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母親という立場が、使われなくなった

知らないことより、
知らされないことのほうが、
人は深く傷つく。

声が届かなくなった瞬間、
母親という役割は
席を外されたのではない。

最初から、
数に入っていなかった。


離婚して、私は接客の仕事を始めた。
笑って、名を呼ばれて、頭を下げる。

私でなくても成り立つ場所にいるときだけ、
少し息ができた。

ある日、
昔の知り合いが店に来た。
近況を話すほどの関係ではない。

彼女は、
用件だけを残して帰った。

長男が、学校を辞めたらしい。

それだけ言って、
それ以上のことは何も残さなかった。

確かめたところで、
私にできることはない。
それは、最初からわかっていた。

それでも私は、
理由を探した。
探しているあいだだけ、
まだ母親でいられる気がしたから。

けれど、
母親である私に、
その理由は回ってこなかった。

職場に、
あの学校に通う子がいた。

私は、聞いた。

揉めた話は、なかったという。
いい子だった、という声も。
悪かった、という声も。

それでも、
なぜ辞めたのかは、わからなかった。

何も、
私には届かなかった。

私は、
知らされる側ではなかった。

理由はわからない。
ただ、
母親という立場は、
そこでは使われなかった。

息子の人生は、
私を通らずに進んでいた。

母親であることは、
そこにはもう、
置かれていなかった。


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アリス 🎀🐇🫖 あの頃の体験を、誰かと分かち合いたくて書いています。読んでいただけるだけで十分ですが、もし応援までいただけたら感謝でいっぱいです💌