【短編小説】グリフォンの兄弟
二匹のグリフォンがサバンナに産まれ落ちた日、獅子の王国と鷲の王国との戦いは終わりを告げた。
獅子の脚と鷲の翼を持つ兄弟が、平和を望む神からのお告げとされたのだ。
二つの王国に平和がおとずれたのは長らくぶりのこと。
二匹のグリフォンは獅子からも鷲からも愛でられ、すくすくと育った。
しかしどれだけ成長しようとも、二匹は獅子でも鷲でもなかった。
翼のために獅子ほどは早く駆けれず、脚のために鷲ほどは高く飛べなかったのだ。
ある日のこと、じゃれあう兄弟の前に父のグリフォンが現れた。
「今、お前たちはグリフォンの姿をしている。しかし、この先は獅子として生きることも、鷲として生きることも出来る。もちろんグリフォンとして生き続けることも出来る」
「僕は最もはやく地を駆ける獅子になりたい」
「僕は最も空高く飛べる鷲がいい」
兄の背からは翼が落ち、完全な獅子の姿へと変わった。
弟からは四本の脚が消え、完全な鷲の姿へと変わった。
兄は素晴らしく早く地を駆け、弟はどこまでも高く空を飛ぶことができた。
二匹は意気揚々と仲間のもとへと戻っていった。
兄は獅子の王国から手厚く迎えられたが、鷲たちからは遠ざけられた。
「おまえには鷲の翼がない」
弟は鷲の王国から歓声をもって迎えられたが、獅子たちからは遠ざけられた。
「おまえには獅子の前脚がない」
やがて、獅子の王国と鷲の王国の間で、再び戦いが始まった。
「神からのお告げはもういないぞ」
グリフォンの兄弟は戦士として死んだ。
兄は寝入りばな鷲の大群の前になすすべもなかった。
弟は地上での暫くの休息中に一匹の獅子に急襲された。
兄は獅子座上部の翼の位置に、弟はわし座下部の前脚の位置に小さく輝く六等星となった。
二つの王国に再び平和が訪れた。
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