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バブたん、ブロッコリーと出合う。

赤ちゃん(バブたん)を見ていると、これは人間として自然な反応なんだ、とか、先天的に持っているものなんだとか、逆に自分にはもうない能力だと気づくことがたくさんある。

わたしもタイに来てから思ったより年月が過ぎたようで、周りが結婚したり、赤ちゃんが生まれたりするような歳になった。インスタで遠くの日本にいる友人たちの結婚報告を見るたびに、「ああ、自分は大人になったな」と感慨深くもなるし、絶望が目の前に差し迫ってくる感覚もある。

最近は妻もわたしも時間があったので、同じくタイに住む、友人夫婦に生まれた女の子のバブたんに何度も会いに行っていた。旦那さんが仕事のあいだ、昼間に自宅にお邪魔して、バブたんにご飯を食べさせたり、わたしたち大人はちょっと贅沢してアイスクリームやケーキを食べたり。


先日、いつものように友人の自宅に向かう途中で、つかみ食べの練習をしたいという連絡があり、わたしたちの昼ごはんを買うついでにブロッコリーを買っていった。

バブたん用にしっかり茹でて小さく切ったものを友人が準備しているのを見て、おお、ここまでしないとバブたんは食べれないのかと驚いたりした。

離乳食を食べた後に、母親がブロッコリーをバブたんの前に置く。ブロッコリーは初めてらしい。

どのような反応をするのだろうと一堂じっと見守る。

手で掴み、握り、ぐちゃっとしてみたり、いろんな角度からブロッコリーの構造を眺めてみたり。「構造」として捉えているのかどうかはわからないけれども。

なかなか食べない。

さっきまであれほどがっついて離乳食を食べては、わたしたち部外者にも笑顔を振りまいてくれていたのに。

「この前パプリカの時は一口も食べようとしなかったね〜」と母親はいう。

わたしたち夫婦にはまだ子供がいないのでわからないのだが、つかみ食べは、手で持ってみる、口に運ぶという過程が重要らしい。妻はおそらく知っていただろうが、「赤ちゃんの子育てはそんな教育理論的なものが隠されているのか!」とわたしは知的好奇心が刺激されて内心興奮していた。妻は大学教員として外でバリバリと働く一方、わたしは、しがないライターなので、子育てはおそらく自分が主となるだろうという話し合いを近頃よくしている。もちろんお互いに了承しているのだが、わたしは、子育てこそ研究ではないか!と一筋の光を見出すことができた。大学までずっと女性が多い環境で、友人にも女性が多いので、子育てには絶望を感じていた。他人のバブたんだからこそ「かわいい、かわいい」と無責任にも愛でているが、子育て理論のようなものが世の中にあると知って、少しだけ前向きになれたのだ。

さて、バブたんのブロッコリーとの迎合に話を戻そう。

バブたんは一向に食べようとしないので(あれほどイーブイのぬいぐるみをむしゃむしゃ食べていたのに)、母親が「こうやって食べるんだよ〜」と言いながら口に運ぶ。

それをみて、バブたんは「それって食べるものだったの!」というような表情の変化を見せると、ついに口にブロッコリーを運んだ!



「ウェッ」



夢ならばどれほどよかったでしょう。

そんな顔で赤ちゃんは思いっきりえずいた。

ブロッコリーは口からは出てきていなかったので飲み込んでしまったのだろう。そして、Broccoliの余韻でもう一度こみあげてきたのか、べそを描きながらえずいている。

そこで気づいたのは、たしかに大人でもブロッコリーのあの独特な風味は苦手な人はいるなあということ。わたしは割と何もつけずにいける派なのだが、ブロッコリーはマヨネーズをかけたくなる。マヨネーズをかけたくなるのは、後天的に得た能力ではなく、先天的なものだったのだ、と目の前で赤ちゃんがえずいているのに感動してしまっていた。赤ちゃんの危機察知能力は本能なのだ。


でも、そのあと、2分も経ってないだろう、バブたんの小さな脳は「食べれるもの」と判断したのか、手の中で粉々になっているブロッコリーを何口か食べた。もう、えずかなかった。


その適応能力といったらすごすぎる。友人のバブたんがすごいのかもしれないが、大人でも嫌なものはすぐにわきによけるだろう。えずきから始まったのにも関わらず、目の前にいるブロッコリーの天使は、また笑顔をふりまきながら食べている。


どうやら文章を書くようになってから、以前にも増して言語を通して意思疎通することができない物や、赤ちゃんのような幼い子供を観察してしまうようになった。

えずいている人の前であの名曲を想起してしまったことや、勝手に赤ちゃんの教育理論や発達について俯瞰して考えてしまったこと、こちらで謝罪いたします。

いやあ、バブたんってすごい。



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