怒りの電話が鳴りやまない日──AIが救ったクレーム処理の第一歩
※文末に、「Genspark - AIポッドキャストの音声解説」及び「NotebookLMのAI音声解説」をご用意しております。ぜひご活用ください。
午後4時半、営業事務の岸本 恵は、受話器を置いたまま机に突っ伏しそうになっていた。
今日だけで3件目のクレーム。
午前中は「届いた商品に擦り傷がある」、昼過ぎには「請求金額が違う」、そして今は「納期が1週間も遅れるなんて聞いてない」という怒声だった。
「間に合わない…」心の中で呟く。
これから報告書にまとめ、明日の会議資料まで作らなければならない。退社時刻まで、あと1時間しかない。
恵の勤める会社は従業員15人の製造業。営業や製造とのやりとりも事務が担う。クレームは「受けた人が最後まで処理」という暗黙のルールがあり、報告書の書き方は人によってバラバラ。会議で上司から「結局どこが悪かったの?」と聞かれることも珍しくなかった。
クレームの多くは連絡ミスや検品不足だと分かっていても、忙しい中で丁寧に記録を整えるのは至難の業だ。
そんなとき、隣の席の後輩が、スマホを見せながら言った。
「先輩、ChatGPTって知ってます? 文章をまとめるのが得意らしいですよ。試してみません?」
名前だけは聞いたことがあったが、まさか自分の仕事に使えるとは思っていなかった。「無料で試せるなら…」と、初めてアカウントを作った。
画面に表示されたのは、真っ白な入力欄。
「ここに書けばいいの?」とつぶやきながら、今日のクレームメモを引っ張り出す。
【メモ】:
納期遅延:A社(納期8/10→8/17、連絡遅れ、顧客激怒)
商品不良:B社(ロット#2321、外装に擦り傷、返品依頼)
請求ミス:C社(請求金額2万円多い、二重計上)
恵は、こんなふうに入力してみた。
《恵の指示(プロンプト)》
A社:納期が8/10から8/17に遅れ、事前連絡なしで顧客が激怒。
B社:ロット#2321の外装に擦り傷。返品希望。
C社:請求書に誤り。金額が2万円多く計上。二重計上の可能性。
これらを「事実・原因・対応策」に分けて、簡潔かつ会議用資料に使える形でまとめてください。
数秒で返ってきた文章はこうだった。
《ChatGPT》
事実
A社:納期が7日遅延、事前連絡なし。顧客から強い不満。
B社:商品ロット#2321に擦り傷。返品依頼あり。
C社:請求金額が2万円過剰計上。二重計上の可能性。
原因
A社:製造工程の遅延と連絡フローの欠如。
B社:梱包工程での検品不足。
C社:請求データ入力時の確認不足。
対応策
A社:納期変更時は即時連絡を徹底。進捗共有ルールの制定。
B社:梱包前の最終検品を追加。
C社:請求発行前の二重チェックを義務化。
「すごい…」恵は思わず声を漏らしたが、ふと気づく。
「会議用にはもう少し見やすくしたい」
《恵の指示(プロンプト)》
この内容を表形式にしてください。クレーム対応策を表形式で作成してください。列は「原因」「即時対応」「再発防止策」。 出力はWord形式でお願いします。 表は見やすく簡潔にし、後で社内報告に使えるようにしてください
再び数秒後、スッキリとした表が画面に現れた。
《ChatGPT》

恵はそれをそのまま会社のフォーマットに貼り付け、少しだけ補足を書き加えた。

翌日の会議。上司が報告書を見て言った。
「お、要点がはっきりしてるな。原因と対応策が一目で分かる」
同僚も「これどうやって作ったの?」と興味津々だ。昼休みには「私の案件もやってみて」と声をかけられた。
クレーム処理そのものが楽になったわけではない。電話で謝罪し、現場と原因を突き止め、改善策を実行するのは人間の役目だ。
けれど、まとめる作業にかかっていた時間は確実に減った。空いた時間を、お客様へのフォローや再発防止の確認に使えるようになったのは大きい。
恵は思った。
「AIは代わりに謝ってくれるわけじゃない。でも、私が本当にすべき仕事に集中できる時間をくれる」
物語からのヒント
⇒ クレーム対応は「原因・即時対応・再発防止策」の3区分で整理すると、会議や報告で使いやすい。
⇒ 初めて使うときは、1件分だけ試し、AIの出力を社内ルールに合わせて調整する。
⇒ プロンプトは事実を簡潔に書くと精度が上がる。
⇒ 1回の回答で満足せず、「形式を変えて」「簡潔にして」など追加指示を出すと、より使える形になる。
⇒ AIの示した原因や対応策は必ず現場で確認し、鵜呑みにしない。
現場で役立つチェックリスト(クレーム処理編)
※クレーム受付直後〜報告書作成前に確認
▢ クレームの事実を時系列で正確に記録したか
▢ 顧客の感情やニュアンスも簡潔にメモしたか
▢ AI入力前に、主観を混ぜず事実だけを整理したか
▢ AIの出力結果を現場担当者に確認したか
▢ 報告書は社内の統一フォーマットに沿っているか
▢ 対応策の進捗確認日を設定したか
あとがき
この物語はフィクションですが、中小企業の現場で起こりうるリアルな状況をイメージして構成しています。
AIは、すべての答えを持っているわけではありません。けれど、事実や改善点を整理し、行動や言葉に変えていく過程で、心強い相棒になってくれることがあります。
まずは、今日受けた1件のクレームだけ、AIで整理してみませんか?それが、新しい一歩へのきっかけになるかもしれません。

Genspark - AIポッドキャストの音声解説(8分12秒)※音声のなかで「核心(かくしん)」を誤って「こくしん」と発音している箇所があります。あらかじめご了承ください。
NotebookLMのAI音声解説
🎧 AIによる音声解説はこちらから(7分15秒)
🔊怒りの電話が鳴りやまない日──AIが救ったクレーム処理の第一歩――(NotebookLM音声)
上のリンクから開けない場合は、音声ファイルをダウンロードして再生してみてください。
【profile】
元中小企業経営者・元経営コンサルタント。ゼネコン勤務を経て家業を継ぎ、現場のリアルな課題に向き合ってきました。noteでは、中小企業経営者や後継者の方々に向けて、決算書の読み方やAIを活用した財務分析など、実践的な情報を共有しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『フォロー』していただけると、次の記事がAIみたいに自動であなたの元に届きます。 それから…『スキ』ボタンを押すとAIは何も学習しませんが、僕はとても喜びます。 …AIより先に僕が進化するかもしれません(笑)
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。記事を読んでくださること自体が、何よりの励みです。これからも、中小企業の現場に寄り添う物語を届けていきます。