【半導体関連銘柄】東京エレクトロン(8035)vs SCREENホールディングス(7735)— 事業成長力を徹底比較する
【半導体製造装置の日本2大巨頭 ― エッチング・成膜の王者 vs 洗浄装置のトップシェア】
記録日:2026年5月7日
東京エレクトロン:株価 51,960円(5/7 年初来高値更新)|東証プライム|3月決算|連結決算|日本基準
SCREENホールディングス:株価 約18,600円(4月下旬時点)|東証プライム|3月決算|連結決算|日本基準
※両社ともに3月決算・日本基準・連結決算であり、直接比較が可能です。
※東京エレクトロンは2026年4月30日に2026年3月期本決算を発表済みですが、2027年3月期通期予想は非開示で、上期予想のみ開示しています。
※SCREENHDは2026年5月13日に2026年3月期本決算発表予定です。本記事のデータは3Q累計実績に基づきます。
筆者の注目ポイント
注目度:東京エレクトロン ★★★★★ / SCREEN HD ★★★★☆
筆者は東京エレクトロンにやや強い関心を持っている。前期は増収減益だったが、来期上期予想は売上+33%・営業利益+42%と大幅な回復を見込む。AI半導体向け設備投資の本格化により、エッチング・成膜装置の需要が急拡大するフェーズに入りつつある。SCREEN HDは洗浄装置でグローバルシェアトップだが、メモリー向けの弱さが足を引っ張っており、AI需要の恩恵を受けるタイミングがやや遅れている。
① 現在の株価・バリュエーション比較
東京エレクトロン(8035)
株価:51,960円(2026年5月7日・年初来高値)
PER(実績・26/3期):約42倍
PBR(実績):約11.5倍
ROE(実績):約28%
配当利回り(実績・26/3期):約1.2%(年間601円)
自己資本比率:約75%
時価総額:約24.3兆円
決算期:3月(日本基準)
SCREENホールディングス(7735)
株価:約18,600円(4月下旬)
PER(予想・26/3期):約20倍
PBR(実績):約4.4倍
ROE(予想):約20%
配当利回り(予想):約1.5%
自己資本比率:約55%
時価総額:約1.8兆円
決算期:3月(日本基準)
時価総額は東京エレクトロン24.3兆円に対しSCREEN HD 1.8兆円と約13倍の差。PERは東京エレクトロン42倍 vs SCREEN HD 20倍で、利益ベースではSCREEN HDが割安。ただし東京エレクトロンの来期上期は大幅増益予想であり、来期通期ベースではPERが大幅に低下する見込み。PBRは東京エレクトロン11.5倍 vs SCREEN HD 4.4倍で、市場の成長期待に大きな差がある。ROEは両社とも20〜28%台と高水準。
② 直近決算の比較
東京エレクトロン — 2026年3月期(通期実績)・2027年3月期(上期予想)
2026年3月期 通期実績(連結)
売上高:2兆4,435億円(前期比+0.5%)
営業利益:6,249億円(同-10.4%)
経常利益:6,303億円(同-10.9%)
純利益:5,744億円(同+5.6%)
営業利益率:25.6%
年間配当:601円(前期574円から増額)
2027年3月期 上期会社予想
売上高:1兆5,700億円(前年同期比+33.1%)
営業利益:4,310億円(同+42.2%)
出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算短信(2026年4月30日発表)
前期は中国向け設備投資の一服感で営業利益-10%の減益だったが、純利益は投資有価証券売却益もあり+6%の増益。注目すべきは来期上期予想の強さで、売上+33%・営業利益+42%と大幅な回復を見込む。生成AI用途の半導体向け設備投資(ロジック2nm増強、HBM4向けDRAM増産)が急拡大するフェーズに入る。通期予想は非開示だが、アナリスト予想は売上2.8-2.9兆円、営業利益7,600億円前後を見込む声が多い。
SCREEN HD — 2026年3月期(3Q累計実績+通期見通し)
2026年3月期 3Q累計実績(2025年4月-12月・連結)
売上高:4,253億円(前年同期比-7.5%)
営業利益:774億円(同-23.0%)
2026年3月期 通期見通し(3Q発表時点)
減収減益を見込む(メモリー向け洗浄装置の需要低迷が主因)
ディスプレー製造装置事業はOLED向けが好調
