始めることへの葛藤 ~FOOLとソードの5の物語~
始めたいのに、怖い。
そんな気持ちになること、ありませんか? タロットカード「愚者」と「ソードの5」から生まれた、 一歩踏み出す勇気についての、小さな物語です。
「よし、行こう」
リップクリームの蓋をパチンと閉めて、口に出してみた。
でも、心が重い。
今日のチームミーティング。
その中で、自分がやってみたいことを伝えてみようと思っている。
「本当にできると思ってるの? また恥をかくだけだよ」
もう一人の自分が囁く。
いつもの“あの声”だ。
コミュニケーションが苦手な私は、
自分の考えを誰かに伝えることが怖い。
……うまく言えないかもしれない。
……やりたいと思ったことが否定されたら、笑われたら。
「うるさいな」
小さくつぶやいて、背筋をのばす。
「やめときなよ。できないよ。無理だって」
あの声が、なおもしつこく囁く。
胸の奥がざわつく。
あの日の、過去の記憶がよみがえる。
失敗した自分。
笑われた自分。
うつむいて、何もできなかった。
誰も助けてはくれなかった。
「でもさ」
静かに言う。
「やってみないと、何も始まらないから」
その言葉に、あの声はふっと静かになった。
始めることが、怖い。
失敗するのではないか。
始めてしまったら、後戻りできなくなるのではないか。
現状維持のほうが安全なんじゃないか・・・。
次から次へと、「やらない理由」ばかりを頭の中に並べていく。
でも、
現状維持は幻想だ。
動かない水は濁っていく。
そして時に、どうにもできない大きな力に動かされる。
それなら、自分自身で一歩を踏み出すほうが、よほどいい。
もう少し、軽い気持ちで。
時には、心の葛藤に耳を貸さない愚者になって。
不安が消えなくても、伝えたい気持ちは確かにある。
だったら、今日の私は一歩だけ進んでみる。
愚かでも、私の勇気で始めてみたいから。
