3-3.Google DeepMindのAI総合覇権を読む
Google DeepMindが狙うAI総合覇権――Gemini、Veo、Imagen、Lyria、世界モデルまで
欧米生成AI 2026 完全版 第3回
シリーズ:欧米生成AI 2026 完全版
副題:LLM・画像生成・動画生成・AI Agentで見る“欧米AI企業TOP20+番外編”
第3回:Google DeepMind / Gemini
評価軸:AI部門の有名度 / 資本力 / 技術力 / 収益度 / AI部門価値
注記:本記事は2026年7月10日時点のGoogle DeepMind公式サイト、モデルカード、Google公式ブログ、Alphabet投資家向け資料、Reuters等の主要報道をもとにした分析記事です。モデル名、提供範囲、価格、資金調達、売上、IPO関連情報は、会社発表・報道・時点によって変動します。
2026年7月時点で、Gemini 3.5 Flashは公式ページ・モデルカードで公開され、computer useも統合されています。一方、Gemini 3.5 Proについては、Google I/O 2026およびGoogle Cloud公式ブログで「テスト中・翌月提供予定」と公式に予告されたものの、2026年7月10日時点で一般提供の公式モデルカード、APIモデルID、Cloudモデルライフサイクル一覧には確認できません。そのため本稿では「公式予告済みだが、一般提供前の限定テスト・延期中モデル」として慎重に扱います。Gemini Omni Flash、Nano Banana 2 Lite、Veo、Imagen、Lyriaなどの生成メディア系モデルは、公式モデルカードと公式ブログを基準に整理します。
為替は1ドル=160円で概算換算しています。
Google DeepMindを読むうえで、いま最も重要なのは「Gemini 3.5 Proが出るかどうか」だけではありません。
むしろ本質は、Googleが検索、YouTube、Android、Workspace、Cloud、TPU、世界モデル、ロボティクスを一気にAI化できる唯一の企業であることです。
ただし、その強さの裏側で、Gemini 3.5 Proの正式提供遅れ、人材流出、検索広告依存という課題も見えてきました。
この記事では、Google DeepMindを「Gemini単体」ではなく、AI総合覇権を狙う巨大プラットフォームとして読み解きます。
この記事でわかること
なぜ第3回でGoogle DeepMind / Geminiを扱うのか
DeepMind(2010)とGoogle Brain(2011)はいつ、どう統合されたのか
Transformerを生んだ8人の著者は、なぜ全員Googleを去ったのか
BardからGemini 3.5までのモデル系譜と、配布網へ流し込む速度
混同しやすいGoogleのAI組織(DeepMind/Google Research/Gemini/AI Studio)の整理
Gemini for Government / Education / Enterprise など、Geminiの業界特化シリーズ
Workspace連携はメインビジネスか――収益構造から見た検索広告依存
Googleは、なぜOpenAIより巨大なAI配布網を持つのか
Gemini、Gemini Omni、Veo、Imagen、Lyria、Genie、Gemini Roboticsはどうつながるのか
Google DeepMindは、LLM企業なのか、世界モデル企業なのか
Gemini 3.5 Flashと、延期されたGemini 3.5 Proは今どういう状況か
2026年6月の主要研究者の流出と市場反応は、Googleに何を突きつけたのか
Google Search、YouTube、Android、Google Cloud、TPUがAI戦略にどう効くのか
AlphabetのAI投資、Google Cloud成長、AIインフラをどう読むべきか
OpenAI、Anthropic、Meta、Microsoft、Mistral、中国勢との違い
日本企業がGoogle DeepMindから何を学ぶべきか
本文に入る前に、ポイントを一つだけ先に言います。
Google DeepMindは、単なるGeminiの会社ではありません。
Geminiは頭脳です。
Veoは動画です。
Imagenは画像です。
Lyriaは音楽です。
Genieは世界モデルです。
Gemini Roboticsはロボットです。
そしてGoogleには、検索、YouTube、Android、Chrome、Gmail、Workspace、Google Cloud、TPUがあります。
つまりGoogle DeepMindの強さは、AIモデル単体ではなく、世界最大級の配布網とAI研究を一体化できることです。
目次
はじめに――なぜ第3回はGoogle DeepMind / Geminiなのか
まず結論――Google DeepMindは「検索・クラウド・生成AI・世界モデル」を統合するAI総合覇権企業である
第1章 5軸評価で見るGoogle DeepMindの生成AI総合力
第2章 Google DeepMindとは何か――研究所からGoogle全体のAI中枢へ
第3章 創業史――DeepMind、Google Brain、そして統合(2010→2023)
第4章 人材の系譜――Transformerの8人、離脱と流出
第5章 モデル系譜――BardからGemini 3.5までの全バージョン
第6章 Gemini――GoogleのAI頭脳
第7章 Gemini Omni――動画編集とマルチモーダル生成の統合
第8章 Veo・Imagen・Lyria――動画・画像・音楽の生成AIポートフォリオ
第9章 Genieと世界モデル――生成AIはシミュレーションへ向かう
第10章 Gemini Robotics――生成AIとフィジカルAIの接続点
