第28話:【続】アルバムから落ちた一枚と、嘘をつけない不器用な愛
雨音だけが響く静かな午後。
俺の昔のアルバムを見つけて
楽しそうにページをめくっている君を、
俺は半分諦めモードで背後から抱きしめながら見つめていた。
「あっ……! 今の、しゅうやん!? ヴァンパイア!?」
突然、君の手がピタリと止まり、目を丸くした。

そこには、高校の文化祭の劇で無理やり着せられた、
ゴシック調の黒いシャツと
十字架のネックレスを身につけた俺の姿が写っていた。
「あかん! それは正真正銘の黒歴史やから、ホンマに見んといて!!」
「え〜っ、もっと見せてよ〜!」
慌ててアルバムを閉じようとする俺と、
もっと見ようとする彼女。
わちゃわちゃと引っ張り合いになったその時、
アルバムの隙間から、
一枚の写真がひらりと床に落ちた。
「あっ……」
彼女が先にそれに気づき、そっと拾い上げる。
それは、高校時代の俺が、
ブレザー姿で振り向きざまに撮られた一枚だった。

「これ、すごく綺麗に撮れてる……」
彼女が呟きながら写真を裏返した瞬間、
その声のトーンがすっと低くなった。
「……ねえ。これ、誰が撮ったの?」
「ん?」
覗き込んでみると、写真の裏には、
丸みを帯びた明らかに女の子っぽい文字で
『柊♡』と書かれていた。
「…………」
彼女の表情が、目に見えて曇っていく。
手元の写真をじっと見つめるその横顔は、
分かりやすく嫉妬の色に染まっていた。
(……嫉妬?なんや、可愛いなぁ)
一瞬、「さぁ? 誰やったかなぁ」
なんてわざとはぐらかして、
もう少しだけヤキモチを焼く
可愛い顔を見ようかな。
そう悪戯心で口を開きかけた――けれど。
不安そうに眉を下げる彼女を見つめていると、
胸の奥がチクッと痛んだ。
(……っ、あかん。良心が痛むわ)
彼女を不安にさせるなんて、
たとえ冗談でも俺には無理だった。
「ごめん、嘘! 冗談や」
俺は慌てて彼女を後ろから抱きしめ直し、
その耳元で白状した。
「それ撮ったん、幼馴染の蓮(男)や。
裏の文字も、あいつがふざけて
女子の真似して書いただけやから!ほんまにっ」
「……本当?」
「うん。俺の高校時代なんて、
むさ苦しい男しか周りにおらんかったから」
俺が必死に弁解すると、
彼女はようやくふふっと笑い、
体の力を抜いて俺の腕の中に体重を預けてきた。
「よかった。……ちょっとだけ、妬いちゃった」
「……」
素直すぎるその言葉に、
今度は俺の方が耐えきれなくなる。
可愛すぎて、もうどうしていいか分からない。
「……あー、もう。ほんま敵わん…」
俺は彼女の首筋に深く顔を埋め、
その柔らかい体温を確かめるように、
きつく、きつく抱きしめた。
写真の裏のふざけたハートマークなんかより、
今、俺の腕の中にある温もりの方が、
何万倍も愛おしかった。
K.🌙
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