最後は、人の手で確かめる
切子職人は基本的に、
素材となるガラスを、
吹きガラスの職人さんにつくっていただいている。
工場規模のところもあれば、
スタジオグラスのような小規模な工房もある。
どちらも人の手でつくられていることに変わりはないけれど、
工場規模の生産では、
「型吹き」と呼ばれる方法で、
型にガラスを吹き込んで成形していく。
その“型”をつくる職人さんの工場を、
先日訪ねた。
開戸をガラッと開けて、
「こんにちはー」と声をかける。
聞こえなかったようで、
もう一度少し大きな声で
「こんにちはー!」と声をかけた。
するとそこにいたのは、
ちょうど自分の注文している型を制作している最中の後ろ姿だった。
出来立ての型についた金属屑を、
指で払いながら、
「最後は、人の手で確かめるのが一番だから」
と。

手土産を渡し、
お茶をいただきながら、
どうしてこの仕事に入ったのかを伺った。
もともとは、
親方である親父さんが始めた仕事だったそうだ。
ただ、親父さんの代では取引先が限られていたため、
一度外の会社へ勤めに出て、
そこから自分で少しずつ取引先を開拓していったという。
さらに、
金属型をつくるための「元型」をつくる職人さんも、
今では高齢の一軒に頼っている状況だと聞いた。
切子は、
最後に表面を削っている人だけの仕事ではない。
型をつくる人。
ガラスを吹く人。
道具をつくる人。
さまざまな人の技術の上に、
ようやく最後のカットができる。
今この瞬間、
自分の描いたものを形にしていただけることは、
本当に幸せなことだと思う。
当たり前のように続いていくように見えるけれど、
もしかしたら明日には、
できなくなってしまうかもしれない。
関わってくださる職人さんたちへの敬意と感謝を、
改めて強く感じた一日だった。
その中で、
自分に何ができるのか。
どんなものを残していきたいのか。
幸せを噛み締めながら、
考え、作っていきたい。