第11章 Google Search、YouTube、Android、Workspace、Cloudとの統合
第12章 API・MCP・Agent・CLI・Skillsで見るGoogle DeepMind
第13章 資本力――Alphabet、Google Cloud、TPU、AIインフラ
第14章 競合比較――OpenAI、Anthropic、Meta、Microsoft、Mistral、中国勢との違い
第15章 弱点とリスク――検索広告依存、規制、製品複雑化、ブランド分散
第16章 日本企業がGoogle DeepMindから学ぶべきこと
結論――Google DeepMindはAI総合覇権を取れるか
次回予告――Meta AI / Llamaを読む
はじめに――なぜ第3回はGoogle DeepMind / Geminiなのか
第1回はOpenAI。
第2回はAnthropic。
第3回はGoogle DeepMindです。
この順番は自然です。
OpenAIは生成AIの大衆化を作った。
Anthropicは企業AI・安全性・コーディングAgentで伸びた。
Google DeepMindは、研究力、資本力、配布網、クラウド、検索、Android、YouTubeを持つ巨大プレイヤーです。
Googleは、AIで遅れた会社ではありません。
むしろ、Transformer、AlphaGo、AlphaFold、TPU、DeepMind、Google Brain、検索AI、広告AI、YouTube推薦、Android、Cloudなど、AIの歴史そのものに深く関わってきました。
ただしChatGPTの登場によって、Googleは一時的に「AI大衆化の入口」をOpenAIに奪われました。
その巻き返しが、Geminiです。
まず結論――Google DeepMindは「検索・クラウド・生成AI・世界モデル」を統合するAI総合覇権企業である
Google DeepMindを一言で表すなら、こうなります。
Google DeepMindは、Geminiを中心に、動画・画像・音楽・世界モデル・ロボット・検索・クラウドを統合し、Google全体をAI化する中枢である。
Google DeepMindの強みは三つあります。
第一に、研究力です。
Gemini、Veo、Imagen、Lyria、Genie、Gemini Robotics、AlphaFold、AlphaEvolve、WeatherNextなど、基盤モデルから科学AI、世界モデル、ロボットまで広い。
第二に、配布網です。
Google Search、Android、Chrome、YouTube、Gmail、Google Workspace、Google Cloud、Pixel、Google AI Studio。AIを届ける場所が多すぎます。
第三に、インフラです。
GoogleはTPUを持ち、Cloudを持ち、自社データセンターを持ち、検索と広告で巨大なキャッシュフローを持ちます。
これは、AIの長期戦で非常に大きい。
第1章 5軸評価で見るGoogle DeepMindの生成AI総合力
【AI部門の有名度】
Google DeepMind評価:世界トップ級
点数:9.7 / 10
一言評価:GeminiはChatGPTに次ぐ大衆AIブランドへ成長
【資本力】
Google DeepMind評価:Alphabetの資本、Cloud、TPU、検索広告収益が圧倒的
点数:10.0 / 10
一言評価:AI投資体力は世界最大級
【技術力】
Google DeepMind評価:Gemini、Veo、Imagen、Lyria、Genie、Gemini Robotics、AlphaFold
点数:9.9 / 10
一言評価:マルチモーダル・科学AI・世界モデルで最強クラス
【収益度】
Google DeepMind評価:Google Search、Cloud、Workspace、広告、サブスクへAIを接続
点数:9.4 / 10
一言評価:AIを既存事業へ流し込めるのが強い
【AI部門価値】
Google DeepMind評価:生成AI、検索、クラウド、科学、ロボットを横断
点数:10.0 / 10
一言評価:AI総合覇権の最有力候補の一つ
【総合評価】
Google DeepMind評価:OpenAIとは違う「巨大プラットフォーム型AI」
点数:49.0 / 50
一言評価:モデルだけでなく配布網とインフラが桁違い
Google DeepMindの評価で重要なのは、AI単体ではなく、Google全体の事業と結びついている点です。
OpenAIはAIからプラットフォームへ向かう。
Googleは既にプラットフォームを持ち、そこへAIを流し込む。
この違いは大きい。
第2章 Google DeepMindとは何か――研究所からGoogle全体のAI中枢へ
Google DeepMindは、DeepMindとGoogleのAI研究体制が統合されて生まれたAI中枢です。
かつてDeepMindは、AlphaGo、AlphaFold、強化学習、科学AIで知られました。
Google Brainは、検索、翻訳、画像認識、Transformer、クラウドAIなどで巨大な研究資産を持っていました。
その流れが統合され、Geminiを中心としたGoogle全体のAI戦略へつながっています。
Google DeepMindの特徴は、基礎研究と製品化の距離が近くなっていることです。
研究で終わらせない。
Gemini appへ入れる。
Google AI Studioへ入れる。
Google Cloudへ入れる。
Workspaceへ入れる。
Searchへ入れる。
Androidへ入れる。
この「研究から配布までの距離」が、Googleの強みです。
2-1 混同しやすいGoogleのAI組織を整理する
GoogleのAIは、名前が多くて混乱しがちです。
「組織」「モデル」「開発ツール」を分けて整理します。
【研究組織は2つある】
まず研究組織は2つです。
