機関投資家の株の爆売りの仕方
機関投資家の大規模な株式売買の手法や、市場の暴落・爆騰が起こる裏側のメカニズムについて詳細に解説する。
1. 機関投資家が市場に影響を与えずに売買する技術:VWAP取引
個人投資家が数株単位で売買を行う際は、指値注文や成行注文を直接市場に出すことで問題なく取引が成立する[01:22]。しかし、機関投資家が100億円規模などの巨額の注文を一度に成行で出せば価格は爆騰(または暴落)し、指値であっても市場の警戒を招いて価格が逃げてしまう[01:46]。自らの取引が市場を動かし、結果として自分自身が不利益を被ることを防ぐため、機関投資家は特別な執行技術を用いる[02:08]。
その代表例がVWAP(Volume Weighted Average Price:売買高加重平均価格)取引である[01:08]。
仕組み: 機関投資家は、その日の市場における加重平均価格で取引を行う契約を証券会社と結ぶ[02:19]。
証券会社の動き: 証券会社は過去のデータから当日の出来高を予想し、例えば全体の10%に相当する株数を取得する場合、取引時間を通じて常に全体の約10%のシェアを維持するよう細かく注文を入れ続ける[02:43]。
自動化の進展: 過去には熟練トレーダーの勘に頼っていた領域であるが、現在はAIを含めた機械による自動執行が主流となっている[03:02]。
2. 相場急変動の主因となる「先物取引」の爆売りと買い戻し
個別銘柄の売買技術(VWAPなど)に対し、個人投資家の資産形成に最も大きな影響を与えるのが先物取引を用いた売買である[03:28]。金融危機や重大な経済リスクが発生した際、機関投資家が迅速に株式リスクを低減させるためにこの手法が用いられる[03:58]。
① 急激なリスクオフにおける「先物売り」
市場全体に悪材料が出た際、どの個別銘柄を売るか吟味していては時間がかかる[04:08]。そのため、圧倒的な流動性を誇る「先物」を値段度外視で大量に売却し、まずはポートフォリオ全体のリスクを急速に低下させる[04:13]。
数百億から数千億円規模の先物売りが出ると、日経平均などの指数は急激に下落する[05:15]。
相場全体が突発的に急落する局面の多くは、個別銘柄ではなくこの先物取引が主導している[05:38]。
リスクを落とした後、状況が落ち着いてから売却すべき個別銘柄を選定し、「個別銘柄の売り」と「先物の買い戻し」を同時に進めて調整を行う[04:31]。
② 誤算から生じる「踏み上げ(爆騰)」のメカニズム
先物売りを出したものの、想定された悪材料が「そこまで悲惨な話ではない」と市場が判断した場合、相場は反転する[05:42]。先物を売ったまま価格が上昇すると巨額の損失を被るため、機関投資家は慌てて買い戻し(ショートカバー)を行わなければならなくなる[05:58]。
典型例: 2016年のイギリスEU離脱国民投票や、同年のアメリカ大統領選挙(トランプ大統領誕生)の際、当日は先物主導で暴落したものの、翌日からは猛烈な買い戻しによって相場が爆騰した[06:11]。
国内機関投資家の事情: 国内の銀行や生命保険会社は、現物の株式や債券を売却しなければ帳簿上の損益(実現損益)は発生しないため通常は静観できる[06:39]。しかし、先物取引で生じた損失は即座に決算書の損益計算書(P/L)に反映されてしまうため、損失拡大を防ぐための買い戻しは極めて必死に行われる。これが相場の急上昇をさらに増幅させる要因となる[06:51]。
3. 日本特有の取引:政策保有株式(持ち合い株)の売却
機関投資家の「株売り」におけるもう一つの大きな特徴が、古くから日本企業間で維持されてきた政策保有株式(持ち合い株式)の売却である[07:24]。約20年前には銀行の持ち合い株を解消するための専門組織(持ち合い株式取得機構)が作られた歴史もあるが、現代でもその解消プロセスは非常に泥臭い性質を持つ[07:37]。
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