【多言語天才】(4) 高い言語性知能と低い非言語性知能
続きです。
ここまで,ちょっと心理学らしさに欠けた気がしますので,ここからはクリストファの知能の特徴を知るための複数の検査について書いてみたいと思います。
使用された検査の一覧
そして多言語学習を支えていると思われる,本人の関心と,その知能のプロフィールについては,以下のとおりでした。
◎3歳頃から書物や言語に強い関心を見せた
◎高い言語性知能と低い非言語性知能,という全体的な知能の特徴を持つ
と前々回記事で書きましたが,今回は「◎高い言語性知能と低い非言語性知能,という全体的な知能の特徴を持つ」について紹介します。
まず検査を列挙してから,興味深かったものをピックアップして記事を書いていきたいと思います。このリストの他にも,クリストファの認知的な特性を理解するために特化したテストが作成・課題が使用されていますが,そちらは省略します。
■ 知能検査
◎ WISC-R
◎ レーブンのマトリクス検査
◎ コロンビア・グレイストーン精神成熟度測定尺度
◎ 埋め込み図形テスト
◎ グッドイナフ人物画知能検査
■ 発達段階を推し量る課題
◎ 数の保存課題
■ 誤信念課題
◎「サリーとアン」課題
◎「スマーティーズ」課題 など複数
■ 言語力に関わるテスト
◎ ピーボディ絵画語彙テスト
◎ ゴリン図形テスト
■ 実行機能検査
◎ ヘイリング文完成テスト
けっこうオーソドックスな検査が並んでいる印象です。とはいえ,専門外の人にはほぼ意味が不明な羅列だと思いますので,解説したいと思います。
まずは知能検査からです。
ウェクスラー式知能検査:WISC-R
当時の児童用の標準的な知能検査に,WISC-Rというものがありました。WISCは「ウィスク」と読み,「Wechsler Intelligence Scale for Children」の略です。デイヴィッド・ウェクスラーが開発したことから,ウェクスラー式知能検査と呼ばれます。
『WISC-Ⅴ』という第5版が最新で,現在,最もよく使われている児童用知能検査です。
WISC-Rは,
◎ 言語性検査(知識,類似,算数,単語,理解,(数唱))
◎ 動作性検査(絵画完成,絵画配列,積木模様,組合せ,符合,(迷路))
という2つのカテゴリの検査で構成されます(数唱と迷路は補助検査)。
動作性検査というのは,非言語性の検査だと考えてください。
クリストファのIQ:高い言語性知能と低い非言語性知能の対照
さて当時のWISC-Rでは,上記の課題から言語性IQと動作性IQを算出します。
どちらのIQ(知能指数)も,平均が100点,標準偏差が15点です。70点未満は「下位2.5%(1万人いたら,下から250番目)未満」という意味で異常値,さらに55点未満は「下位0.15%(1万人いたら,下から15番目)未満」という意味で異常値と言えます。
クリストファは,別々の時期に3回WISC-Rを受けて,
◎ 言語性IQ:89点,102点,98点
◎ 動作性IQ:42点,67点,52点
でした。上記の説明を適用すれば,言語性IQは正常値であるのに対して, 動作性IQがすべて異常値を示しています。
すさまじいプロフィールの偏りですよね。以前書いた
◎彼は身の回りのことが自分でできないので,施設で暮らしている
◎方向感覚が悪く,どっちがどっちだか分からなくなってしまう
◎目で見たものに基づいて手を正確に動かすことが苦手で,髭剃りやボタンかけをすることが難しい
という人物像と合致します。
一方で,多言語天才でありながら,言語性IQは平均的です。
一般的知識がすごく優れているとか,計算能力が非常に高いとか,そういったことはありませんでした。
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続きます。
