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【書評】複数の視座から見つめる、格差社会の現実。(ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー:ブレイディみかこ)

こんにちは。ライターの吉岡です。
月曜日、週1書評です。ぜひ、最後までお読みください。

今回、ご紹介する本は
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ(新潮文庫)
です。


この本どんな本?

著者はイギリス在住のライター、コラムニストのブレイディみかこさんです。本書は、本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞を受賞したことでも話題になりました。
イギリスで中学生の息子さんと、イギリス人の夫と暮らすブレイディさん。そんな息子さんやブレイディさんが感じる生々しい階級格差、人種格差が描かれた作品です。

なぜこの本を読もうと思った?

ライター・エッセイストの佐藤友美(さとゆみ)さんが、受講中のエッセイ講座にておすすめしてくださったからです。
(もう、そのきっかけ何回目やねん!というツッコミはなしでお願いします。)
それともうひとつ。ブレイディさんは週刊誌のAERAで「eyes」という隔週連載コラムを書かれています。私はAERA愛読者ですから、少し前から彼女に興味を持っていました。

この本のここがすごいー複数の視座

この本を読んで、私は、「上手いな~!」と感動してしまいました。視点の鋭さもさることながら、視座のオリジナリティがすごいのです。
視座とは、著者が「どこからなにを見ているか」の「どこから」の部分。どういうことか、ご紹介したいと思います。

1.「人種」という視座

ブレイディさんは福岡県出身の日本人。息子さんは、イギリス人と日本人のハーフです。イギリスでは当然、少数派にあたります。
イギリス自体、移民が多い国で、人種に多様性があります。しかし、というべきか、だから、というべきか、人種差別は根強く残っているとのことです。
特に、描かれた当時はイギリスがEU離脱に向かっている時代でした(離脱は2020年2月に成立)。EUという保護が外れることで、移民や難民がさらに増えるのではないか、と世間的にも過剰に反応していた時期だったということも、本著の中で語られています。
この、「イギリスに住む東洋人」、「日本人とイギリス人のハーフ」というマイノリティ。日本で暮らしていては体験できない経験から見える社会が、この本を興味深くしています。

2.「子ども」という視座

もうひとつ強烈な視座として、「子ども」というフィルターを通していることを紹介します。本著は、そのほとんどが、息子さんの中学生活で起こった出来事から始まります。つまり、出来事そのものを経験してきたのは息子さんです。ブレイディさんが息子さんから学校の話をきくところから始まります。そこには、必ず、息子さんというフィルターが入っているのです。
子どもならではの感性。子どもならではの問い。
それは、大人になるにつれて忘れてしまった純粋な気持ちだったり、大人になってもまだわからない根深い問いだったりします。
子どもという視座特有の視点が、新鮮で、懐かしくて、愛おしい。その視点にパンクな母ちゃんがさらに鋭く深堀していく。これも本書の面白いところだと思います。

3.「貧富」という視座

ブレイディさんの息子さんは、小学生時代は、由緒正しきカトリック系の小学校に通っていました。カトリック系小学生の多くは、そのままカトリック系の中学に進学するそうです。しかし、ブレイディさんと息子さんは、実際に見学して気に入った、元底辺中学に入学することを決めます(なぜ「元」なのかは実際に読んでみてくださいね)。
そこは、サラダボウルそのもの。人種だけでなく、貧富の差もごちゃまぜです。特に、貧富については、読んでいて、胸にくるものがあります。貧しい家庭の友人の視座、イギリスの貧富格差問題。それが、ものすごく具体的に描かれているのです。読めばきっと、日本の貧富問題にも関心が向くことでしょう。

まとめ

ところで、さとゆみさんが本書をおすすめしてくれた際、「悔しい」という言葉を口にしていました。
なぜなら、ブレイディさんは、本著を、本著の登場人物(息子さんも含め)に読まれる心配がないからです。だって、彼らは日本語が読めないから。「対象がその内容を読まないことがわかっている」という状態は、書き手としてある意味無敵です。個別具体的な話を当事者が読むかも、となると、思いっきり書けないし、書いてしまえば問題になるかもしれないですから。でも、本書にはその心配がない。ありありと感じられる個別具体性が、この本の魅力のひとつでもあります。

東洋人でイギリスに長年住む、ハーフの息子の母親。
このオリジナリティあふれる視座は、ブレイディさんだからこそ持てるものです。複数の視座と、個別具体を描ける状況、そして鋭い視点。これらが合わさったことで、多くの方に評価される作品になったのだと思います。

複数の視座を持って、鋭い視点で語られる格差社会の実情。自分は今いったい、何色だろうか。そんなことを考えさせられる一冊でした。格差社会を他人事と思わず、ぜひ、読んで考えてみましょう。

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