闇の子どもたち 断片15
朝から体が重かった。
寝ているのに重い、ということもないのだが、重い。寝返りをうつのも億劫に感じる。布団が鉛になったのかと思うが、そうではないのはこれまでの経験で分かっていた。
今日は無理だ。起きるとろくなことにならない。
だが。
今日は朝から、西の塔だか何だかを探索しなければならないことになっていた。
正直なところ、あそこには何もいない。
スーイは、まだ探索が終わっていない箇所がある、と言っていたが、あれはジャギスたちを釣るためだろう。実際にはスーイにだって、西の塔にさしたる危険はないから、子どもたちを行かせるのだ。
優秀な子を集めてはいたが、とはいえ、実戦経験があるようには見えなかった。おそらく、これまで魔術について学んできて、ここから、実際の魔ノ物を相手にすると言ったところか。
国内なら任務に出てもよい、すなわち、まだ学院から出ていないということだ。
それでいきなり、何かあっては困るだろうから……結局は、魔力云々の話ではないのだろう。
彼が強調していたように、仲間との連携を学ばなければならないのだ。そしてそれは、あの子たちが、ではない。間違いなく、自分が。
どんなに自分の力が強くても、一人では及ばないことがあるのを、彼はもうすでに分かっていた。
実戦というなら、何年も前からやっている。それこそ、シェリーナよりも小さいときから。
そういう意味では、優秀なリーダーをずっと側で見てきた。父や兄は幼い自分よりも魔力は劣っていたし、他にも強い力を持った親戚もいたが、チームを率いるという点では秀でていた。
もちろん、彼らはアンジェルシーナ家の長男として、家業を継いで皆をまとめるよう、育てられてきたのだと思う。
だが、依頼に誰を連れて行くか、何を準備させるか、実際にどう行動させるか。現場でどう指示を出すか、不測の事態をどう乗り切るか。
リーダーが任務を成功させて、構成員を無事に連れ帰るために、決断しなければならないことは多い。
兄に連れられて、外から何度も見ていたからこそ、分かる。もし、父や兄が決断できなかったら。少しでも迷っていたら。
彼の家には子どもが多い。それは、命を落とすことを前提にしているからだ。
だが、父が家を継いでから、仕事中に欠けた者はいない。それがどういうことなのか、一緒に現場にいたからよく分かる。
だからこそ、スーイが言ったことも、嫌というほど理解できた。
『自分の弱みを相手に預けること』
言うのは簡単だし、頭でも理解できる。
でも。
彼がそこまで考えたとき、静かになっていたはずの部屋の外が騒々しくなった。何人もの子どもがやってくる。
彼は大きく息を吐いた。
久々に、どうしよう、と弱気な考えが頭をよぎる。
言ってしまえばいいことだ。今日は具合が悪いから休む、と。
ただ、理由を聞かれるだろう。ジャギスやシェリーナは執拗に迫ってきそうだし、それ以前に、スーイが……スーイまで一緒にいるかは分からなかったが……許さないだろう。
彼が昨日、言ったのはそういうことだ。きちんと自分のことを話さなくてはならない。
これから先、何度も同じ理由で彼らには迷惑をかけるだろう。その度にうやむやにはできないし、今は知らなくても、いずれ知ってしまうだろう。
でも。
考えがまとまらないままに、彼らの声がすぐそこまでやってきた。何と答えたものか、体をこわばらせ、扉が叩かれるのを待つ。
しかし、彼の予想に反して、勝手に扉は開かれた。
時間が逆行してんねん
思いついた順やから……

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