【ブロックス】盤面から読み解くビジネス戦略の本質
はじめに
「ブロックス(Blokus)」というボードゲームをご存知でしょうか?
赤・青・緑・黄の4色、形の異なる21個のピースを、盤面に置いていくシンプルな陣取りゲームです。ルールは「自分のピースの角と角を接するように置く」というだけ。子供から大人まで楽しめるこのゲームですが、実はその盤上で繰り広げられる攻防には、驚くほど多くの経営戦略のエッセンスが詰まっています。
限られたリソースをどう配分し、競合の動きを読み、自社の領域をいかにして拡大していくか──。
このnote記事では、一見シンプルなボードゲーム「ブロックス」を題材に、ビジネスパーソンが明日から活かせる普遍的な戦略的思考を深く掘り下げていきます。たかがゲームと侮るなかれ。盤面は、あなたの会社の未来を映す鏡かもしれません。
そもそもブロックスとは?
本題に入る前に、ブロックスのルールを簡単にご紹介します。
目的: 自分の色のピースをできるだけ多く盤面に置くこと。最後に手元に残ったピースのマス目が少ない人ほど高得点。
ピース: テトリスのような様々な形のピースが、1色21個ずつあります。
ルール:
最初のピースは、それぞれの角のマスからスタートします。
2手目以降は、自分のピースの角と角が接するように置いていきます。辺と辺が接してはいけません。
他の色のピースとは、辺で接しても構いません。
誰もピースを置けなくなったらゲーム終了です。
この「角と角しか接してはいけない」という制約が、ブロックスの戦略性を非常に奥深いものにしています。
1. リソース配分の最適化:限りある「ピース」をどう使うか
ブロックスでプレイヤーが持つ21個のピースは、企業が持つ**経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)**そのものです。5マスの大きなピースもあれば、1マスしかない貴重なピースもあります。
ブロックスの定石の一つに、「序盤に大きなピースから使う」というものがあります。 なぜなら、ゲーム終盤になると盤面が埋まり、大きなピースを置くスペースがなくなってしまうからです。
これを経営に置き換えると、どうでしょう。
先行者利益の獲得: 市場の黎明期や、新しいプロジェクトの立ち上げ時には、大胆な投資(大きなピース)を行い、一気に市場での存在感を高めることが有効です。競合が少ないうちに広い事業領域を確保することで、後発企業に対する参入障壁を築くことができます。
機会損失の回避: 「いつか使おう」と温存していた優秀な人材や豊富な資金も、市場環境が変化してしまえば、その価値を最大限に発揮する機会を失ってしまうかもしれません。好機と見れば、ためらわずにリソースを投下する決断力が求められます。
一方で、1マスのピースは終盤、どんな隙間にもねじ込める万能な「切り札」です。経営における柔軟性の確保やリスクヘッジのための内部留保とも言えるでしょう。どのリソースを、どのタイミングで、どの市場(盤面のどのエリア)に投下するのか。ブロックスは、リソース配分の重要性を教えてくれます。
2. 競争戦略の本質:敵を「ブロック」し、自らの道を拓く
ブロックスの醍醐味は、なんといっても相手の進路を巧みに妨害する「ブロック」にあります。自社の陣地を広げるだけでなく、競合の拡大をいかにして防ぐかが勝敗を分けます。
これはまさに、経営における競争戦略そのものです。
弱者の戦略(ランチェster戦略): ブロックスでは、4人が入り乱れて戦います。自分より優位なプレイヤー(多くの陣地を確保しているプレイヤー)に対して、局地戦を挑み、その進路を限定させるような一手は非常に有効です。これは、市場シェアの低い企業が、特定の製品や地域に集中してリソースを投下し、強者と渡り合う「ランチェスター戦略」に通じます。
参入障壁の構築: 相手が次の一手を打ちにくそうな場所に、先回りしてピースを置く。これは、競合が参入しづらいように、特許や独自の技術、強力なブランドといった「参入障壁」を築く動きと似ています。
ただし、妨害ばかりに目を向けていると、自社のピースを置く場所がなくなってしまうというジレンマがあります。競合への対策と、自社の成長戦略。この2つのバランスを常に考えながら、次の一手を決断する必要があるのです。
3. 長期的視点と機会の創出:「角」を確保し、未来の選択肢を増やす
ブロックスで勝つためには、目先の1ピースを置くことだけでなく、常に盤面全体を俯瞰し、将来の展開を見据えることが不可欠です。
特に重要なのが、自社のピースの「角」を、できるだけ広いエリアに分散させておくことです。なぜなら、その「角」こそが、次のピースを置くための足がかり、つまり**未来の事業展開の可能性(オプション)**になるからです。
事業ポートフォリオの構築: 特定のエリア(主力事業)だけに固執するのではなく、盤面の様々な場所に「角」(新規事業の種、研究開発)を確保しておく。これにより、主力事業の市場が飽和したり、予期せぬ外部環境の変化が起きたりした際にも、別の場所から新たな事業を展開することができます。
アライアンスとM&A: 自社のピースだけでは届かないエリアに進出するために、他社のピースの隣に陣取る(アライアンス)という考え方もできます。盤面上の空いているスペースは、新たな市場機会(ブルーオーシャン)と捉えることもできるでしょう。
一つの角がブロックされても、別の角から展開できる。この戦略的な柔軟性こそが、不確実性の高い現代のビジネス環境を生き抜く上で極めて重要なのです。
まとめ:盤面からビジネスの世界へ
ブロックスは、私たちに多くの戦略的思考のヒントを与えてくれます。
リソース管理: 限りある資源を、どのタイミングで、どこに投下すべきか?
競争戦略: 競合をどう意識し、どう差別化を図るか?
長期的視点: 目先の利益だけでなく、未来の選択肢をどう確保するか?
状況分析と適応力: 刻一刻と変わる盤面(市場)を読み、計画を柔軟に変更できるか?
これらの問いは、ブロックスのプレイヤーだけでなく、すべてのビジネスパーソンが日々向き合っている課題ではないでしょうか。
もしあなたのチームの戦略立案が行き詰まったなら、一度気分転換にブロックスをプレイしてみてはいかがでしょうか。ゲームに熱中するうちに、複雑に見えたビジネス課題を解決する、シンプルで本質的な一手が見つかるかもしれません。
あなたのビジネスにおける、次の一手はどこに打ちますか?

