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きみの目にうつるキラキラこの世の中の正しさであれ


雪が積もっている。


夫の地元に帰省した。

夫の家族のこと、好きだけど慣れない。慣れない人たちと長い時間をともに過ごすこと、どうしても私は苦手だ。

そんな私が少しでも息ができるように、という理由もあるが、夫も夫で実家ですごす時間を持て余してしまうため、帰省したときはいつも2人でぷらぷらと出かけている。今回もいつもと同じように2人でぷらぷらとお出かけした。夕飯の予約時間には間に合うように、近くを。


この地域にはお洒落なカフェがたくさんある。

夫はカフェを見つけては「こんな田舎にこんなお洒落なカフェあったんだ」と言う。
私はいつも「田舎にはお洒落なカフェが多いんだよ。私の地元もそうだった」と話す。


自分の地元なんて、もう3年も帰ってない。
ひさしく行っていない場所、夫の地元をみて思いを馳せる。
夫の地元について夫に語り、自分の地元を分かった気になる。もう3年も帰っていないし、今度はいつ帰るかも分からないのに。
地元がきらいなわけではないんだけどね。


このたび行ったカフェも、お洒落だった。
内装がレトロなような、新しいような。壁や棚にはカフェの雰囲気に合う小物が飾られている。黒いワイヤーでくるくると形づくられたオブジェ。人の形をした陶器の置物。あまりみない装丁の本。家の形をした木。


入口の扉は、硝子の面積が大きいタイプ。カラカラと音をたてて横に開く。
天井の狭い隙間に、昭和風のライトがぶら下がっている。
キッチンとホールの境目も、硝子の面積が大きい壁で仕切られており、キッチンの様子がわかる。コーヒー器具が並べられている。切りっぱなしボブがよく似合う店員さんが、プリンの焼く前のような黄色いものにぷすぷすと棒を刺している。

隙のないお洒落だ。


甘い匂いに包まれる。スコーン。プリン。チーズケーキ。パウンドケーキ。どの匂いか分からない。
メニューには豆の銘柄と説明が書かれている。
ベリーのようなフレーバーが特徴、などと書かれたコーヒーと、スパイスと蜂蜜のパウンドケーキを注文した。


窓際の席に座る。外は曇っている。さっきは降っていなかった雨が降る。本を読む。隣の夫になにするの?と聞くと仕事をするらしい。スマホでポチポチと文字を打っている。


あたたかいコーヒーを飲む。
パウンドケーキを半分こする。
それぞれが左右からフォークで切って食べていると、ハートのような形になる。できるだけハートの形を保つように食べ進めるが、途中でやめて何も考えずに食べ終わる。
夫が自分の分をひとくち残して、私に「食べる?」と聞く。
夫はいつも、ひとくち、何くちでも私に食べさせようとする。私が食いしん坊だからだ。「今日はいらないからね」と最初に言っても、途中で忘れて「食べる?」と聞いてくる。今回は、夕食をたくさん食べる予定があったから遠慮した。
本当は3食焼き菓子を食べたい。たまに、そんな1日を過ごすこともある。



トイレに行った。トイレもお洒落だった。床の青くて細かいタイル。
ふと硝子にうつった自分の姿をみて、このコートを今回の帰省で着てよかったなと思う。シルエットが好きだ。重いから最近は着ていなかったけど、またたくさん着よう。


椅子に戻る。
なんだか自分のにおいがすごく気になった。
気になるあまり、夫にくさくないか確認した。
こういうとき、夫が隣にいてくれて良かったなあと思う。自分の不安を、いつでも、話せるひと。


「くさくないよ」「なんで気になるの?」と言われる。
なんでだろう。なんでだろう。
なんとなくわかるような気もするが。
なんで私は、においが気になるようになったんだろう。人間の脳って不思議でおもしろい。



板チョコが売っていたから、それも会計で一緒に買う。冬のチョコ。コーヒーに合うチョコ。いろいろと説明が書かれた、チョコ。
「こちらのチョコ、是非常温でお召し上がりくださいね」と店員さんが行ってくれる。へえ、珍しいですね、分かりました、ありがとうございます。


帰るころには雨が止んでいた。



このカフェに行きたいと言ったのは夫だった。

夫はあまり自分の意見を言わない。
なにがしたい、どこにいきたい、なにがたべたい。
夫が意見を言ったときは嬉しくて、私はいつもそれに賛成する。

今回も賛成した。提案した夫に感謝しているし、夫に賛成した自分もほめたい。良いカフェだったね。


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