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フォルクロア  一章 魔王軍襲来  8話 (note用連載)

作 竹紀譲

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この物語はフィクションであり、登場する名称、組織、団体、品、等、名称は架空の物です。
現実なものとは、一切関係ありません。
したがって、
なんの気兼ねなく、お楽しみください。
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8話 小さな結末


見慣れぬ天井、
いや、
昨日泊まった部屋の天井、
黒髪の横にツンツン頭の少年は、目を覚ました。

そう、
ドリファンである。

「ドリファン?大丈夫?
昨日も倒れたわよねえ。
あの技は、使わない方がいいと思うわ。」

そう言うのは、
勝手にドリファンの冒険の旅について来た、
ミンである。

「何?ミン?ドリファン起きたの?」

そして、
この城の主人の娘、ドリーも寄って来た。

「あなた凄いわね。パパも驚いていたわ。
それに、
あなたの剣を見た事があるって言っていたわよ。」

「ほんと!」

ドリファンとミンの声が重なり、吸血姫は面を食らった。

2人から事情を聞いたドリーは、

「分かったわ、パパを呼んでくる。」


家臣が聞いたら、
卒倒するような事が、ただの少年に、国王が呼びつける様な格好に、なってしまったのである。

しかし国王は、
そんな事は、気にしない。

少年は、
今回の戦争の勝利に、大いに貢献したのであるからだ。

そして、
国王はやって来た。
事情を娘からある程度聞いていたので、
すぐに本題に入って話してくれた。

「少年、、いや、
剣士ドリファンよ。
そなたの、その剣は、
伝説の精剣シルフィードだ。」

「精剣シルフィード?」

「うむ、
その剣を見たのは、15年ぶりだな。」


「15年前?」

「そう、その時、
伝説の風剣士ヒューリオン殿と出会ったのだ。
その時の彼の愛刀が、それだった。
彼は、
1,000才を越えていたが、見た目は、
30才前半と言う感じで、若々しかった。
人間なのに、珍しいと思ったもんだ。

なんでも、
封印の反動とか言っておったな。」


「1,000才かぁ、まぁジジイも、30000才を超えたとか、言ってたもんなぁ。」

周りの者達は、ダマリアの長寿に呆気に取られたが、国王は話しを続けた。

「そうそう、奥方殿も大変美しかった。
それと、赤子を抱いていたな。」

ミンも会話に入って来た。

「その赤ちゃん、ドリファンかな?」

「いや違うな。
だいたい、その赤子は、女だった。」


「パパ?本当に?」


「ワシの鼻が男と女の匂いを間違えるわけなかろう。」

「それに、風殿と、互いの娘自慢で、
一晩中語り明かしたのだ。
今でも覚えている。」


「じゃあ、ドリファンは、風剣士の子じゃないのね。」

ガッカリするドリーに、国王は話しを付け加える。

「必ずしも、そうとは限らん。
第一、
剣士ドリファンは、ヒューリオン殿に、良く似ている。
特に、その頭がな、
そんな髪型、ワシの長い人生でも、2人しか知らん。
つまり、
ヒューリオン殿と、剣士ドリファンだけだ。

まったく無関係と言う事は、あるまい。」

「パパ!」

「おっと、それと、ヒューリオン殿は、活動拠点を
中央アトランティスに、しておると、言っておったぞ。
そこに行けば、手掛かりがあるかもしれないぞ。」


「あのぉ、王様?奥さんの名前は、判りますか?」


「おおぉ、そうだな、うむ、たしか、そう、ミラ殿だ。
本当に美人だったから間違えない。」


「パパったら、、でも、ありがとう!パパ!」

「うむ、大した事ではない。」

愛娘のダイビング、キスを頬に受けた国王は、
文字通り、
宙に浮いて、執務室に戻って行った。

もし、
付き人の慎太郎が、見たら、

国王は、
お説教された事となるのは、間違えなかった。

「ドリー、ありがとう。これで、とりあえずの目標が、分かったわ。」

「うん、ありがとうドリー。」


「いいのよ、お礼よ、お礼。
2度も助けて貰ったんだもの、気にしないで、2人とも。
すぐに、
中央アトランティスに、向かうの?」

「いや、すぐには向かわない。」


「そうね、最初は、イストニア王都に向かうわ、
旅券の手続きとか、色々と準備もしたいしね。」

「決めた!私も、最初は、中央アトランティスに行く。」

「姫さま!」

ドリーの付き人、弥太郎は、目を白黒させて驚いた。

「弥太郎、きちんとパパの条件をクリアした後よ。
でもミン、あっちで会えるといいわね。」

「そうね。」

「そして、また、パーティー組みましょ。」

「そうしましょう。今から、楽しみ。」

「そうだね、ぼくも楽しみ。」

ドリーは、召使いにも、

「当然、弥太郎も行くのよ、
4人で、パーティー組むんだから。」

「姫さま、」

「そうそう」

ミンも、ドリファンも、笑顔で応える。

弥太郎の目は、ウルウルだった。


しばらくは、
4人で談笑し、夕方からは、

戦死者の国葬式の後、
戦勝パーティーに出席して、
ついでに、
ドリファンとミンの2人には、
表彰と褒美として、
メイソニア王国、王家の後楯を表す、
王家の家紋入りの証明カードが与えられた。

