第19話:絵画より美しい、君の横顔
しとしとと雨が降る、梅雨の休日。
今日は二人で静かな美術館を訪れている。

薄暗い展示室の中、しんと静まり返った空気の中で、彼女は一枚の絵の前に足を止めた。
「この絵、すごく綺麗……」
小さな声でそう呟きながら、真剣にキャンバスを見つめる横顔。
その伏せられたまつ毛や、薄暗い照明に照らされた柔らかい肌の質感に、俺はなぜかひどく心臓の音を早めていた。
お互い大人やし、デートなんて数え切れんくらいしてるのに。
静かな美術館という非日常の空間のせいか、それともただ、今日の彼女がいつも以上に綺麗に見えるせいか。
「……なぁ」
俺はたまらず、彼女の隣にすっと立ち、その柔らかな手をそっと握りしめた。
「え……?」
驚いて見上げてくる瞳が、絵画のどの色彩よりも鮮やかに俺を捉える。
「……絵なんて、全然頭に入ってこーへん」
「しゅうやん……?」
「君の横顔が綺麗すぎて、ずっと見てまう。……あかん、大人っぽいデート楽しむつもりやったのに、もうドキドキが止まらん。」
呆れたように、でも少し照れくさそうに笑う彼女。
その笑顔を独り占めできるなら、外の雨音も、静かな美術館の空気も、すべてが完璧な舞台に思えてくる。
K.🌙