出典:SCREEN HD 2026年3月期第3四半期決算短信、Yahoo!ファイナンス、Investing.com
3Q累計は売上-8%、営業利益-23%と厳しい数字。主力の半導体製造装置事業(洗浄装置中心)がメモリー向けの弱さで減速した。一方、ディスプレー製造装置事業はOLED向け需要の伸長で好調。本決算は5月13日発表予定で、来期見通しの開示が注目される。
③ 事業構造・中期計画の比較
東京エレクトロン(8035)
半導体製造装置で世界3位の日本最大手。エッチング装置、成膜装置(CVD・PVD)、コータ/デベロッパ、洗浄装置など、半導体前工程の幅広い製造装置を供給。TSMC・サムスン・Intel・SKハイニックス等の主要半導体メーカーが顧客。
強み
時価総額24.3兆円・半導体製造装置で世界3位の規模
エッチング・成膜装置で高いグローバルシェア
AI半導体(ロジック2nm、HBM4向けDRAM)の設備投資拡大の直接的な受益者
営業利益率26%・ROE 28%の高収益体質
配当性向50%目安の明確な株主還元方針
自己資本比率75%の堅牢な財務
課題
PBR 11.5倍と過去レンジの上限に近い高バリュエーション
前期は営業利益-10%と減益局面を経験
中国向け売上比率が高く、輸出規制リスクに晒される
半導体設備投資サイクルへの依存度が高い
中期方針
5,300億円の設備投資計画を推進し、AI半導体向けの生産能力を増強。2nm以降の先端ロジック・HBM4向けDRAM・NAND向け装置の3本柱で成長を目指す。配当性向50%を維持しつつ、業績連動型の増配を継続。
SCREENホールディングス(7735)
半導体製造装置(洗浄装置中心)で世界シェアトップの専業装置メーカー。洗浄装置に加え、ディスプレー製造装置、産業機器も手がける。
強み
枚葉式洗浄装置で世界シェアトップ
洗浄工程は半導体製造の全工程で必要であり、需要のベースが広い
ディスプレー製造装置事業がOLED向けで好調、事業の多角化が進む
PER 20倍・PBR 4.4倍は東京エレクトロンと比較して割安
ROE 20%と資本効率が良好
課題
前期は売上-8%、営業利益-23%と減収減益
メモリー向け洗浄装置の需要回復が遅れている
時価総額1.8兆円と東京エレクトロンの13分の1の規模
製品ラインが洗浄装置に集中しており、東京エレクトロンほどの装置種類の幅がない
中期方針
半導体洗浄装置のグローバルシェア拡大と、ディスプレー製造装置のOLED向け成長を推進。AI半導体の先端プロセスでは洗浄工程の重要性が増しており、中長期的な需要拡大に期待。
④ 2社のビジネス戦略の違い
東京エレクトロンとSCREEN HDは、ともに半導体前工程の装置メーカーだが、事業ポートフォリオと規模感に大きな差がある。
東京エレクトロンは 「半導体製造装置のフルラインナップ企業」 として、エッチング・成膜・コータデベロッパ・洗浄と、前工程の主要装置を網羅的にカバーしている。この幅広さが、ロジック・DRAM・NANDのいずれの投資サイクルでも恩恵を受けられる構造を生んでいる。規模感も売上2.4兆円と段違いで、TSMCの2nm量産やHBM4向けDRAM増産という「AI半導体の本丸」の需要を直接的に取り込める。
SCREEN HDは 「洗浄装置のスペシャリスト」 として、特定工程での圧倒的なシェアを武器にする特化戦略。洗浄工程は半導体製造のあらゆるプロセスで必要なため、需要のベースは広い。ただし、メモリー向けの比率が相対的に高く、メモリー設備投資の低迷がダイレクトに業績に影響する。ディスプレー製造装置というもう一つの柱を持つ点は東京エレクトロンにない多角化要素。
来期の回復フェーズでは、AI半導体(先端ロジック+HBM)の設備投資が爆発的に拡大する見込みで、この恩恵をより直接的に受けるのは東京エレクトロン。SCREEN HDはメモリー全体の投資回復が鍵を握る。
⑤ 今後3年間の事業環境シナリオ
※あくまで事業環境の整理であり、株価予測ではありません。
追い風シナリオ
AI半導体投資が年率30%超で拡大、2nm/1.4nmロジックの設備投資が加速
HBM4・HBM4Eの量産でDRAM設備投資が過去最高を更新
NAND投資も層数増加(300層超)で底打ち・回復
東京エレクトロンへの影響: 売上3兆円超・営業利益8,000億円超への拡大。5,300億円投資計画が加速
SCREEN HDへの影響: メモリー回復+先端ロジック向け洗浄需要の急増で、売上・利益とも過去最高更新へ
