『いま動く制度、ゆれる現場──外国人雇用と在留資格』シリーズ”58”_【2025年12月10日現在】第11回有識者会議【資料1-2】実際にどの分野でどう当てはまるのか――具体例から見えてくる「転籍」と「待遇改善」のリアル
みなさま、こんにちは、東城です。
前回からの続きです。
つまり、転籍制限を設ける分野は、 「昇給や待遇改善の実績を、国が継続的に確認する対象になる」 という構造が、制度の中に組み込まれているのです。
これは、これまでの外国人雇用制度と比べても、大きな転換点だと感じます。 単に「動けない」制度ではなく、「動けない代わりに、きちんと上がっていく」制度にしようとしている。
その覚悟が、資料の行間からはっきりと読み取れます。 転籍を制限すること自体が目的なのではありません。
人を育てること、現場を安定させること、そして働く本人が「ここで成長できている」と実感できること。
そのために、分野ごとの事情を踏まえた設計が必要なのだ、というのが、今回の議論の本質なのだと思います。
では、この考え方は実際にどの分野でどう当てはまるのか
――具体例から見えてくる「転籍」と「待遇改善」のリアル
ここからは、先ほど触れた考え方が、具体的にどの分野でどう現れているのかを見ていきたいと思います。
制度の文章だけを読んでいると少し抽象的に感じられますが、分野別の実態に視点を移すと、なぜ今回の制度が「一律ではなく、分野ごとの設計」を採用したのかが、ぐっと分かりやすくなっていくと願います。
まず最初に挙げたいのは、介護分野です。
介護は、日本の人手不足が最も深刻な産業の一つであり、特定技能としての受け入れ人数も上位を占めています。
今回の資料でも、介護は転籍の影響が非常に大きい分野として扱われています。
なぜなら、現場は継続性が命であり、職員が変われば利用者さんの生活リズムや安心感に直結するからです。
新人が入って慣れてきた頃に転籍されてしまうと、その負担は利用者さんにも、現場のスタッフにも跳ね返ります。
そのため介護分野では、「一定期間、職場に定着してもらうこと」が育成そのものにつながり、その見返りとして待遇改善を義務化するという考え方が、もっとも強い意味を持って響いてきます。
次に見ておきたいのは、建設分野です。
建設は、専門技術の習得に時間がかかるうえに、チームで動く現場が多い業種です。
ある程度の技能が身について初めて「一人前」と評価される世界で、途中で転籍が起きると、チームの構成が崩れ作業効率や安全性にも影響します。
資料でも、建設分野の転籍率は、ほかの産業に比べて低く、これは本人側も「今の職場で技術を積むことのメリットが大きい」と感じているからだと考えられます。
また、本人側の意識、特に、建設業の希望企業の待遇や雇用契約条件を応募する段階、面接後の段階で、吟味する意識傾向が強くなったからだと思います。
また、業界としてのハラスメントへの改善も、騒がれたからだとも思います。
こうした分野では、転籍制限は本人にとって不利益ではなく、むしろ「一貫した育成」を受けられる利点として働きます。
そして当然、その育成期間が正しく報われるように、昇給や評価が制度として守られる必要があります。
一方で、食品加工や外食のような分野は、実はまったく違う事情を抱えています。
資料を見ると、この二つの分野は転籍率が高く、都市部への移動も顕著です。季節変動や繁閑差が大きい産業で、短期間で戦力化しやすい仕事も多いため、「すぐに移動しやすい」構造になっているとも言えます。
このような分野では、転籍制限を厳しく設けすぎると、本人の選択肢を狭めすぎてしまう恐れがあり、育成期間や業務特性を丁寧に見ながらバランスを取る必要があります。
だからこそ、制度は“分野別”というアプローチを採り、一律ではなく一つひとつの産業の事情を踏まえた仕組みづくりが進められているのです。
そして、これらすべての議論の土台には、「成長が評価される環境をつくる」という共通の目的があります。
転籍制限を設けるのは、単に移動を抑えるためではありません。
むしろ、移動を制限する時期こそが、本人のスキルがもっとも伸びやすい大切な時間であり、その時間を“やりがいのある時間”にすることが制度の責任だという考え方が、今回の資料からは読み取れます。
育成が続いていくこと。
現場が安定していくこと。
生産性が上がり職場貢献が見えること。
そして本人が「ここで働いてよかった」と実感できること。
この4つがそろって初めて、日本の育成就労制度は、私たち民間人の持つ、本来の力を発揮して行くのだと前向きに捉え、思います。
次回は、今日触れた分野をさらに深掘りしながら、
「では具体的に、昇給や待遇改善はどこまで義務化されるのか」
「企業はどのように準備していく必要があるのか」
こうした視点で、制度の核心にもっと踏み込んでいきたいと思います。
また続けて書いていきますので、どうぞお付き合いください。
制度が動き始める今は、まさに“橋を架ける時期”です。現場の声、地方の企業の実情、外国人本人の希望。その三つを、どのように制度の細部に反映させるか。今回の有識者会議の資料は、そのための大切なヒントになっています。
本日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
第11回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議https://www.moj.go.jp/isa/03_00165.html
議事次第
https://www.moj.go.jp/isa/content/001451756.pdf
資料1-1 第10回有識者会議における主な御指摘等(PDF : 617KB)
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