領事セクションなどに確認が必要になる。(国によっては公式サイトの情報が不正確なこともある)。宿泊先の確保
一般に宿泊先の方が航空券よりも余裕があるので、僕はルートが一通り決まってからホテルを確保するようにしている。

ルート作りの下地をChatGPTなどに任せるのも一手だ。例えば、次のようなプロンプトだ。
8月10日東京発で、14日以内に東京に戻る世界一周のスケジュールを作って。必ずニューヨークを訪問先に含め、最低2泊できるように予定を組んで。他の都市では世界遺産などの観光の提案もして
このプロンプトをChatGPTなどに打ち込めば、それなりの予定が出てくる。それを元に、上記の航空連合のサイトで具体的に空港名を入れて日程を仮組していくのが近道かもしれない。
僕も今、次の旅を計画中だ。短期間で地球を回る仲間が増えることを期待したい。
(2026年1月3日公開、誤字脱字を直しました)