しかもプラチナ製である。

その時は、
貰った当人達は、
その価値が、分かっていなかったが、
後にその価値を知る事となる。

その後のパーティーも、2人は楽しみ、
その夜を過ごした。

3日目の朝、
盛大に見送られ、城を後にした。


最後まで、名残り惜しむドリーと、
固く友情の握手を交わし、
メイソニア王国を後にして、
最初の村、ケンの居る村に戻る事にした。


「ミン、そう言えば、最初の村の名前ってなんだっけ?」

「えっ?え〜とわたしも聞いてなかったわ。」

2人は、馬より早く走りながら、話していた。


遠く離れたた、その村の端っこの見張り台の上に、
1人の少年が、北の荒野を眺めて座っていた。

そう、ケンである。

彼は、様子を見て来ると言って北に行ったきり、

3日も戻って来ない、ドリファンとミンを心配していたのだ。

「あいつら、大丈夫かなぁ。」

ケンは、シャウリンの者とは言え、
自分と同じ歳くらいの2人に、
魔物の大群の様子見を、させてしまった事を、
後悔し始めているのだ。

「もう昼か、、」

真上にある太陽を見て、ケンは呟き、
見張り台を降りようと立ち上がり、
最後にもう一度荒野を見た。

「ぅわ!なんだ?魔物か?」

北の荒野から土煙りを上げ、
かなり早い速度で近づいて来る、何かがいたのだ。

震えながら、目を凝らし近づいて来るものを見て、
正体を確認した。

「あいつらだ、、無事だったんだ。」

そう
ドリファンとミンが、手を振りながら走って来ていたのだ。

ケンは、
急ぎ見張り台を降りて2人の何処へ向かった。

「2人とも無事だったんだな。」

「ああ。」

「言ってなかったっけ?わたし達強いからって。」

「いや、聞いてないぞ、そんな話し。
強いのか?おまえ達?」

「もちろんよ!わたし達2人は、なかなかのものよ!」

「それで、魔物の大群は? 3日経っても来なかった。
いたずらだったのか?
村のみんなは、悪い悪戯だと結論してるけど。」

「それについて、詳しく話したいから、村のみんなを集めて、
必ず、神父様と村長さんは、連れて来て。」


「わかった、村のみんなに話して来る。」

ケンは、その通りに村人を集めた。

ただし、場所は、教会になった。

そこには、神父様と村長さんは、もちろん、
村の主だった人が顔を揃えていた。

「みんな!この2人が、その様子を見に行った冒険者だ!」

ケンは、2人を紹介して、話しをミンに、振った。

今回、会話下手なドリファンは、
立っているだけにしてもらっている。

ミンは、堂々と話し始めた。

「みなさん!
わたしは、ミン・シャウリン。
シャウリン領領主、
青龍武闘団頭領ゼン・シャウリンの娘です。」

「本物か?俺達を騙そうとしているんじゃないのか?」

「たしかに、こんな何処にいるのはおかしい。」


「わたしが本物かは、信じてもらうしかないけど、
わたし達が、見て来た話しを聞いてください。」

「聞こう。」
村長は、腕を組み、短く答えた。


「わたし達は、この村の北、森の向こう、
吸血鬼の国、メイソニア王国に行って来ました。」


「吸血鬼の国だって?そんなもの本当に有ったのか?」

ドリファンは、黙って頷いた。


「今回の騒動は、あの子弥太郎が、
村に迫る危機を伝えようとしたのに、言葉が足らず、
誤解を招いたものだったのよ。
実際、わたし達は、見たわ。
弥太郎の主、ドリー・メイスン、その国の姫が、
1人ボロボロになりながら、
この村に迫る魔物の大群を食い止めてたの。」


「何故そのような事を吸血鬼が?」

神父の疑問も当然だとミンも思う、
自身も同じ疑問を持ったから。

「それは、彼らには、わたし達人間が必要だから、
本当の吸血鬼たちは、
人間がいなければ滅びる存在なの、
共存共栄するしか生きる方法がないの、
あんまりいい気はしないけど、
なんでも、人間の血は、幸福であればあるほど、
美味なんだって。

だから、
人間達から、ほんの少し血をもらう代わりに、
理不尽な暴力から、人間達を守るんだって。
ただ、
魔物の血を飲んで、知性も理性も無くした者が、
見境なく殺す奴が、少ないけどいるらしい。
そういう奴を、
処理するのも、自分達の仕事だと、言ってた。」


