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住所のない手紙「お父さんへ」


昔、酒乱の父に手紙を書いて、ポストに入れたことがある。

ハガキにこう書いた。
「お父さん、いつ帰ってこれますか?」

父は、娘である私には優しかった。
でも、私の愛着対象だった母を殴る人でもあった。

それが、どうしても許せなかった。

雨の日だった。

住所も書かずに、
「お父さんへ」とだけ書いたハガキをポストに入れた。

小学校1年生の頃のこと。

今思い返すと、
「可愛いなあ、ふふっ」と思う。

父は飲み歩き、愛人の家で寝泊まりしながら仕事に行っていた。

そんな父が数日帰らないと、
母は少しだけ機嫌がよくなった。

いつも殴られている母が、
その間だけは、私にお菓子をくれたり、遊びに連れて行ってくれた。

さっきまで、YouTubeで雨のBGMを流していた。

その音を聞きながら、ふと思い出した。

あのハガキは、どこへ行ったんだろう。

#創作大賞2026 #エッセイ部門