第668回 投資法には絶対服従
- 規則には絶対服従しろ -
そう言われると、多くの人はどんな感情を抱くでしょうか。
- 息苦しい -
- 個性が死ぬ -
- 社畜のセリフだ -
- ロボットになれっていうのか -
こんなネガティブな言葉が次々と浮かんでくるはずです。
我々は子供の頃から「個性を大切に」、「型にハマるな」などと教えられて育ちますし、映画や漫画のヒーローは大抵、古いルールをぶち破る反逆児です。
だから、ルールに従うことは、どこか「ダサいこと」のように思えます。
しかし、世の中のあらゆる分野の「超一流」と呼ばれる人たち、例えば天才投資家、トップアスリート、凄腕のプログラマー、そして軍隊の精鋭たちは、全く逆の視点を持っています。
彼らは、誰もが見落とすような細かいルールに対して、それこそ「狂気的なまでの絶対服従」を貫いています。
- なぜ彼らはルールに従うのか・・・!? -
それは、ルールへの絶対服従こそが、「感情という最大の弱点を克服し、過酷な世界で生き残り、最終的に『最強の自由』を手に入れるための唯一の攻略法」だと知っているからです。
今回は、一見すると奴隷思想のようでありながら、実は人生を大逆転させるための超・攻撃的な一手とも言える「ルールへの絶対服従」を、説明します。
今回はまず、大前提となる結論からお伝えします。
我々がルールに絶対服従すべき最大の理由は、「人間の脳は調子に乗った瞬間、バカになるように設計されているから」です。
人間の脳は、論理的な思考が得意だと思われがちですが、実は感情に支配された非常に不完全な臓器なのです。
- 投資で少し儲かると「俺は天才だ!」と勘違いして全財産を賭けて爆死する -
- ダイエット中なのに、目の前のケーキを見て「これは例外」と言い訳する -
- 締め切りが迫っているのに「まずは部屋の掃除から・・・」と現実逃避を始める -
このように、我々は「その場の気分」や「感情の揺らぎ」によって、驚くほど簡単に間違った選択をしてしまいます。
ルールとは、この「調子に乗った時のバカな自分」や「恐怖でパニックになったときの弱い自分」に、予め強固な手錠をかけておくための防衛システムなのです。
ギリシャ神話に、知将オデュッセウスの有名なエピソードがあります。
彼の船が、美しい歌声で船乗りを惑わせ、海に身を投げさせて殺す怪物「セイレーン」の海域を通ることになりました。
オデュッセウスは歌声を聴いてみたいと思いましたが、正気を失うことも知っていました。
そこで彼は部下にこう命令しました。
「私の体を船の柱にこれでもかと強く縛り付けろ。もし私が『縛り目を解け!』と叫んで命令しても、絶対に、絶対に無視して、さらにきつく縛り直せ」
案の定、怪物の歌声を聴いたオデュッセウスは狂い狂って「解け! 船を向けろ!」と叫びましたが、部下たちは「絶対服従のルール」に従って彼を無視し続けました。
結果、船は無事に生還したのです。
これこそが「ルールへの絶対服従」の本質です。
「未来の自分がバカになること」を予測し、その自分が暴れたとしても絶対に切れない鎖を作っておくこと。
それが、自分という船を沈没させないための知恵なのです。
そこで、この思考法を「単なる思考停止のロボット」にせず、自分を劇的に成長させる武器にするためには、いくつかの重要な条件があります。
ここを理解していないと、本当にただの「都合の良い奴隷」になってしまいます。
先ず1つ目は、「ルールは自分で納得して決めるか徹底的に吟味すること」です。
「絶対服従すべきルール」とは、他人に理不尽に押し付けられた意味のない校則のようなものではありません。
・投資のプロが持つ「資産が5%減ったら強制的に損切りする」というルール
・プロのアスリートが持つ「試合前日は必ず午後10時に就寝する」というルール
これらは全て、「過去の膨大なデータと失敗から導き出された、最も成功率の高い行動」を言語化したものです。
自分が納得している、或いはその分野の最適解であることが証明されているルールだからこそ、命がけで従う価値があります。
2つ目は、「例外を一切認めないこと」です。
ここが「絶対服従」と呼ばれる所以であり、多くの人が失敗するポイントになります。
ルールを作っても上手くいかない人は、必ずこう言います。
- まぁ、今回は「特別に」いっか・・・ -
- 今日だけは例外にしよう・・・ -
確率論や心理学の世界において、「1回だけの例外」を認めた瞬間、そのルールは完全に崩壊します。
ダイエット中に「今日だけ特別」と食べたケーキは、翌日の「今日も特別」への入り口です。
脳は一度でも抜け道を見つけると、次からはルールを破るための言い訳をクリエイティブに量産し始めてくれます。
例外を作らない。
100%か、さもなくば0%か。
つまり、脳の暴走を止めるには、決定論的思考で挑まなければならないのです。
3つ目は、「ルールを破ったときの自動ペナルティを設定すること」です。