一つがGoogle DeepMind。2023年にDeepMindとGoogle Brain(Google Research内のチーム)を統合して作られた、GeminiなどのAI R&D部門です。
もう一つがGoogle Research。より基盤的で広範な研究を担う、DeepMindとは別の組織です。
つまり「DeepMindと、もう一つ別組織」=Google Research、という関係です。
【Geminiは組織ではなく「モデル」】
Geminiは、組織ではありません。
Googleの生成AIモデル(頭脳)そのものです。
【AI Studioは組織ではなく「開発ツール」】
Google AI Studioも、組織ではありません。
開発者が素早く試作するための、無料の実験環境(サンドボックス)です。
しかも2025年1月、AI StudioとGeminiのAPI開発チームは、Google DeepMindの傘下へ移りました。
いまやAI Studioは、DeepMindの一部です。
【本番用は「Gemini Enterprise Agent Platform」へ】
企業・本番向けには、長らくVertex AIがありました。
しかし2026年のCloud Next以降、Vertex AIは「Gemini Enterprise Agent Platform(formerly Vertex AI)」として、エージェント開発・運用・ガバナンスを中心に再編・統合されました。
【整理すると】
研究組織=DeepMind + Google Research。
モデル=Gemini。
開発ツール=AI Studio(試作)/Gemini Enterprise Agent Platform(本番・旧Vertex AI系の再編)/Geminiアプリ(消費者)。
この階層で捉えると、Googleの複雑なAI製品群が一気に見通せます。
第3章 創業史――DeepMind、Google Brain、そして統合(2010→2023)
Google DeepMindは、二つの伝説的なAI組織が統合して生まれました。
3-1 DeepMind――ロンドンの研究所(2010)
DeepMindは2010年11月、ロンドンで設立されました。
創業者は、Demis Hassabis、Shane Legg、Mustafa Suleymanの3人です。
Hassabisは、チェスの神童であり、神経科学者でもあります。「知能を解き、それを使ってあらゆる問題を解く」という壮大なミッションを掲げました。
2014年、Googleがこの研究所を約4〜5億ドル(約640〜800億円)で買収します。
DeepMindは、AlphaGo(2016年、囲碁のトップ棋士に勝利)、AlphaZero、AlphaFold(2020〜2021年、タンパク質構造予測)などで、AIの歴史に名を刻みました。
3-2 Google Brain――もう一つの源流(2011)
Google Brainは、DeepMindの翌年、2011年にGoogle社内で生まれました。
中心はJeff Dean、Greg Corrado、そしてStanford大学のAndrew Ng。
TensorFlow(AI開発フレームワーク)やGoogle翻訳の改良など、巨大な研究資産を築きました。
そして2017年、Google Brainから、生成AI時代を決定づける論文が出ます。
「Attention Is All You Need」――Transformerの登場です。
今日のGPTもClaudeもGeminiも、すべてこのTransformerの子孫です。
3-3 ChatGPTショックと統合(2023)
2022年末のChatGPT登場は、Googleに衝撃を与えました。
2023年2月に投入した対話AI「Bard」は不評で、Alphabet株を急落させました。
危機感の中、2023年4月20日、GoogleはDeepMindとGoogle Brainを統合し、「Google DeepMind」を発足させます。
CEOにはDemis Hassabis。Google Brainを率いたJeff Deanは、Googleのチーフサイエンティストへ。
創業者のSergey Brinも現場に復帰し、Geminiの開発に加わったと報じられました。
研究の統合は、対抗策であると同時に、緊急対応でもありました。
3-4 ノーベル賞(2024)
2024年、Demis HassabisとJohn Jumperは、AlphaFold2の業績でノーベル化学賞を受賞します。
研究所としてのDeepMindの実力を、世界が公式に認めた瞬間でした。
3-5 科学AIとインフラ――Googleだけが持つ二枚の武器
Google DeepMindは、生成AI企業であると同時に、科学AI企業でもあります。
AlphaFold2はタンパク質構造予測を一変させ、その技術は創薬企業Isomorphic Labs(Alphabet傘下)へ展開されています。
数学のAlphaProof/AlphaGeometry、材料科学のGNoME、気象のWeatherNextなど、基礎科学へのAI応用でも先行しています。
OpenAIやAnthropicが「AIから科学へ」向かうのに対し、Googleは「もともと科学AIの本丸」だという違いがあります。
もう一枚の武器がインフラです。
Googleは自社設計のAIチップTPUを持ち、最新世代(Ironwoodなど)を訓練・推論に使えます。
NVIDIA GPUへの依存を減らし、自社モデル・自社Cloud・自社サービスに最適化できるのは、Googleだけの強みです。
Pichaiは2026年のGoogle I/Oで、同年のAI関連投資が1,800〜1,900億ドル(約29〜30兆円)規模に達する見込みだと述べました。検索・広告・YouTube・Cloudの巨大なキャッシュフローが、これを支えています。
科学AIとインフラ。
