映画感想文「PERFECT DAYS」
PERFECT DAYS=完璧な日々とは。
ドイツのヴィム・ヴェンダース監督が役所広司演じる東京のトイレ清掃員の日々を描いた映画である。
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で役所広司が男優賞を、作品はエキュメニカル審査員賞を受賞。
2024年の第96回アカデミー賞で日本代表作品として国際長編映画賞にもノミネートされた話題作だ。
監督や音楽友だちなど、みんなが良かったというので見てみることにした。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)は、変化に乏しいながらも充実した日々を送っていた。同じような日々を繰り返すだけのように見えるものの、彼にとっては毎日が新鮮で小さな喜びに満ちている。古本の文庫を読むことと、フィルムカメラで木々を撮影するのが趣味の平山は、いつも小さなカメラを持ち歩いていた。
ここから先はネタバレ含みます。
主人公・平山の淡々とした幸せな毎日
空が白み始めたころ、平山は目を覚ます。
歯磨きをして、育てている木々に水をやる。
いつもの缶コーヒーを片手に、車に乗り込み仕事に出かける。
車内はカセットテープからお気に入りの音楽が流れている。
トイレを周り、ひとつひとつ丁寧に掃除をしていく。
調子の良い無責任な後輩(柄本時夫:こういう役うますぎる)や、トイレ利用者との小さな触れ合い。
ランチはいつもの境内でサンドイッチ。
木々の木漏れ日をフィルムカメラに納める。
仕事を終え、銭湯に入りいつもの居酒屋で夕飯を済ませて帰宅。
読書をして眠りにつく。
数日働いて迎えた休日。
自転車で出掛けてお参り、コインランドリー、フィルムの現像へ。
部屋を掃除して、現像した写真をチェックする。
心を打たない写真は破り捨て、お気に入りを缶に保管する。
古本屋で本を買い、最後は密かに想いを寄せるママの小料理屋でママの歌声を味わう。
同じようで少し違う毎日。
彼はささやかな幸せを感じながら淡々と生きていた。
ある日、仕事から戻ると一人の少女が彼を待っていた。
家出した姪っ子だった。
仕事場についてきたり、自転車ででかけたり。
聡明な姪っ子との日々もすぐに終わりを告げる。
運転手付きの車で妹が姪っ子を迎えにやってきた。
とても品の良いご婦人だ。
「こんなとこ住んでんのね。別に悪い意味じゃないから」
続けて妹は言う
「お父さん、もう昔みたいじゃないから。会いに行ってあげて」と。
妹とハグして車が出た後、彼は泣いていた。
彼の過去については何も描かれていない。
手がかりはこの出来事と、彼の隠しきれない上品さと、音楽と本のセンスの良さくらいである。
PERFECT DAYSとは
彼は基本穏やかであった。
多くを語らないが人を恐れてはいないし、公園で目が合った人に微笑みかけるなど、コミュニケーションを避けるわけではない。
スマホを持たず、自分の心に従い生きている。
現代の悟りってこんな感じなのかもしれない。
しかし悟り切ってはいないのだ。
悟ってしまうと穏やかではあるが、感情の起伏もなくなる。
仕事が急に増えて怒ったり、
若い女性に頬にキスされて動揺したり。
小料理屋のママが男性と抱き合っているのを見たときは、
ショックを受けてお酒を買い込み流し込んでいた。
決まった毎日を過ごし、揺れる感情も味わいつつ生きていくのが彼のPERFECT DAYSなのだ。
ラストシーン。
それが打ち寄せる感情の波を映し出す役所広司の表情に集約されていた。
変な表現かもしれないが、その遷移はイカの激しい色の擬態を見るようだった。
私もPERFECT DAYSを見つけていきたい。
小さな幸せを感じながら、おだやかに暮らしたい。
今はちょっと、ばたばたしている。
彼の暮らしを参考にして、
寝る前の読書をするために読書灯を買った。
そして早寝早起きを試みた。
10時に布団に入り読書をしたが、その後1時間以上寝付けず。
「セトリはどうしよう」「このMCいいかも」「あの連絡しとかなきゃ」など脳内の思考はぎゅんぎゅん回転。
浅い眠りで4時に目覚めた。
頭は重いし、全然爽快な朝ではない。
そう、彼のPERFECT DAYSは私のそれとは違うのだ。
試し、違うものは手放しながら、削ぎ落としながら、
自分のPERFECT DAYSを見つけていくのだろう。
実験みたいに、楽しんで探していくことにする。
良い映画だった。
少し悶々としていた気持ちが晴れた。
立ち止まったり、迷ったりした時に見る、おすすめ映画である。
劇中歌もすごくよかったので貼っておく。
おまけ:平山の暮らしの考察
東京のトイレ清掃員の時給は時給1,200円台後半から1,900円程度が相場らしい。
平山の収支が気になったので、chatGPTに聞いてまとめてもらった。
想定される雇用形態
公共トイレ清掃
都内・委託業者
正社員ではなく契約社員 or フルタイム作業員の可能性が高い
東京の清掃員の相場(推定)
月収:18万〜22万円(手取りで15万〜18万円前後)
年収だと 250万〜300万円くらい
→ 手取り16〜17万円前後がいちばん「しっくりくる」ライン。
平山の生活費
① 家賃(浅草・風呂なしアパート)
築古・6畳・共同トイレ or 風呂なし
4.5万〜5.5万円
→ 仮に 5万円
② 平日の生活費
毎日使うもの
缶コーヒー:120円
サンドイッチ:250〜300円
銭湯:520円(東京都公衆浴場料金)
駅の居酒屋で軽く:1,000〜1,500円
平日1日合計
👉 約2,000〜2,400円
平日20日
👉 約4万〜4.8万円
③ 休日の生活費(月8日と仮定)
コインランドリー:400〜600円
小料理屋:2,000〜3,000円
休日1日
👉 約2,500〜3,500円
月
👉 約2万〜2.8万円
④ その他固定費
電気・ガス・水道:7,000〜10,000円
本(古本多め):2,000〜3,000円
雑費(洗剤・日用品):2,000円
通信費:0円(スマホなし)
交通費:会社負担 or 最小限
月の支出まとめ
項目金額家賃約50,000円平日生活費約45,000円休日生活費約25,000円光熱費・雑費約15,000円合計約135,000円
残るお金
手取り:160,000〜170,000円
支出:135,000円
👉 毎月2〜3万円ほど余る
この余白が
本を買える
フィルムを現像できる
何もせず「余裕」を保てる
数秒でここまで調べ上げてくれるAIすげえ。
収入が少なくても、削ぎ落とされた自分最上の暮らしができたら幸せである。
いや、貯金がすごいあるかもしれない。
運転手付きの車で来た妹がいる時点で、裕福な家庭で育ったことはほぼ確である。
実家が太いのである。
父とけんかして家を出たんだろうか。
実は離婚した妻と子どもがいるとか。
私立有名大学を卒業していそう。
などなど、映画を見た物同士で集まって、平山の過去について考察し合いっこしたら面白そうだ。