人間の意志の力はゴミ袋並みに脆弱です。
「絶対守るぞ!」と心に誓うだけでは無駄です。
ルールとペナルティはセットにしなければなりません。
例えば、「毎朝6時に起きる」というルールを作るなら、「起きられなかったら、妻に1,000円を自動で送金するアプリを設定する」といった、自分の意志が介在する余地のない物理的なペナルティを組み込みます。
恐怖や痛みが伴って初めて、ルールは「絶対のもの」として自分の脳に認識されます。
4つ目は、「ルールの変更は、現場から離れた冷静な時に行うこと」です。
「絶対服従なら、一度決めたルールは一生変えられないの?」と思うかもしれません。
そんなことはありません。
時代や状況が変われば、ルールもブラッシュアップする必要があります。
但し、変更して良いのは「心が完全に凪いでいる、冷静なオフタイム」だけです。
ビジネスの真っ最中、トラブルでパニックになっている時にルールを変更してはだめです。
週末にオフィスで一人、コーヒーを飲みながら、今週のデータを振り返って「よし、来週からはルールBに変えよう」と修正する。
現場にいる間はルールに絶対服従し、作戦会議室に戻った時だけルールを疑う。
この切り分けが極めて重要なのです。
そして、この「ルールに絶対服従する」ことが、なぜ「最強の自由」が手に入ると言えるのかということです。
それは、これを徹底した先には、誰もが羨む「3つの最強の自由」が待っているからです。
1つ目は、「無駄に悩むという最大のコストから解放されること」です。
スティーブ=ジョブズが毎日同じ黒のタートルネックとジーンズを着ていたのは有名な話です。
彼は「毎朝、服を選ぶ」という小さな決断の連続が、脳のエネルギーを無駄遣いすることを知っていました。
ルールに絶対服従すると、毎日の行動から「どうしようかな」と悩む時間が消滅します。
- 朝起きたら、机に向かって15分日記を書く -
- 上司に叱られたら、とりあえず『ご指摘ありがとうございます』と言う -
行動が自動化されるため、脳のメモリが常にクリーンになり、本当に重要なクリエイティブな仕事に全エネルギーを集中できるようになります。
2つ目は、「後悔という毒親が消えること」です。
我々は、自分の感情で選んだ結果が失敗したとき、激しく後悔します。
- なんであの時、あんなこと言っちゃったんだろう -
- こんなもの、買わなきゃよかったよ -
しかし、ルールに従って行動して失敗した場合、不思議と後悔は小さくなります。
なぜなら「私は正しいルールに従った。結果が悪かったのは、今回はたまたま確率の波に弾かれただけだ。悪いのは私ではなく、ルールの設定だ」と、自分自身と結果を切り離して評価できるからです。
自分を責める必要がなくなるため、メンタルは常に無敵であり続けられるのです。
3つ目は、「圧倒的な打席数と成果が手に入る」です。
気分で動く人は、「やる気が出たらやろう」と考えます。
しかし、やる気なんていう不確実なものを待っていたら、1年などあっという間に過ぎてしまいます。
ルールに絶対服従する人は、「やる気があろうがなかろうが、時間が来たらやる」というマシーンです。
結果として、気分のムラがある人の10倍、20倍の行動量を叩き出します。
天才とは、優れたルールに誰よりも長く絶対服従し続けた人の別名なのです。
最後に、日常を劇的に変えるための、具体的で小さなルールの例を紹介します。
まずはこれくらいシンプルで、絶対に守れるものから「絶対服従の快感」を味わってみるのも良いと思います。
【仕事のルール】:マルチタスク禁止令
内容:「パソコンで一つのタブを開いて作業している時は、スマホを別の部屋に置く。他の作業の通知が来ても、今の作業が終わるまで1秒も見ない」
効果:集中力が劇的に向上し、仕事が2倍の速さで終わるようになります。
【人間関係のルール】:24時間寝かせの法則
内容:「イラッとするメールやLINEが来たら、その場では絶対に返信しない。文面だけ作って下書きに入れ、必ず24時間経ってから送信ボタンを押す」
効果:感情に任せた爆弾発言がなくなり、周囲からの信頼がバグレベルに跳ね上がります。
多くの人は、ルールを「自分を閉じ込める檻」だと思っています。
だから破りたくなるし、従うのが苦痛になります。
しかし、ここまで読んでくれれば理解できているはずです。
ルールとは、獰猛な感情の嵐、不確実な世間の荒波、そして時々暴走する「自分自身」という魔物から、自分の生命と未来を守るために設計された「最強の鎧」なのです。
ですから、鎧を脱ぎ捨てようとするのは、ただの無謀な反逆です。
自ら進んで最強の鎧を身にまとい、その重さに耐えて戦場を駆ける者だけが、誰も到達できないレベルの圧倒的な自由と成果を手に入れます。
- 従わされるな、自ら従え -
自分が作ったその重厚なルールに、今日から一歩も退かずに「絶対服従」してみましょう。