この二枚の武器は、OpenAIにもAnthropicにもない、Google DeepMindの構造的な優位です。
第4章 人材の系譜――Transformerの8人、離脱と流出
Googleは、生成AIの学術的な源流を握っています。
しかし同時に、その人材を最も多く「流出」させた企業でもあります。
4-1 Transformer論文の8著者は、ほぼ全員がGoogleを去った
2017年の「Attention Is All You Need」には8人の著者がいました。
2023年までに、その大半がGoogleを離れ、起業や移籍をしています。
Noam Shazeer――Character.AIを共同創業→Google復帰→2026年OpenAIへ。
Ashish Vaswani、Niki Parmar――AdeptからEssential AIへ。
Aidan Gomez――Cohereを共同創業。
Llion Jones――Sakana AIを共同創業(日本拠点)。
Lukasz Kaiser――OpenAIへ。
Jakob Uszkoreit――Inceptiveを創業。
Illia Polosukhin――NEARを創業。
Transformerを生んだ8人が、そのまま業界に散り、各所で競合を作りました。
これは、Google Brain時代の「最大の人材流出」としてしばしば語られます。
4-2 Suleymanの離脱とMicrosoftへの流出
DeepMind共同創業者のMustafa Suleymanも、Googleを離れています。
2019年にDeepMindを離れ、Inflection AIを共同創業(2022年)。
そして2024年には、Microsoft AIのCEOに就任しました。
2024〜2025年には、DeepMindから約2ダースの社員がMicrosoft AIへ移るなど、Microsoftへの人材流出も相次ぎました。
4-3 2026年の流出――Meta、OpenAI、Anthropicへ
2026年に入っても、人材流出は続きます。
2026年6月、Google Brainの推論研究チームを創設したDenny ZhouがMetaへ。
同月、Transformer論文の共同著者Noam ShazeerがOpenAIへ、ノーベル化学賞受賞者でAlphaFoldのJohn JumperがAnthropicへ移りました。
流出はこの2名にとどまりません。
報道によれば、GeminiやAlphaFoldに関わったJonas AdlerとAlexander Pritzelも、数日のうちにAnthropicへ移籍しました。
強化学習の第一人者で、DeepMind最初期メンバーのDavid Silverは、独立して自身のスタートアップ(Ineffable Intelligence)を立ち上げています。
数か月単位で見ると、Meta、OpenAI、Anthropicへ計6名規模の著名研究者が抜けた計算になります。
背景には、コーディング路線を優先するか、世界モデル路線を追うかという内部の路線対立があるとも報じられています。
DeepMind内でコーディング特化チーム(AI Coding Strike Team)が拡大し、計算資源や研究の重心が商用コーディングへ寄った結果、世界モデルや事前学習など長期研究に軸足を置く研究者ほど居場所を失った、という見立てです(いずれも報道ベース)。
生成AIの源流はGoogleにある。
しかしその果実は、業界全体に散っている。
これがGoogle DeepMindの人材史の逆説です。
第5章 モデル系譜――BardからGemini 3.5までの全バージョン
GoogleのAIモデルの系譜を時系列で整理します。
【Bard(2023年2〜3月)】
ChatGPTへの初動。対話AIの入口。
【Gemini 1.0 Ultra / Pro / Nano(2023年12月)】
GPT-4への本格対抗。UltraはMMLU(57分野の知識テスト)で90%を記録し、人間の専門家を初めて上回りました。
【Gemini 1.5 Pro(2024年2月)/1.5 Flash(2024年5月)】
MoE(混合エキスパート)採用。100万トークンの長文コンテキスト。
【Gemma(2024年2月)】
小型のオープンモデル群。
【Gemini 2.0 Flash(2024年12月)】
「agentic時代」を掲げ、リアルタイムのマルチモーダルLive APIを導入。
【Gemini 2.5 Pro(2025年3月)】
思考(推論)を組み込み、LMArenaで首位に。6月に一般提供。Flash-Lite、Deep Thinkも。
【Gemini Robotics(2025年3月)】
Gemini 2.0系をベースにしたVLA(視覚・言語・行動)モデル。
【Gemini 3 Pro / 3 Deep Think(2025年11月18日)】
第3世代。
【Gemini 3 Flash(2025年12月17日)】
2.5 Flashを置き換え。
【Gemini 3.1 Pro(2026年2月19日)/Nano Banana 2(2月26日)/3.1 Flash-Lite(3月3日)】
画像モデルNano Banana系もこの流れです。
【Gemma 4(2026年4月2日)】
高度な推論・agentic向けのオープンモデル。
【Gemini 3.5 Flash(2026年5月19日)】
Google I/Oで発表。3.5系で最初に一般公開されたモデル。
【Gemini 3.5 Pro(2026年5月公式予告→6月予定→7月へ延期、7月10日時点で未一般提供)】
