現行技能実習制度から『育成就労制度』への転換―計画的技能習得とキャリア形成による新たな人財育成システムの展望
現行の技能実習制度は、これまで主に企業が労働力として外国人実習生を受け入れるための仕組みとして運用されてきました。【2,744字】
法的な強制力の欠陥から賃金不払いや最低賃金規定など労働基準法を順守しない会社、時間外労働を支給しない会社、暴行や暴言を繰り返す会社、技能実習制度上の実習計画の職種を守らない大企業、など、不正な行為が横行してきた歴史がありました。
近年の国際的な人権保護の観点や我が国の人手不足分野における持続的な人材育成の必要性が叫ばれる中、従来の「技能実習制度」は抜本的に見直され、『育成就労制度』として生まれ変わる運びとなっています。
現行の技能実習制度は、令和6年以降(または公布日※令和6年6月21日から3年以内に政令で定める日※令和9年6月20日から)段階的に『育成就労制度』へと転換されます。

この新制度は、単に低賃金労働力としての側面を超え、外国人が日本において3年間の就労期間を通して計画的かつ体系的に技能を習得し、将来的に特定技能1号への移行やキャリアアップを果たすための教育・研修プログラムとして、『育成』と位置付けられてきています。

まず、育成就労制度では、各業種・職種ごとに標準化された教育カリキュラムが策定されることにより、実習生が従来の現場での雑務に留まるのではなく、産業分野ごとに求められる専門技能を段階的に習得できる仕組みが整備されるといいます。
たとえば、製造業においては、初級研修で安全教育や基礎的な作業手順を徹底し、その後、品質管理や生産工程の改善、さらには設備保全に関する応用技能へと進むプログラムが組まれる見込みです。
育成就労者は単なる作業補助者ではなく、将来的には企業の中核を担う技術者や管理者としての育成が期待されるようになります。
また、育成就労制度では、各実習生に対して「育成就労計画」が作成され、外国人育成就労機構などが認定を行うことで、業務内容、必要な技能、日本語能力などの目標が明確化されます。
具体的には、育成内容は「必須業務」や「安全衛生業務」など、計画的に修得すべき技能分野が設定され、そのうち必須業務については全就労期間の3分の1以上を従事することが求められるなど、育成就労者が習得すべき技能の担保が図られます。
さらに、実習期間中には定期的な技能評価や日本語能力の検定が行われ、評価基準に応じた認定や、場合によっては最長1年の在留継続が認められるなど、柔軟かつ厳格な評価制度が導入される予定です。
受入れ企業においても、従来の制度とは異なり、単に育成就労者を労働力として迎え入れるだけでなく、教育体制や生活支援、さらには安全衛生管理の充実が求められます。
具体的には、企業は常勤の職員数や受入れ体制の整備、さらには寮や社会保険の制度整備をはじめとした生活面でのサポート体制を強化し、育成就労外国人が安心して技能を習得できる環境を整える必要がございます。
また、受入れ企業ごとの受入れ人数枠も、企業の規模に応じた基準で厳格に設定され、都市部と地方での受入れの偏りを防止する措置も講じられることとなっております。
さらに、育成就労制度は、外国人の日本語能力向上にも重点を置いております。就労開始前にA1相当の日本語試験に合格、もしくは一定の講習(最低100時間以上)を受講することが義務付けられ、就労期間中もA2相当以上の能力を目指して追加の日本語教育が提供される仕組みとなります。

業務上必要なコミュニケーション能力が向上し、職場内外での円滑な意思疎通が図られるとともに、実習生のキャリアアップ支援にも寄与するものと考えられます。
また、転籍(他の受入れ機関への移行)についても、本人の意向に基づく転籍を認める一方で、転籍先となる企業には一定の受入れ基準や育成体制の充実が求められ、転籍者の割合も全体の4分の1以下に抑えるなどの制限が設けられます。

さらに、転籍に伴う初期費用については、送出機関や受入れ企業間での費用分担の仕組みが導入され、外国人実習生が不当に負担を強いられることのないよう配慮される予定です。

なお、監理支援機関の許可基準も大幅に見直され、受入れ企業と独立・中立な立場で実習状況の監査や支援を行うため、職員の配置基準、外部監査人の要件、さらには母国語での相談体制の整備など、厳格な要件が課されることとなります。
実習生の人権保護や適正な就労環境の確保が一層強化されるとともに、制度全体の透明性と信頼性が高まることが期待されております。
このように、現行の技能実習制度は、令和6年以降(または公布日※令和6年6月21日から3年以内に政令で定める日※令和9年6月20日から)段階的に『育成就労制度』へと転換されます。
業種や職種ごとの専門性を踏まえた計画的な技能習得、評価、さらには受入れ企業の体制強化や外国人の生活支援、日本語教育の充実など、実習生の育成と企業の人財確保の両面において大きな転換が図られるものと期待します。
従来の単なる労働力供給から、実習生が日本での就労経験を通じて確固たる技能とキャリアを形成し、将来的には特定技能1号や2号へ円滑に移行することが可能な、より高品質で持続可能な人財育成システムが実現されることを期待しております。今後もこの動向を着目してまいります。
厚生労働省/育成就労制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001301676.pdf
厚生労働省/特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会
厚生労働省/第2回特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会
日本政策金融公庫論集 第63号(2024年5月)/育成就労制度の創設と特定技能制度の適正化が 中小企業に及ぼす影響―外国人労働者政策の30年と主要外国人 グループの特徴を踏まえた考察
独立行政法人経済産業研究所上席研究員 橋本由紀氏
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun2405_04.pdf
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
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