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『5年で3.5回くらい死にかけたオッサンのはなし』#1


「腎梗塞の疑いあります、救急車で転院します」


いま、コウソクって言うた?
それって脳梗塞や心筋梗塞のコウソクってやつ? 
いわゆる血栓が詰まったってやつ?
オッサンはめっちゃ痛いお腹を抱えながら、
カーテンで仕切られたベッドの上で考えた。

昨日救急車で運ばれた病院では、ウイルス性胃腸炎って言われたのに。もしかして、ヤバイんか。
ヤバイんやろうなあ、2日連続で救急車に乗ってるし。

「恥ずかしいけど、座薬、最高!」

と、ケツ丸出しで思ってた昨日の自分がアホ過ぎる。
救急外来で、人生初の座薬を入れてもらったのだった。
そのおかげで熱が下がって、もう心配ないと高をくくっていたのである。

あけて、2019年3月24日。
オッサンは病気との長いつき合いが始まる。
笑いの師匠(天然なので一生超えられない)であるオカンの誕生日だった。心配性のオカン。
世界で一番、心配をかけたくない相手だ。

この日を境に、オッサンはモテ期に入ったらしく次から次へと珍しい病気がやってきた。そんなモテ期いらんわ!
その最初からして、

「腎梗塞」

あとから分かったことやけど、腎梗塞は救急外来受診者の0.007~0.013%で診断の区別がむずかしい病気だそうだ。
普通のレントゲン検査では判断が困難で、造影剤検査でやっとわかるらしい。だから

『座薬のぬか喜び』

というアホな経験をしたのだ。
そんな言葉、もう二度と使うことはないやろうし、
座薬も不本意と思う。ごめんやで、座薬。

オッサンの場合、持病の腰痛と胃腸炎を繰り返していたから、
医者もオッサンもそっちに気を取られていたようだ。
1回目の救急車に乗った時も、腰痛から始まった。

3月23日の昼に遡ろう。

「んー、またか」

荻窪駅近くの交差点で止まった瞬間、腰に負担が無いようサイドブレーキを引いた。
軽トラやから、腰に負担がきたんやろう。
腰をさすったり、軽くひねったりしてみたけど鈍痛は治まらんかった。持病の腰痛とは長いつき合いや。

若い頃からギックリ腰を繰り返し、ブロック注射で治療したこともあったけど完治していない。

新宿店に着いたら休憩しよう。
ゆっくりアクセルを踏み、渋滞している青梅街道を進んだ。
レンタカーの回送の仕事を始めて4年。
本業の脚本家と構成作家だけで食っていけず、始めた副業だった。時間の融通が利くので重宝している。
実際その日の前日も夜中まで原稿を書いて、
一段落したので、一眠りしてから副業にあてたのだった。

「あれ、腰痛ちゃうんか? そっちか?」

再び、痛みが襲ってきたのは中野坂上あたりを走っている時やった。さらに、吐き気もする。
もしかしたら長年繰り返してきた胃腸炎かもしれへん。
内蔵からきた痛みやったんか。

もうすぐ新宿店やから、なんとか我慢しよう。
しかし、店に着いた頃、痛みは酷くなっていて休憩して落ち着くような状態ではなかった。
少しでも稼ぎたかったが、退勤し帰宅する。

寝れば、大半の病気を良くなる。
ちからわざ? ごまかし?

「人生なんて、なんとかなる」


役者を志して上京し、結局売れへんかったけど、
なんとかクリエイターとして生きてきた、僕の持論だ。

しかし、そんなもんは通用せえへんかった。
薬を飲んで横になったが、繰り返す嘔吐。
朝まで待って病院に行こうと思ったが、
尋常じゃない腹部の痛み。

結局、夜中に救急車で運ばれた。
診断結果は、ウイルス性胃腸炎。
噂の座薬を入れてもらい楽になり、帰宅したがまた嘔吐の繰り返し。
相変わらず腹部は、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ痛い。

そして、朝になってかかりつけの病院に行って初めて
「腎梗塞」かもしれないということになったのだった。



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花澤嬉一(ハナザワキイチ) オッサンはちょろいので、応援してもらえるとめちゃくちゃ喜びます。 チップは有効に使わせていただきます。