Google I/O 2026で公式に予告された上位モデル。Google公式ブログでは「社内利用中」「翌月公開予定」、Google Cloud公式ブログでは「現在テスト中・翌月提供予定」と説明されました。しかし2026年7月10日時点では、Google DeepMindのモデルカード一覧、Gemini APIのモデル一覧、Gemini Enterprise Agent Platformのモデルライフサイクル一覧に、一般提供モデルとしてのgemini-3.5-proは確認できません。報道では、早期テスターの実利用フィードバック、長時間Agentタスク、トークン効率の調整のため、提供が6月から7月へずれたとされています。200万トークン、Deep Think、7月17日目標、高価格帯といった情報は観測・リーク段階のため、公式未確認として扱います。
【Gemini Omni Flash(2026年5月19日発表、6月30日API提供)】
「any inputからanythingを作る」マルチモーダル生成の第一弾。
5-1 系譜が示すもの――配布網へ流し込む速度
Geminiの系譜で重要なのは、モデルが「Googleの製品群へ流し込まれる速度」です。
Bardの失敗から2年で、Geminiは検索、Android、Workspace、Cloudの中核に入りました。
さらにGemma(オープン)、Imagen(画像)、Veo(動画)、Lyria(音楽)、Genie(世界モデル)、Gemini Robotics(ロボット)まで、モデル群は横に広がっています。
一つの頭脳を、世界最大級の配布網へ同時に届ける。
これがGoogleのモデル系譜の本質です。
第6章 Gemini――GoogleのAI頭脳
Geminiは、GoogleのAIモデル群の中心です。
2026年7月時点で、Gemini 3.5ファミリーは公式に「frontier intelligence with action(行動を伴うフロンティア知能)」と位置づけられています。
このファミリーは2026年5月のGoogle I/Oで発表され、まず高速・低コストのGemini 3.5 Flashが一般提供(GA)されました。
Gemini 3.5 Flashは、Terminal-Bench 2.1などのコーディング・agentic評価でGemini 3.1 Proを上回り、出力速度は他のフロンティアモデルの約4倍とされています。
一方、上位のGemini 3.5 Proは同じくI/Oで発表されましたが、一般提供が6月から7月へ延期され、2026年7月上旬時点でも限定的な企業向けプレビュー(Vertex AI)段階です。
Gemini 3.5 Proについては、報道・観測ベースで200万トークン級の長文コンテキストやDeep Think推論モードが語られています。
ただし、2026年7月10日時点で、Google公式のモデルカード・APIモデルID・価格表は確認できません。報道では、一般提供は7月中旬、API価格は入力100万トークンあたり数ドル〜十数ドル、出力十数ドル〜数十ドル規模と観測に幅があります。画像のNano Banana Pro、高速版のGemini 4 Flash、さらにGemini 3.6の開発説もありますが、いずれも公式未確認として扱います。
もう一つ注目すべきは、提供制約の差です。2026年、OpenAIのGPT-5.6は政府審査で限定提供から始まり、AnthropicのFable 5は一時停止を経験しました。GPT-5.6は商務省の追加審査を経て、2026年7月9日にChatGPT・Codex・APIで一般公開されています。一方Geminiは、サイバー能力が政府の非公式な審査基準を下回るとされ、そもそも審査の対象になっていません。皮肉にも「慎重すぎる(=サイバー能力で最先端を攻めない)」ことが、制限を受けずに配れる状態を生んでいます。ただし3.5 Pro提供後に能力が測り直されれば、この位置づけは変わり得ます。
このほか、Gemini 3.1 Pro、Gemini 3.1 Flash-Liteなども提供されています。
つまりGeminiは、単なるLLMではなく、Agentやコーディング、長時間タスクへ向かうモデルです。
6-1 Geminiの特徴
Geminiの特徴は、マルチモーダルです。
テキスト。
画像。
音声。
動画。
コード。
UI。
長文。
これらを横断する方向です。
Googleは、検索、YouTube、Google Photos、Android、Gmail、Docs、Driveなど、膨大なマルチモーダル接点を持っています。
Geminiは、これらのGoogle製品をAI化する中核です。
6-2 GeminiはAgentへ進む
Google DeepMindは、Gemini 3.5を「agentic workflows」に強いモデルとして打ち出しています。
公式ページでは、agentic coding、advanced multimodal understanding、long horizon tasks、multi-step problem-solvingが能力として示されています。
つまりGeminiも、ChatGPTやClaudeと同じく「答えるAI」から「実行するAI」へ向かっています。
6-3 Gemini 3.5の機能・ベンチマーク詳細
Gemini 3.5の「機能」を具体的に見ます。
まず一般提供されたGemini 3.5 Flashです。
Googleの発表では、コーディングのTerminal-Bench 2.1で76.2%、GDPval-AAで1656 Elo、MCP Atlasで83.6%、マルチモーダル理解のCharXiv Reasoningで84.2%。
前世代の上位モデルGemini 3.1 Proを、コーディングやagentic評価で上回りながら、出力速度は他の先端モデルの約4倍とされています。
提供面も広い。
Google Antigravity、Gemini API(AI Studio/Android Studio)、Gemini Enterprise、Geminiアプリ、そして検索のAI Modeまで、同時に届きます。
上位のGemini 3.5 Proは、200万トークンのコンテキスト(Opus 4.8の約2倍)とDeep Think推論モードが特徴です。
