「最下位」からの逆襲へ。中田花奈の巻き返しは成るか。
「中田花奈は、弱い」
残酷かもしれないが、実力が物を言うプロの世界で、昨シーズンMリーグに在籍した全36選手中、中田は個人成績36位。
近年稀に見るほどのデッドヒートとなった昨シーズンのMVP争い、渋谷ABEMAS白鳥翔、赤坂ドリブンズ園田賢など競合ひしめく中で、逆転に次ぐ逆転を制したセガサミーフェニックス・醍醐大の姿は記憶に新しく、多くのファンの感動を呼んだ。
そんな「光」が強ければ強いほど、対極に位置する「影」もより色濃く、大きいものとなる。
これまでのシーズンで数々の活躍を見せてきたKADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳の大失速。
そして、毎シーズンポイントゲッターとして、常にチームを牽引し続けた渋谷ABEMAS・松本吉弘の長すぎるスランプ。
上記した2選手とも「不運」や「悪運」に見舞われる時間が特に長かった印象で、特に、岡田がシーズン最終登板でトップとなった試合の最終盤、「また捲られるのか…」という不安や「もういい加減トップを取らせてくれ」という焦り、結果として逃げ切った安堵感というような、通常状態のメンタルではいられないであろう感情の揺れ動きが画面越しに伝わってきて、観ているこちらが精神を削がれるような凄まじい試合状況が印象的だった。
多くのファンがご存知の通り、岡田はその試合でトップとなり、試合後のインタビューの姿も含め、多くのサクラナイツファンの感動を呼んだ。

そんな岡田が、それまで甘んじていた36位から35位へとランクを上げた一方で、入れ替わるように36位へと順位を下げたのが、中田花奈である。
BEAST X(チーム発足時の名称はBEAST Japanext)にドラフト指名を受けた彼女であるが、その指名は賛否両論を呼び、果てはMリーグという存在が「実力主義」なのか「エンタメ」なのか、という議論まで起こるほどであった。
乃木坂46の発足メンバーとしてアイドルだった中田。
卒業後、好きだった麻雀の世界でプロとなり、自らがオーナーを務める麻雀CAFE「chun.」を手掛けるなど、麻雀への愛は強い。

ABEMAで毎週放送される「熱闘!Mリーグ」ではスタジオゲストとして登場、当時はMリーグのいちファンとして姿を見せていた。
そんな彼女が、「Mリーガー」として指名を受けたことは、ファンであるないに関わらず、Mリーグを視聴する者にとっては均しく衝撃的で、大きなニュースとなった。

中田のほかに、「モンキー・マジック」の異名をとる猿川真寿、将棋界と麻雀界の「二刀流」として大きな波紋を呼んだ鈴木大介、若手女流としてビースト開幕メンバーオーディションを勝ち抜いた菅原千瑛。
上記4名での船出となったビースト。
だが、その結果は2シーズン連続での下位であり、次シーズンより猿川、菅原に代わって下石戟、東城りおの2名が新メンバーとなってのリスタートを控えている。
「なぜ菅原よりも圧倒的最下位の中田が残るのか」
「世界麻雀のような所でしか結果が出せない」
「所詮実力の無い選手」
「Mリーグがエンタメであることの象徴」
など、孤独な闘いを続ける中田には容赦の無い声が上がる。
中田花奈の「これから」
麻雀界の中でも視聴者数が圧倒的に多いMリーグという舞台。
顔も名前も定かではない声がどこからともなく飛んでくることは、誰に止められることでは無いのかもしれない(勿論、あまりに悪質な物や度を超えた誹謗中傷については淘汰されるべきだと思うし、そうしなければならないが)。
今の、これからの中田花奈にできる事は、たったひとつ。
「麻雀で、勝つこと」だ。
プロである以上、Mリーガーである以上は、その使命はブレてはならない。
まして中田の場合、本年度開催された第4回世界リーチ麻雀のベスト16に入ったとはいえ、所属団体での獲得タイトルも、Mリーグでの獲得タイトルも無い選手である。
筆者個人の考えとしては、Mリーグというものは「エンタメ」でもあり、「実力主義の場」でもあり、どちらの側面があってもいいと思う。
ただ、そのベースには「団体を超えた、プロ同士のぶつかり合い」がなければならない。
というか、それありきでいてもらわなければ困る。
要素が入ること自体は良いことだと思うが、バランスが「エンタメ」に振り切れすぎてしまうと、麻雀界を盛り上げようとする各Mリーガーの努力が、すべて水の泡と化してしまうからだ。
だいいち、それではファンが「夢」を見出せなくなる。
中田が、上記した「元アイドル」であることや、プロとしての活動歴が浅いだとか、そんなことは筆者は何とも思っていない。
かつては萩原聖人も、岡田紗佳も、伊達朱里紗も。
「俳優がプロ雀士になるなんて」
「モデルがMリーガーなんて」
「声優にMリーグなんて務まるのか」
そんな声を、自らの打牌で、姿勢で、覆してきた歴史がある。
プロリーグである以上は、自分がどんな状況にいようと、自らの力で証明を続けるしか道は無いのだ。
このオフ、中田がポーカー関連のイベントに多く顔を見せていたことや、木村拓哉氏のYouTubeに麻雀プロとして出演、対局をしていたことは記憶に新しい。
やはりというべきか、「そんなことやってる場合か」「弱いんだから麻雀の練習をしろ」という声が、予定調和かの如く散見された。
だがこれは、筆者は良い兆候だと考える。
かえって、中田がこのオフにただひたすら麻雀の勉強会を重ね、四六時中麻雀に身を捧げている、となる方が恐ろしい。
そうなれば「木を見て森を見ず」ともなりかねないし、かえって考え過ぎて逆効果になってしまうことだってあるかもしれないからだ。
それよりも、少し麻雀から距離を置く時間をとることで、これまでになかった活路や、没頭してしまうからこそ見つけられなかった道筋が見えることだってある。
勿論、昨シーズンの結果を悔やんで練習には明け暮れただろうし、それは決して第三者に見せるべきものではないだろう。
万が一、本当に練習や鍛錬をせずにいたというならば、それまでのことだ。
試される今シーズン
今月15日より幕を開ける、Mリーグ2025-26シーズン。
アースジェッツの新規参入や、サクラナイツからEX風林火山へとチームを移った内川幸太郎、元セガサミーフェニックスで今季よりBEAST Xに指名され、「元Mリーガーがカムバックを果たす」という初のモデルとなった東城りおなど、話題の多いMリーグ。
勝利を掴み、雑音を跳ね除け、自らの存在を証明するために。
中田は、果たしてその道に光を見出す事が出来るだろうか。
その結果は、ファンが喜ぶようなものにはならないかもしれない。
現実はいつだって残酷だし、その結果が人が望むものとは全く違うものとなってしまうことだってある。
事実、BEAST Xのファンにとってはこの2年間こそがそんな年であったのではないか。
「試練は、それを乗り越えられる人のところへ訪れる」とは、よく聞く言葉だ。
中田花奈にとっての、まさに「正念場」ともいえるシーズンが幕を開ける。
彼女がどうやって試練を乗り越えるのか、ゆっくりと見守りたいと思う。

