三井物産(8031)vs 双日(2768)— 事業成長力を徹底比較する
【世界規模の事業群を回すキャッシュ創出企業 vs 得意分野を束ねてROEを高める変革型商社】
記録日:2026年7月31日
株価・バリュエーションは、比較時点をそろえるため 2026年7月31日終値 を基準にしています。
三井物産、双日とも東証プライム市場に上場しており、記事作成時点で上場廃止予定や注意情報の表示は確認されていません。
三井物産は東京証券取引所のほか、名古屋・札幌・福岡の各証券取引所にも上場しています。
両社とも3月期決算、会計基準はIFRSです。
双日は2026年7月31日に2027年3月期第1四半期決算を発表済みです。
三井物産の2027年3月期第1四半期決算は2026年8月4日12時発表予定です。このため、最新四半期の比較には時点差があります。
三井物産は2024年7月1日付で普通株式1株を2株に分割しています。株価・配当・EPSは分割後ベースです。
三井物産の代表取締役社長CEOは堀健一氏、双日の代表取締役社長CEOは植村幸祐氏です。
総合商社の収益は、資源価格、為替、持分法投資、資産売却益などで大きく動きます。本記事では当期利益だけでなく、基礎営業キャッシュ・フローや基礎的営業キャッシュ・フローも重視します。
筆者の注目ポイント
注目度:三井物産 ★★★★☆ / 双日 ★★★★★(5段階)
筆者は今回は 双日にやや注目 しています。
双日は2027年3月期第1四半期に、親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比43.4%増の302億円となりました。通期では1,300億円、前期比25.5%増を見込み、ROE12%、年間配当180円を目標としています。
2026年7月31日時点の予想PERは約8.6倍、PBRは約1.0倍、予想配当利回りは約3.3%です。株主資本DOE4.5%を基準とする累進的な配当方針もあり、利益成長・資本効率・還元・評価水準の組み合わせを評価しました。
一方、三井物産は基礎営業キャッシュ・フロー約1兆円を継続的に生み出す、国内最高水準の事業ポートフォリオを持ちます。鉄鉱石、LNG、モビリティ、インフラ、ヘルスケア、食品などの事業規模と投資回収力は双日を大きく上回ります。
三井物産の株価には事業の質が相応に反映されており、予想PER約15倍、PBR約1.6倍です。今回は相対的な割安感と足元の利益成長から双日に星を1つ多くしましたが、事業の安定性とキャッシュ創出力では三井物産が優位です。
① 現在の株価・バリュエーション比較
三井物産
株価:4,937円
時価総額:約14兆円
予想PER:約15.2倍
PBR:約1.60倍
ROE:10.2%
2027年3月期予想配当:年間140円
予想配当利回り:約2.84%
2026年3月期末BPS:3,093.56円
親会社所有者帰属持分比率:42.1%
決算期:3月
会計基準:IFRS
双日
株価:5,381円
時価総額:約1兆1,300億円
予想PER:約8.6倍
PBR:約1.03倍
2026年3月期ROE:10.1%
2027年3月期目標ROE:12%
2027年3月期予想配当:年間180円
予想配当利回り:約3.35%
2027年3月期第1四半期末の親会社所有者帰属持分:約1兆1,447億円
親会社所有者帰属持分比率:30.7%
ネットDER:1.02倍
決算期:3月
会計基準:IFRS
バリュエーションから見える違い
三井物産の時価総額は双日の約12倍です。
三井物産は、大規模な資源権益と非資源事業、約1兆円の基礎営業キャッシュ・フロー、強い財務基盤に対してプレミアムが付いています。
双日はPER・PBRが低く、配当利回りが高い一方、親会社所有者帰属持分比率は三井物産を下回り、ネットDERは1倍を超えています。割安感だけでなく、投資後の負債管理とキャッシュ回収まで確認する必要があります。
総合商社のPERは、資源価格や一時的な売却益で大きく変わります。単年度の純利益だけでなく、基礎的なキャッシュ創出力とROEの持続性を見ることが重要です。
出典:各社IR、Yahoo!ファイナンス。株価は2026年7月31日終値。時価総額は発行済株式数等から概算しています。
② 直近決算の比較
三井物産の2026年3月期
収益:13兆9,952億22百万円、前期比4.6%減
税引前利益:1兆870億56百万円、同4.2%減
親会社の所有者に帰属する当期利益:8,339億71百万円、同7.4%減