ただし前述のとおり、一般提供は6月から7月へ延期され、7月上旬時点でも限定プレビュー段階です。
つまりGoogleは、2026年の3.5世代で「まず高速・低コストのFlashを全公開し、最上位のProは慎重に出す」という、従来と逆の順番を選びました。
この判断の是非は、Proの正式提供後に評価されることになります。
6-4 Gemini for Science――科学AIでのGoogleの一手
2026年5月のGoogle I/Oで、GoogleはGemini for Scienceを発表しました。
科学研究を加速するためのツール群です。
【Science Skills】
中核は「Science Skills」です。
UniProt、AlphaFold Database、AlphaGenome、InterProなど、30以上の生命科学データベースを統合します。
これをAntigravityのようなAgent基盤で使うと、構造バイオインフォマティクスやゲノム解析が、数時間から数分へ短縮されるとしています。
【三つの実験ツール】
Google Labsでは、三つの試作ツールも公開されました。
仮説生成(Co-Scientistベース)、計算的発見(AlphaEvolve+ERA)、文献インサイト(NotebookLM)。
AlphaFoldやAlphaGenomeという「科学AIの本丸」を持つGoogleならではの布陣です。
【三者三様の科学AI】
ここでも、三者三様の構図が現れます。
Googleは自社の基盤モデル群(Gemini for Science)、Anthropicはワークフロー基盤(Claude Science、第2回で詳述)、OpenAIは特化モデル(GPT-Rosalind、第1回で言及)。
競合はGoogleのモデルを「外部ツール」として呼ぶしかないのに対し、Googleは基盤モデルそのものを握っています。
これが、科学AIにおけるGoogleの構造的な強みです。
6-5 Gemini 3.5 Flashのcomputer use――Googleも「操作するAI」へ進む
2026年6月、Google DeepMindはGemini 3.5 Flashにcomputer useを統合しました。
これは、Geminiが単に回答するモデルではなく、Webやアプリ、ファイル、ツールをまたいで操作するAgentへ進むことを意味します。
OpenAIのChatGPT Agent、AnthropicのClaude Computer Use / Claude Codeと同じく、Googleも「会話するAI」から「実行するAI」へ移っています。
ただしGoogleの強みは、Search、Maps、Gmail、Docs、Drive、Chrome、Androidという巨大な操作対象を自社で持っていることです。
つまり、Geminiのcomputer useは、外部ツール操作だけでなく、Googleエコシステム全体をAIでつなぐ入口になります。
性能面でも、Gemini 3.5 Flashのcomputer use(2026年6月24日統合)はOSWorld-Verifiedで78.4を記録し、GPT-5.5の約3分の1のコストで動くとされています(発表ベース)。
6-6 Geminiの業界特化シリーズ――Government、Education、Enterprise
Googleも、汎用のGeminiの上に「Gemini for X」を積み上げています。
【Gemini for Government】
2025年のGSA OneGov協定で、連邦政府向けにGemini for Governmentを提供。FedRAMP High準拠で、1機関あたり0.47ドルという破格の価格です。
象徴的なのが、米国防総省(Department of War)のGenAI.milに、初の企業向けAIとして採用され、300万人の軍民職員へ展開された点です。
――これは、Anthropicが「サプライチェーンリスク」に指定され契約から外れた、まさにその国防総省です(第2回・Anthropicで詳述)。
FDAや17の国立研究所も導入しています。
【Gemini for Education】
教育では、最上位のGemini 3 Proを無償提供し、Google Classroom連携やSAT対策を用意。日本を含む一部の国では、学生向けの無料アップグレードも提供しています。
【その他】
研究向けのGemini for Science(6-4で詳述)、企業向けのGemini Enterprise、そしてGoogle Cloudの業界別ソリューション(金融、医療、製造、メディア、物流など)。
医療向けのオープンモデルMedGemmaもあります。
【狙い】
OpenAIやAnthropicが「AIから配布網を作る」のに対し、Googleはすでに政府・教育・企業への巨大な販路を持ち、そこへGeminiを流し込めます。
「Gemini for X」は、その販路を業界ごとに束ねる仕組みです。
6-7 Gemini 3.5 Proの現在地――公式予告済み、しかし7月10日時点では「未一般提供」
第3回で最も読者の関心が高いのが、上位モデルGemini 3.5 Proです。
結論から言うと、Gemini 3.5 Proは「根拠のない噂」ではありません。
Google I/O 2026で、GoogleはGemini 3.5シリーズを公式に発表しました。
ただし、同日に一般提供されたのはGemini 3.5 Flashです。
Gemini 3.5 Proは、公式には「社内利用中」「翌月提供予定」「現在テスト中」と説明されたモデルであり、2026年7月10日時点では、一般提供の公式モデルカード、Gemini APIのモデルID、Google Cloudのモデルライフサイクル一覧には確認できません。
つまり、現時点での正確な整理はこうです。
