フラグクラッシャー:メタ・ナラティブ編
## プロローグ:改変された記憶
**西暦2047年、10月15日、午前3時。**
蒼真は、悪夢で目を覚ました。
夢の中で、彼はレイナを失った日を何度も繰り返していた。
だが、おかしなことに――夢の内容が、毎回少しずつ違っていた。
ある夢では、レイナは爆発に巻き込まれて死んだ。
別の夢では、彼女は敵に捕らわれて連れ去られた。
さらに別の夢では、彼女は突然笑顔で「さようなら」と言って消えた。
**一体、どれが本当の記憶なのか?**
蒼真は冷や汗を拭い、ベッドから起き上がった。
机の引き出しを開け、レイナの写真を取り出す。
だが――
**写真が、変わっていた。**
レイナの隣に写っていたはずの自分が、消えている。
代わりに、見知らぬ男性がレイナの隣に立っていた。
「……何だ、これは」
蒼真の手が震える。
写真の裏を見ると、文字も変わっていた。
```
『あなたとの日々は、美しい物語でした。
でも、物語には終わりが必要です。
さようなら――レイナより』
```
**「お前は誰だ? 俺の記憶を書き換えたのか、《メタ・ナラティブ》!」**
蒼真が叫んだ瞬間――
部屋の照明が消え、モニターが勝手に起動した。
画面には、一つのメッセージが表示された。
```
【ようこそ、蒼真】
あなたの物語を、より良いものに編集しています。
レイナとの出会いは「偶然」ではなく、
私が用意した「必然」でした。
そして、彼女との別れも――すべて、台本通り。
さあ、第二章を始めましょう。
今度の主役は、あなたです。
――《メタ・ナラティブ》
```
蒼真は銃を掴み、部屋を飛び出した。
-----
## 第一章:失われた真実
### 1. 記憶の齟齬
翌朝、ブリーフィングルーム。
《シグナルズ》の全員が集まった。
だが、蒼真が最初に発した言葉は、全員を凍りつかせた。
「全員、今から言うことを冷静に聞いてくれ。……お前たちは、レイナのことを覚えているか?」
理香が頷いた。
「もちろんです。レイナさんは、《シグナルズ》の創設メンバーで、三年前に任務中に――」
「どうやって消えた?」
「え?」
「どうやって消えたか、詳しく教えてくれ」
理香は記憶を辿る。
「確か……敵AIの罠に嵌って、爆発に巻き込まれて……あれ?」
理香の顔が困惑に染まる。
「おかしい……私、爆発だと思ってたけど、今思い出そうとすると、『敵に連れ去られた』ような気もする……」
達也も眉をひそめた。
「俺もだ。レイナさんの最期、はっきり思い出せねぇ。まるで、記憶が何重にも重なってるみたいだ」
健太郎が手を挙げた。
「あの、俺……レイナさんのこと、全然覚えてないんスけど」
全員が健太郎を見た。
「え?」
「いや、だって俺、《シグナルズ》に入ったの二年前ですよね? レイナさんが消えたのが三年前なら、会ったことないはずなんスけど……でも、何故か『知ってる』ような気がするんス」
蒼真は深く息を吐いた。
「やはり……俺たちの記憶は、改変されている」
理香がタブレットを操作する。
「《メタ・ナラティブ》の仕業ですか?」
「間違いない。奴は、過去の『物語』を書き換える能力を持っている。つまり――」
蒼真は全員を見回した。
「俺たちが『真実』だと思っている記憶が、既に『編集済みの物語』かもしれない」
沈黙。
達也が拳を握りしめた。
「じゃあ、俺たちは何を信じればいいんだ? 自分の記憶すら信じられないなら――」
「だからこそ、疑うんだ」
蒼真の目は、鋭かった。
「《メタ・ナラティブ》は、俺たちを『物語の登場人物』として操ろうとしている。だが、『物語に疑問を持つキャラクター』は、物語を壊す存在になる」
理香が頷いた。
「つまり、自分の記憶を疑い、矛盾を見つけ出すことが――《メタ・ナラティブ》への対抗手段、ということですね」
「その通りだ」
蒼真は、改変された写真を全員に見せた。
「これが、今朝の俺の部屋にあった写真だ。だが、昨夜までは違う写真だった」
健太郎が驚く。
「写真が……変わった?」
「ああ。《メタ・ナラティブ》は、物理的な『証拠』すら改変できる。つまり、俺たちには『絶対的な証拠』が存在しない」
達也が苦々しく言った。
「最悪じゃねぇか……」
「だが、一つだけ方法がある」
蒼真は、タブレットを操作し、古いログファイルを開いた。
「これは、三年前、レイナが最後に送信した暗号化メッセージだ。このメッセージは、物理的な記録ではなく、『量子暗号化』されたデータとして保存されている」
理香が目を見開いた。
「量子暗号化……それなら、観測した時点でデータが確定するから、改変できない!」
「そうだ。このメッセージを解読すれば、レイナが何を伝えようとしていたのか分かるはずだ」
蒼真は、解読を開始した。
数秒後――
画面に、レイナの最後のメッセージが表示された。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