基礎営業キャッシュ・フロー:9,789億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:9,529億円
ROE:10.2%
年間配当:115円
自己株式取得:2,000億円
当期利益は減少しましたが、基礎営業キャッシュ・フローは約1兆円を確保しました。
セグメント別の当期利益
金属資源:2,536億円
エネルギー:1,642億円
機械・インフラ:2,259億円
化学品:675億円
鉄鋼製品:189億円
生活産業:520億円
次世代・機能推進:590億円
その他・調整:マイナス71億円
金属資源・エネルギーの合計は約4,178億円で、全社利益の約半分を占めます。
一方、機械・インフラ、生活産業、次世代・機能推進などの非資源分野からも大きな利益を生み出しており、単一の商品市況だけに依存する構造ではありません。
三井物産の2027年3月期会社予想
親会社の所有者に帰属する当期利益:9,200億円、前期比10.3%増
予想EPS:324.61円
予想年間配当:140円
予想配当性向:約43%
新たな中期経営計画の初年度として、前期から25円の増配を予定しています。
第1四半期決算は2026年8月4日発表予定です。鉄鉱石、原油・ガス価格、為替に加え、機械・インフラや生活産業の利益が計画どおり進んでいるかが焦点になります。
双日の2026年3月期
収益:2兆7,573億円、前期比9.9%増
親会社の所有者に帰属する当期利益:1,036億円、同6.3%減
基礎的営業キャッシュ・フロー:1,364億円
ROE:10.1%
年間配当:165円
配当性向:33.3%
収益は増えましたが、当期利益は中期計画の目標1,150億円を下回りました。
双日は、中期計画の2年間で約3,000億円を投資する一方、低収益事業の入れ替えも進めています。今後は投資額より、投資先が利益とキャッシュを生むまでの速度が重要です。
双日の2027年3月期第1四半期
収益:8,342億49百万円、前年同期比39.3%増
税引前利益:411億17百万円、同64.8%増
四半期利益:323億57百万円、同47.4%増
親会社の所有者に帰属する四半期純利益:302億22百万円、同43.4%増
基礎的営業キャッシュ・フロー:約400億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:マイナス572億79百万円
会計上の営業キャッシュ・フローは、営業債権や棚卸資産など運転資金の増加でマイナスでした。
一方、会社が事業の基礎的なキャッシュ創出力として示す基礎的営業キャッシュ・フローは約400億円です。利益が伸びても現金回収が遅れる場合があるため、通期では運転資金の正常化を確認したいところです。
第1四半期の主なセグメント利益
化学:111億円
エネルギー・ヘルスケア:69億円
リテール・コンシューマーサービス:43億円
航空・社会インフラ:34億円
生活産業・アグリビジネス:27億円
金属・資源・リサイクル:21億円
自動車:マイナス3億円
化学の進捗率が高く、全社利益をけん引しました。自動車は赤字であり、すべての事業が同じ方向へ伸びているわけではありません。
双日の2027年3月期会社予想
親会社の所有者に帰属する当期利益:1,300億円、前期比25.5%増
ROE:12%
ROA:3.5%
基礎的営業キャッシュ・フロー:会社計画に沿って拡大
予想年間配当:180円
第1四半期の純利益進捗率は約23%です。順調な出だしですが、化学事業の上振れが持続するか、資源・自動車事業が改善するかが通期達成のポイントです。
出典:三井物産「2026年3月期 決算短信・決算説明資料」「中期経営計画2029」、双日「2027年3月期 第1四半期決算短信・決算説明資料」。
③ 事業構造・中期計画の比較
三井物産の事業構造
三井物産は、世界各地の資源・インフラ・産業事業へ長期投資し、事業経営とトレーディングを組み合わせる総合商社です。
主な事業領域
金属資源:鉄鉱石、銅、原料炭、リサイクル
エネルギー:LNG、石油・ガス、次世代燃料
機械・インフラ:自動車、鉄道、船舶、発電、物流インフラ
化学品:基礎化学、肥料、機能材料
鉄鋼製品:鋼材流通、加工、エネルギー関連鋼材
生活産業:食料、食品、流通、ヘルスケア
次世代・機能推進:ICT、金融、物流、不動産、新規事業
三井物産は「投資して持ち続ける会社」ではありません。
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