Gemini 3.5 Proは、Googleが公式に予告済みの次期フラッグシップ推論モデル。ただし、まだ一般提供されたモデルではなく、限定テスト・延期中のモデルである。
6-7-1 公式に確認できること
公式に確認できる事実は、主に三つです。
第一に、Gemini 3.5シリーズは2026年5月19日のGoogle I/Oで発表されました。
Googleはこのシリーズを「frontier intelligence with action(行動を伴うフロンティア知能)」と位置づけています。
第二に、Gemini 3.5 Flashは同日から一般提供されました。
Geminiアプリ、Google SearchのAI Mode、Google AI Studio、Android Studio、Google Antigravity、Gemini Enterprise Agent Platform、Gemini Enterpriseへ広く展開されています。
第三に、Gemini 3.5 Proは発表時点で一般公開されず、Pichaiは「社内で使っている」「来月に向けて進めている」と説明しました。Google Cloud公式ブログでも、3.5 Proは「testing中で、来月提供予定」とされています。
ここまでは公式情報です。
したがって、記事では「Gemini 3.5 Proが出る噂」とだけ書くより、**「Googleが公式に予告したが、正式公開が遅れているフラッグシップモデル」**と書く方が正確です。
6-7-2 7月10日時点で、まだ「出た」とは言えない理由
では、なぜ「出た」と書かないのか。
理由は、公開確認の基準がまだ揃っていないからです。
Google DeepMindのモデルカード一覧には、Gemini 3.5 Flash、Gemini Omni Flash、Gemini 3.5 Audio、Gemini 3.1 Proなどは掲載されています。
しかし、2026年7月10日時点で、Gemini 3.5 Proのモデルカードは確認できません。
Gemini APIのモデル一覧でも、安定版の例として出ているのはgemini-3.5-flashであり、公開モデルとしてgemini-3.5-proは確認できません。
Google CloudのGemini Enterprise Agent Platformのモデルライフサイクル一覧にも、gemini-3.5-flashは掲載されていますが、gemini-3.5-proはまだ掲載されていません。
つまり、公式発表・公式モデルカード・APIモデルID・Cloud提供一覧の四点セットで見ると、Gemini 3.5 Proはまだ一般提供モデルではありません。
ここは記事で誤解を避けるべき点です。
6-7-3 なぜ延期されたのか――Business Insider報道から読む
Business Insiderは2026年6月24日、Gemini 3.5 Proのリリースが当初の6月予定から7月にずれたと報じました。
報道によれば、Googleは早期テスターからの実利用フィードバックを集め、モデルを調整するために時間を取っています。
重要なのは、調整対象です。
第一に、長時間Agentタスクです。
Gemini 3.5 Proは、単なる回答精度ではなく、長い手順を計画し、ツールを使い、複数ステップで作業するモデルとして期待されています。
第二に、コーディングです。
2026年の企業AI競争では、コーディングAgentが最初の大きな収益市場になっています。OpenAIのCodex、AnthropicのClaude Code、GoogleのAntigravityがここでぶつかります。
第三に、トークン効率です。
Business Insiderは、Gemini 3.5 Flashに対して「トークン消費が速い」という批判があり、そのフィードバックもProに反映されていると報じています。
これは非常に重要です。
2026年のAI競争は、単なるベンチマーク競争から、1タスクあたりの実コスト競争へ移っています。
どれだけ賢いか。
どれだけ速いか。
どれだけ安く動くか。
どれだけ少ないトークンで仕事を終えられるか。
GoogleがProの公開を遅らせているなら、その理由は「点数」だけでなく「実務コスト」だと読むべきです。
さらに、より踏み込んだ報道もあります。
HackerNoonやBigGo等によれば、DeepMindは既存のGemini 2.5 Pro基盤を土台にするのをやめ、ネイティブなGemini 3基盤の上で、重い事前学習をやり直したとされています(いずれも報道・リークベース)。
理由は戦略的です。
先に出したGemini 3.5 Flashが、旧世代の上位Gemini 3.1 Proを上回り、しかも低コストで動いてしまいました(Terminal-Bench 2.1で76.2%)。
すると、もし旧基盤のままProを出しても、安いFlashとの性能差が小さく、高い上位価格を正当化できない――という問題が生まれます。
リークされた内部評価では、旧基盤のProは、複雑な再帰的ツール呼び出しや、多層レイアウト・多段の数学推論で構造が崩れやすかったとも報じられています。
そこでGoogleは、「見劣りするProを出す」より「基盤ごと作り直して世代交代を示す」方を選んだ、という読み筋です。
これは単なる遅延ではなく、「安いFlashと差別化できる上位モデル」を作るための、計算された後退とも言えます。
6-7-4 噂として出ている性能・仕様
ここから先は、公式未確認の噂・観測です。
本文に入れる場合は、必ず「未確定」と明記する必要があります。
よく出ている情報は、次のようなものです。
一つ目は、200万トークンの長文コンテキストです。
もし実現すれば、巨大なコードベース、契約書群、研究データ、企業ナレッジを一度に読む用途で強みになります。
ただし、長文コンテキストは「入る」ことと「正確に使える」ことが別です。