基本シナリオ
AI半導体投資は堅調だが、レガシー半導体は低調
DRAM投資は回復基調、NANDは緩やか
中国向けは現行規制水準で推移
東京エレクトロンへの影響: 上期予想(売上+33%、営業利益+42%)はほぼ達成。通期は売上2.8兆円前後
SCREEN HDへの影響: 来期は緩やかに回復するが、メモリー向けの本格回復には時間がかかる
逆風シナリオ
AI投資バブルの崩壊で半導体需要が急減
中国向け輸出規制がさらに強化される
半導体設備投資サイクルが2018-19年型の大幅調整に入る
東京エレクトロンへの影響: 中国向け売上の急減で営業利益が再度減益に。ただし自己資本比率75%の財務体力で持ちこたえる
SCREEN HDへの影響: メモリー向けの低迷が長期化し、減収減益が継続。ディスプレー事業がどこまで下支えできるかが焦点
⑥ 筆者が東京エレクトロンに注目する理由
理由1:来期上期の大幅回復(売上+33%、営業利益+42%)
前期の踊り場を経て、来期は2nm量産・HBM4増産の本格的な需要拡大フェーズに突入。上期だけで売上1.6兆円・営業利益4,310億円を見込む強さは、半導体サイクルの回復を明確に示している。
理由2:AI半導体の「本丸」に直結するポジション
エッチング・成膜装置はAI半導体の製造に不可欠。TSMCの2nm増強、SK・マイクロンのHBM4量産、いずれも東京エレクトロンの装置需要に直結する。
理由3:配当性向50%・年間601円の株主還元
業績連動型で配当性向50%を目安とする方針は明確。前期は純利益+6%増益を受けて配当601円(前期574円から増額)。来期の増益局面ではさらなる増配が期待できる。
逆の見方・反論ポイント
PBR 11.5倍は過去10年レンジの上限に近く、相当な成長期待が織り込まれている。期待を下回ればバリュエーション調整のリスクが大きい
SCREEN HDのPER 20倍・PBR 4.4倍は東京エレクトロンの半分以下で、メモリー回復時の利益弾性は大きい
SCREEN HDの洗浄装置は全工程で必要な「インフラ的」な装置であり、半導体設備投資の回復局面では広く恩恵を受ける
SCREEN HDのディスプレー事業(OLED向け好調)は東京エレクトロンにはない多角化要素であり、事業リスクの分散に寄与している
東京エレクトロンの通期予想非開示は、来期後半の不透明感を示している可能性がある
⑦ 両社の競合マップ(6社)
直接競合(2社)
ラムリサーチ(NASDAQ: LRCX) — エッチング装置で世界トップシェアの米国企業。東京エレクトロンのエッチング事業の最大のライバル。先端ロジック・メモリー向けの高アスペクト比エッチングで技術競争が激しい。
KOKUSAI ELECTRIC(6525) — 成膜装置(バッチ式CVD)に特化した日本企業。東京エレクトロンの成膜事業と部分的に競合。メモリー向け比率が高く、SCREEN HDとも市場サイクルを共有する。
広義の競合(2社)
アプライド・マテリアルズ(NASDAQ: AMAT) — 半導体製造装置の世界最大手。成膜・イオン注入・CMP等の幅広い装置で東京エレクトロンと全面的に競合する。売上規模は東京エレクトロンの約1.5倍。
ディスコ(6146) — 半導体ウェハの切断・研削装置の世界トップ。前工程(東京エレクトロン・SCREEN HD)とは異なる後工程が主戦場だが、HBM向けのダイシング需要急拡大で半導体設備投資のCapExを共有する競合関係。
海外 or 代替競合(2社)
ASMLホールディング(ASML) — EUV露光装置の独占者。東京エレクトロン・SCREEN HDの顧客と同じファブ(TSMC・サムスン・Intel)のCapEx予算を分け合う関係。露光→エッチング→洗浄という工程の流れの中で、投資の優先順位を争う。
北方華創(NAURA・中国深圳A株) — 中国の半導体製造装置メーカー。エッチング・成膜・洗浄装置で中国国産化を推進しており、東京エレクトロン・SCREEN HDの中国市場での長期的な脅威。輸出規制が強化されるほど北方華創の中国内シェアが拡大するリスクがある。
※あくまで事業環境の理解を補助する目的であり、他銘柄の推奨ではありません。
⑧ 共通のリスク要因
半導体設備投資サイクルの下振れ(AI投資減速・メモリー不況長期化)
中国向け輸出規制の強化(両社とも中国売上比率が高い)
米中対立・台湾海峡リスクによるサプライチェーンの混乱
