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152. あらためて、AI 時代における、Digital Twins の意義とは?

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はじめに

前回まで、OpenEL デバイスドライバー標準の Digital Twins 対応について解説してきました。その活動を通じて、あらためて、Digital Twins の意義とは何なのか、ちょいと思ったことがあったので、今回の記事とします。

基本の確認

これまでの定期購読マガジンの記事にちりばめられてはいるのですが、改めて、今日のディスカッションのベース事項を確認することから始めます。

そもそも、Digital Twins は何かといえば、

  • 現実世界の存在のコピーをデジタル空間上につくる

以上でも、以下でもありません。そして、IT ソリューションとしての Digital Twins という技術やサービスは、それを実現するためのものだよ、ということ。
巷では、もっとなんだかよくわからない夢物語を勝手に追加して語っている人が多いので、そんな話を聞く機会があったら、本来の Digital Twins の話と、それに加わっている話し手の思いを分割して理解するとよいでしょう。

Digital Twins の基本はとっても簡単でシンプルなのですが、これが意外に深いんですよね。
デジタル空間上に作るコピーとは、現実世界の存在に付与されたデータ・情報です。現実世界の何を存在とするか、その存在に対して何をデータ・情報とするか、ここには、認識論とか存在論(Ontology)といった哲学や、データ・情報化とは、言語による思考を使うので、言語論理学・哲学が基盤になります。ウィトゲンシュタインの言語論理学によれば、言葉とは、

  • 区別できる(数え上げられる)存在の名前

  • モノの特徴の名前と値

  • モノとモノとの意味的つながり

によって意味が決まるとされていて、一個一個の単語だけでは意味をなさず、単語の集合全体(論理空間)で意味の構造が決まり、それぞれの意味が定義される、とされています。
そうであるなら、Digital Twins で作られる現実世界のコピーが意味を成すためには、上の3つの構造を持っていなければならないということ。

更に、マルクス・ガブリエルの新実存主義によれば(まぁ、大げさに言わなくてもね)、人間の認識は、”意味の場”ごとになされるとされています。
これから、

  • 論理空間 = 意味の場

であることになります。更に、”意味の場”は無数にあるとされていて、データ・情報は、それぞれの”意味の場”でしか意味を成しません。
よって、Digital Twins のコピーは、”意味の場”ごとに分離して作成しなければならないことになります。

時空間に存在する物しか、Digital Twins の対象にならないと狭い解釈をしている、Digital Twins 導入支援を生業にしている人もいるようですが、物理的な位置情報や部品構成も、単に一つの”意味の場”に過ぎず、それを特別扱いをする必要はありません。考えてもみてくださいね。ビジネスや日常生活で重要なのは、現実世界の物理的存在を基盤として展開される、人の脳味噌の思考にしか存在しない様々な論理的なエンティティの方でしょう。物理的な位置情報や部品構成しか、Digital Twins が扱えないなら、そんなの使うだけ無駄でしょうね。

筆者の補足

ちなみに、生成系AI の LLM の中身に、意味構造を記述する上述の3つの要素で構成されるデータ・情報のネットワークが学習の結果存在しているはず。

話を元に戻します。
簡単のため、現実世界の意味の場ごとに作られた Digital Twins によるコピーのことを、”Twin Graph” と呼ぶことにします。Twin Graph を構成する現実世界のモノのことを Twin と呼ぶことにしましょう。モノの特徴値は、Twin の Property であり、モノとモノの間の意味的つながりを Link と呼ぶことにします。Twin Graph は意味の場ごとに作られて、意味の場は無数にあるということは、ビジネスなどで重要だと思われる、複数の意味の場の Twin Graph を作成・保持・共有することを意味します。ある意味の場の Twin Graph を構成する Twin や Property、Link の中には、別の意味の場の Twin Graph のそれらと対応付けが可能な場合があります。

人間の思考の特性として、何かを見るたびに、毎度、上述の3種類で構成された Twin Graph を一から作り上げることは一般的ではありません。
ある意味の場から、何回かモノ・存在を見ていくうちに、それらを分類して、

  • 共通の特徴値の組を持つ

  • 別の概念と共通の意味的つながりを持つ

を、概念として名前をつけて記憶して、毎回、意味の場を通じて眺めた現実世界の存在を、その概念に当てはめて、あ、これは、”〇〇〇”だと認識する仕組みを持っています。この、

  • 名前が付いた概念

  • 概念が備えるべき特徴値の組

    • 名前とデータ型

  • 概念と概念の間のリレーションシップ(意味的つながりの分類)

から構成された構造のことを、Twin Gprah のスキーマと呼びます。このスキーマが、眺めている意味の場の意味の構造の記述に相当します。Twin Graph のスキーマのことを Twin Model と呼ぶことにしましょう。

ちなみに、この分類された結果である”概念”のことをプラトンは”イデア”、ヘーゲルは”Begriff”とか言っているものだと思われます。概念をひな型としたモノは現実に目にしたり手に取ったりできる存在です。契約とかお金(お札ではなく)、役割など、論理的で目にしたり手に取ったりできないものもあるのですが、これらも現実世界の存在と紐づけて頭の中で目にしたり手に取ったりは可能なので、同じと考えましょう。しかし、概念自体は、その現実世界の中には存在しません。そのため、プラトン哲学ではなんだか理想化されて概念の方が本当の存在なんだとか、ヘーゲルの精神現象学では、本当に存在するのは、それぞれの存在なのか概念なのかを延々と循環して悩んでいたりしています。
いやぁ…そんなに悩まなくても…
現実世界の写しとしての圏I、そのスキーマとしての圏C、人間の思考モデルはそういうものだ、ただそれだけで十分なのではないでしょうか。

著者の私見

Digital Twins の基本的な意味からすれば、Twin Graph の保持・共有だけで十分であり、それなら単なる Graph Database でも(ギリギリ)十分です。しかし、Twin Graph だけでは、その内容を活用したい時に、現実世界の変化に伴い、ドラスティックに変化する Twin Graph を相手にクエリーをかけ、つどつど、Twin と Property と Link から、その意味するところを解釈しなければなりません。
一方で、Twin Graph の保持・共有機構に、スキーマである Twin Model があれば、それを使って系統的に情報のクエリーが可能になり、都度都度意味の解釈を行う必要がなくなります。

これまで、使ってきた Twin Graph、Twin Model という用語は、Azure Digital Twins の用語と一致しています。以上から、何故、Azure Digital Twins が Digital Twins 用のサービスが理解できたことと思います。

概念モデリングの用語を使えば、

  • Twin Model ⇒ 概念情報モデル

  • Twin Graph ⇒ 概念情報モデルをひな型とした、概念インスタンスとリンクの集合

です。ちゃんとした Digital Twins をやりたい人が、Twin Model を定義したい場合、その定義スキルが無いなら、概念モデリングが使えますよ~ってこと。

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説明では、Microsoft Azure 中心‼…になっていますが、最近は、Azure に限らず、IoT・Digital Twins、加えて、AI、DX 等のシステム構築に関するもっと本質的な話題を書いています。なんちゃってから卒業したい技術者の皆さんぜひ、ご購読くださいませー

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