闇の子どもたち 断片5
そういう時代なんだろうね、という言葉は、揺れる馬車の軋みの中に滲むように吐き出された。
「私ももう少し、後に産まれればよかった」
ねえ、ニコ、と彼はふざけた調子で付け加えたが、笑えなかった。
あれは確か、彼女を保護するためにシュルペに向かっていたときのことだ、と彼はぼんやりとその前後のことを思い出した。同じ日のこととは思えない。
いつ思い出してみても、彼女と二人で見上げた空と、スーイの言葉には苛立たしいまでの開きがあった。どうしてそれとそれとが同時に存在できるのか、わからないくらいに。
聞いてみればよかったのかも知れない。あなたは、私と同じ立場になりたかったのですか、と。
いや、実際には「そうだった」のだ。
自分が認識されるまでの間、スーイは誰よりも魔力のある人間として、ラスエトで丁重に扱われていたはずだ。
事実、この年代には魔力を持つ子どもが多い。そのことに何らかの意味を見出そうとする者たちもいたが、それは単なる偶然だろうと思う。もしくは、穴から流れ出る力が強まっているのか。だとしても、自然現象の一つだろう。
「ルーク」
声を掛けられて、彼は自分でも笑えるくらいに体を揺らした。
鉄格子の奥には、スーイが座っている。少し前まではこちらを認識していて、何かと話しかけられたのだが、それもなくなった。
周りの黒い岩壁のせいで、スーイの姿は闇に溶け込んだように見える。
「ルーク、こっちを向け」
珍しく尖った言い方に、彼は仕方なく振り返った。ツルガが、険しい顔のまま手を差し出す。その動きに釣られるように自分の持っているものを彼の方へ向けて、呆然とした。
あの剣だ。
大丈夫だよ、君をそんな目には遭わせないから。
約束する。
あの馬車の中で、答えに迷って黙った自分に、スーイはそう言った。
ならば自分は?
それを守ることができるのだろうか。
出した順に読んだ方が
面白いかもしれない
と思い始めてきた
この順なのも

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