26/05/23 「逆輸入」の裏にある冷徹なリアル。ものづくり大国日本が、頭脳(ブレーン)だけの国になる日【k-eye】
先日、日経新聞を読んでいて、日本のものづくりの構造がガラガラと音を立てて変わっていく、強烈な仕様変更(シフト)を感じるニュースが二つありました。
一つは、トヨタ自動車が国内の増産余力のなさを理由に、台湾の工場から主力ミニバン「ノア・ヴォクシー」を日本へ逆輸入するというニュース。そしてもう一つが、スズキ(SUZUKI)の戦略です。スズキは今、インドで生産した車をアフリカへと輸出する巨大なネットワークを構築しています。
かつて「逆輸入車」といえば、一時的な変化球でした。しかし、今の動きは違います。日本を代表するメーカーたちが、生き残りをかけて「生産も販売も完全に海外へシフトする」という、国境なき国際化のリアルな将来図(ビジョン)です。「企業の利益」という観点では正解かもしれませんが、私たちの足元にある「国内の現場」は、今まさに空洞化という名のシステムエラーに直面しています。
企業は生き残る。だが「国内の現場」はどうなる?
メーカーにとっては、人口が減り続ける日本にしがみつくより、海外で作って海外で売るほうが合理的です。その結果、将来の日本に何が残るかといえば、グループ全体を統括する「頭脳(ブレーン)としてのホールディングス(持株会社)」だけが国内に残る形です。
メーカーはそれでOKでしょう。しかし、問題は「昨日まで国内の生産ラインにいた人たちの、明日の飯代」です。
これは決して遠い未来の話ではありません。現に私たちが暮らす山陰地方でも、その痛みは発生しています。島根県松江市にある「三菱マヒンドラ農機」が今年3月に事業撤退と会社解散を発表したのは記憶に新しいところです。知事や市長が何百人もの再就職支援に動いていますが、これこそがこれから日本中で起きる「リアルな現象」なのです。
現場の人間が生き残るための「強制アップデート」
国内の工場が減っていく中で、現場で働いていた人たちが生き残る道は、泥臭い「職種のシフトチェンジ」しかありません。
手作業の組み立てラインが消える代わりに、爆発的に増えているのが「工場の自動化ロボットをメンテナンスするエンジニア」へのリスキリング(再教育)。あるいは、海外へ移転できないデータセンターや、今後30年で190兆円(国土交通省試算)もの修繕が必要とされる「国内インフラの保守」といった、泥臭い国内防衛の仕事への大移動です。
しかし、誰もが50代、60代になってから「明日からITやロボットを覚えてくれ」という強制アップデートに対応できるわけではありません。ついていけなかった労働力は、地域の生活インフラ(介護、配送、警備など)に吸収されていく。これが今の日本の生々しい現実です。
投資家・生活者としてどうサバイブするか
「頭脳(ブレーン)」だけが日本に残り、製造ラインはすべて外国へ。この冷徹なうねりの中で、私たち個人はどう動くべきでしょうか。
投資の視点で言えば、単に「海外で売れて儲かっている完成車メーカー」の株だけを見るOSはもう古いのかもしれません。本当にフカヨミして仕込むべきは、国内の深刻な人手不足を解決する「工場の自動化システム」や「国内インフラの維持管理」を手がける素材・インフラセクターだと、私は手応えを感じています。
まずは皆さんも、自分が応援している企業の「海外生産比率」がこの数年でどう変わったか、決算短信を5分だけ覗いてみてください。
かつて、工場の油の匂いと機械の音が日本の元気そのものでした。それが今は、サーバーの排熱と静かなプログラミングの音に変わろうとしています。寂しさはありますが、これが新しい「仕様」なら、私たちはそれに適応した最強のパッチを自分自身に当てていくしかありませんね。☕️
投資は自己責任でお願いします。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 
