それはきっと、夏のせい。
最近、息子さんはお絵描きが大好きだ。昨日は子ども園から帰ってから、道路を描きたいというので一緒に描いた。標識も好きで、中でも速度標識は大好物である。
まっすぐの下道と、坂を上る高速道路を描いた。下道の速度は50、高速の速度は80の標識を絵の中に立てる。妙にリアルだ。
道を描いたので次は車。好きな色を選んで1台ずつ描こうというので、息子さんはお気に入りの紫、私は青いクレヨンをそれぞれ好きな車を描いた。レーシングカーやトラックなど思い思いの車が道路の上に描かれいく。次に、息子さんはピンクのクレヨンを手に取った。
そういえば、と思い出したことがある。昔、私がまだ小学生だったころ。ピンクの車を見つけると幸せが起こる、という噂があった。今でこそピンクの車などさほど珍しくないが、当時はほとんどなかった。その上、今のようなお上品なパステルカラーのものではない。まさにショッキングピンク。そんな色しかなかったと記憶している。
だが、私は知っていた。ピンクの車が必ずいる場所。教室の窓から見える月極と思しき駐車場に、それはもう、あっぱれなほどのピンク色をした乗用車が止まっていたのだ。特に話題にも上らないその車の存在を、私は、私しか知らないと思い込んでいた。実際は教室の窓側の席なら大体どこでも見える場所だったのだが、みんな気づいていない。そう、思っていたのだ。真偽は不明である。
こんな噂もあった。"ブラックナンバー"を3つ見つけたらいいことが起こる、というもの。ブラックナンバーとは、黒地に黄色の数字のナンバープレートである。正しく言えばイエローナンバーでは?と今になって思う。
あのころは、本当にいいことが起こると信じていたし、見つけると指をさして喜んでいた。何より、黒地に黄色の数字がかっこいい。なお、ブラックナンバーが軽貨物運送業の車であることを知るのは、まだ先のことである。
今や、ピンクの車もブラックナンバーもまったく珍しくない。むしろよく見る部類だ。でもあのときのショッキングピンクとかっこいい黒地のプレートは、自分にとって間違いなく特別だった。
こんなことを思い出してしみじみするのは、夏のせいだろうか。