為替変動リスク(円高は輸出企業にとって逆風)
装置の技術的な世代交代リスク(新技術が既存装置を陳腐化させる可能性)
高PBR(11.5倍 / 4.4倍)への金利上昇による圧縮リスク
主要顧客(TSMC・サムスン)の設備投資計画の変更リスク
人材獲得競争と製造キャパシティの制約
⑨ 読者の関心軸別まとめ
※特定の投資行動を推奨するものではありません。
成長性重視 — 東京エレクトロンの来期上期予想(売上+33%、営業利益+42%)は半導体セクター全体の中でも突出した回復力を示している。AI半導体の「本丸」(2nmロジック・HBM4)に直結するポジションの強さ。SCREEN HDはメモリー回復待ちの状況で、成長の立ち上がりがやや遅い。
安定性重視 — 東京エレクトロンの自己資本比率75%・時価総額24.3兆円は安定性の面で圧倒的。装置種類の幅広さも、特定工程への依存リスクを分散している。SCREEN HDはディスプレー事業という別の柱を持つ点は評価できるが、規模の小ささと メモリー依存度の高さがリスク。
配当重視 — 東京エレクトロンの年間601円(配当性向50%目安)はSCREEN HD(配当利回り約1.5%)をやや上回る水準。来期増益局面では東京エレクトロンの増配余地が大きい。
バリュー重視 — SCREEN HDのPER 20倍・PBR 4.4倍は東京エレクトロン(42倍・11.5倍)と比較して明確に割安。メモリー市況の回復が確認されれば、利益弾性の大きいSCREEN HDの方がバリュー投資の観点では魅力的。
記録データ
東京エレクトロン(8035)
株価:51,960円(2026年5月7日・年初来高値)
PER(実績・26/3期):約42倍
PBR(実績):約11.5倍
ROE(実績):約28%
配当利回り(実績):約1.2%
自己資本比率:約75%
時価総額:約24.3兆円
26/3期実績:売上2兆4,435億円 / 営業利益6,249億円 / 純利益5,744億円
27/3期上期予想:売上1兆5,700億円 / 営業利益4,310億円
SCREENホールディングス(7735)
株価:約18,600円(4月下旬)
PER(予想・26/3期):約20倍
PBR(実績):約4.4倍
ROE(予想):約20%
配当利回り(予想):約1.5%
自己資本比率:約55%
時価総額:約1.8兆円
26/3期3Q累計:売上4,253億円 / 営業利益774億円(通期は5/13発表予定)
数値の出典
東京エレクトロン:2026年3月期決算短信(2026年4月30日発表)、楽天証券、Yahoo!ファイナンス、IRBANK、日本経済新聞
SCREEN HD:2026年3月期第3四半期決算短信、IRBANK、Investing.com、Yahoo!ファイナンス
株価データ:Yahoo!ファイナンス、松井証券、日本経済新聞
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重要事項
本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言に該当するものでもありません。記載された情報は作成時点のものであり、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任において行ってください。本記事に基づいて行われたいかなる投資行動の結果についても、筆者は一切の責任を負いません。
おまけ:今日のひとこと用語解説
HBM(High Bandwidth Memory) って何?
HBMとは、AI半導体(GPUやアクセラレータ)の横に積み重ねて載せる超高速メモリのこと。普通のメモリ(DDR5など)はチップの外にあって、データのやり取りに時間がかかる。HBMはDRAMチップを何枚も縦に積み上げて1つのパッケージにし、GPUのすぐ隣に置くことで、データの通り道を一気に広くする仕組み。たとえるなら、普通のメモリが「1車線の道路」なら、HBMは「8車線の高速道路」のようなもの。AIの学習や推論には大量のデータを超高速で処理する必要があり、HBMなしでは最新のAI半導体は性能を発揮できない。最新の「HBM4」は2026年に本格出荷が始まる予定で、この製造に使う装置需要が東京エレクトロンやSCREEN HDの業績を押し上げている。
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