「でも、信用できるのか?」

「そう思うのも無理ないけど、
その行動は事実よ。
この村に迫る魔物を食い止めてた行動よ。」


「んんん、」


「そう思ってしまうのは、わたし達が、
知らないからだよ、彼らの事、何にも。」


「そう言ってもなぁ、」


「それから、この村に来ようとした魔物の大群は、
自然に湧いた物ではないの。」


「それは、どう言う事かね?」


白い髭をたくわえる、
神父は静かに問いかける。

「黒幕は、魔王軍よ!
メイソニア王国に侵攻して来たヤツは、
魔王軍三大将軍、冥界王デス・テーロスって名乗っていたわ。」


「魔王軍だと?
何故こんな小さな村を襲うのだ!」

狼狽する村長に、ミンは、静かに答える。

「ちがうよ。
メイソニア国王ドラン・メイスン王の見立てでは、
北西からと、東北からと、
2方向から、侵攻するつもりだと、
そうすれば、
さすがのイストニアでも、苦戦するだろうと。
わたしも、
その見立ての通りだと思うわ。

つまり、
この村を狙ったのではなく、この国を狙ったのよ。」


「なんと、それでは、この村など、跡形もなく消し飛ぶぞ。」


村長の顔は、見る見る青くなった。


「とりあえず安心して、村長さん。
今回は、メイソニア王国が、
魔王軍を撃退したから、しばらくは大丈夫だと思うわ。」


「そ、そうか、」


「でもよぉ村長、本当に、こんな話、信じられるのか?」


「んんんん、、」

村人の疑問も、もっともだと、ミンも思う。

だが、
ミンには、信じてもらうしか、
方法がないと思う。

だがしかし、
思わぬ所から、助け船が来た。

神父である。

白い髭の神父は、村人達に話し始めた。

「ワシは、その子の言う事を、信じようと思う。
少なくとも、
その子が、シャウリンのお嬢さんなのは、
本当の事だから。」

「神父さん?」
ミンも少し驚いた。

「お忘れかな、
2年前のイストニア王都での、
年少武闘大会の、優勝者に、
優勝旗を授与したのは、私だよ。」

「あっ!あの時の!」

「それに、ゼン殿と良く似ている。」

「げぇ!」

「はっはっはっ、容姿の事じゃないよ。
その雰囲気がじゃよ。」

「ほっ。」

「ゼン殿は、正直で正義感溢れるお方じゃ。
この子も、そうだと私は思う。
皆も信じてもいいのではないかな。」

村人達は、互いに顔を見て、頷く。

「神父様がそう言うのであれば、
俺達も信じよう。」

村長も頷き、


「そう言う事ならば、
とりあえずの危機を回避出来た事を、祝おう!
君たち2人も歓迎しよう!

この、
イーストエンドの村、俗称最果ての村を挙げて!」

ドリファンは、また宴で美味しい物が食べられると思って、
うきうきを、隠せない。

ミンは、違う事を思っていた。

イーストエンドって、さらに東にシャウリン領があるんですけど!

中央諸都市の貴族達は、よほど、うちが気に入らないのかしら?

村人達は、2人を歓迎して、多くの料理を振る舞ってくれた。

宴の中、
ケンが、ミンの様子を見て近づいて来た。

「ミン、もしかして、この村の名前の事?
なんか、機嫌悪そう。」

「やだ!顔に出てた?」

「そこまでハッキリは、出てないけど、なんとなく、。
この村の本当の名前は、ケンの村。」

「ケンの村?」

「そう。
本当の名前が消え去らないように、
両親が、オレの名前をケンにしたんだ。」

「そうなんだ。」


「18年前、
この村の名前を変えたのは、大貴族のウル家さ。」

「ウル家かぁ。」

ミンの記憶が確かなら、
初代イストニア王が、ウル家から出て、
それから、千年、力を持ち続ける、大貴族だと、

シャウリン家の事、良く思ってないのかな?

宴の盛り上がりの中、
神父が、村人達に提案した。

「どうだろう、
この2人に、栄誉を与えては、
この村の不安を、取り除いてくれたのだから。」

村長をはじめ、村人も了承した。

儀式を神父が執り行い、
この日、
2人は、称号を得た。

「我が神に祈り捧げます。
この村、イーストエンドの不安を取り除いた功績により、
この者、
ミン・シャウリンと、
もう1人、剣士ドリファンに、
最果ての村の小さな勇者、の称号を授与します。

さあ、
神に祈りを!」


こうして2人は、
最初の村で、
最果ての村の小さな勇者と、成った。

後に、教会を通じて、
全世界に記録された。


8話 小さな結末 完

1章 終わり

二章 1話 モーゴタウン
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