200万トークンが本当でも、重要なのは、文脈の奥にある情報をどこまで正確に拾えるか、長い作業で破綻しないかです。
二つ目は、Deep Think推論モードです。
Gemini 2.5以降、GoogleはDeep Think的な推論を強調してきました。
Gemini 3.5 Proでも、数学、コード、設計、研究、長時間Agentに向けた深い推論モードが期待されています。
三つ目は、数学・SVG・フロントエンド生成の強化です。
これは開発者やデザイナーにとって重要です。
GoogleはSearch、Workspace、Android、AI Studio、Antigravityを持つため、単にコードを書くより、「UIを作る」「図を作る」「インタラクティブな説明を生成する」方向と相性があります。
四つ目は、7月中旬、特に7月17日前後という観測です。
ただしこれは公式ではありません。
6月予定が7月へずれた時点で、日付については慎重に扱うべきです。
五つ目は、高価格帯です。
最もよく語られる具体的な数字は、入力100万トークンあたり約15ドル、出力約60ドルという水準です。
これは、すでに一般提供されているGemini 3.5 Flash(入力約1.5ドル/出力約9ドル)の、およそ10倍にあたります。
ただしこれも公式価格表ではなく、報道・観測ベースです。Gemini 3.1 Proの$2/$12に対し5割高との説から、Flashの約10倍との説まで、幅があります。
もしこれが本当なら、Gemini 3.5 Proは日常大量利用モデルではなく、難しい作業に絞って使う「高性能・高単価モデル」になります。
6-7-5 Gemini 3.5 Proが出たら、どこを見るべきか
Gemini 3.5 Proが本当に出たかを判断するには、見るべき場所があります。
第一に、Google公式ブログです。
Googleの主要モデルは、blog.googleまたはGoogle DeepMind公式ブログで、ベンチマーク表と一緒に発表されることが多いです。
第二に、Google DeepMindのモデルカードです。
ここにGemini 3.5 Proのカードが出れば、仕様、制限、安全性、想定用途が見えます。
第三に、Gemini APIのモデル一覧です。
gemini-3.5-proというモデルID、入力・出力トークン上限、対応ツール、価格が出れば、開発者が使える状態に近づきます。
第四に、Gemini Enterprise Agent Platformのモデルライフサイクル一覧です。
企業向けで使えるモデルとして掲載されれば、Google Cloud経由での本番導入が現実になります。
この四つが揃って初めて、「Gemini 3.5 Proが出た」と記事で強く書けます。
6-7-6 競争上の意味――Googleの光と影
Gemini 3.5 Proの遅れは、Googleの光と影を同時に示しています。
光は、配布網です。
Googleは、Geminiを検索、Workspace、Android、Chrome、YouTube、Cloud、AI Studio、Antigravityへ一気に流し込めます。
出た瞬間に使われる場所が多い。
これはOpenAIやAnthropicにもない強みです。
影は、フロンティアモデルの実行速度です。
2026年7月上旬、OpenAIはGPT-5.6、AnthropicはFable 5 / Sonnet 5、xAIはGrok 4.5、MetaはMuse Spark 1.1を打ち出しています。
このタイミングで、Googleの最上位Proが一般公開されていないことは、投資家や開発者に「Googleはまた出荷で遅れているのではないか」という印象を与えます。
ただし、GoogleがFlashを先に広く出した判断は合理的でもあります。
企業は最上位モデルだけを使うわけではありません。
日常業務の大半は、速く、安く、安定して動くモデルで十分です。
Gemini 3.5 Flashが先に普及し、その上にProが「難しい仕事用」として乗るなら、Googleのモデル構成はむしろ現実的です。
したがって、Gemini 3.5 Proは、単なる新モデルではありません。
Googleが、フロンティア性能、Agent実行、コスト効率、配布網をどう両立させるかを示す試金石です。
第7章 Gemini Omni――動画編集とマルチモーダル生成の統合
Gemini Omniは、Googleのマルチモーダル生成戦略を象徴するモデルです。
公式ページでは、Gemini Omniは「any inputからanythingを作る」方向で紹介され、特に動画を起点にした編集と生成が強調されています。
自然な会話で動画を編集する。
前の編集を保持しながら、次の編集を重ねる。
物理、歴史、科学、文化文脈を理解して、意味ある映像へ変える。
画像、テキスト、動画、音声などの参照を一つの出力へまとめる。
これは、従来の動画生成とは少し違います。
単にプロンプトから動画を作るだけではなく、映像制作のワークフローそのものへ入ろうとしています。
このファミリー最初のモデルがGemini Omni Flashで、2026年5月のGoogle I/Oで発表され、2026年6月30日にAPI経由でも提供が始まりました。
Gemini appでは、従来のVeo 3.1に代わる標準の動画生成モデルとして位置づけられています。
生成・編集した動画には、電子透かしSynthIDとC2PAの来歴情報が付与され、AI生成物の透明性が確保されています。
7-1 Gemini Omni FlashとNano Banana 2 / Lite / Pro――生成メディアを開発者へ開く
2026年6月30日、Google DeepMindはGemini Omni FlashとNano Banana系の新しい画像モデル群を開発者向けに提供し始めました。
Google AI for Developersのモデル一覧では、Nano Banana 2、Nano Banana Lite、Nano Banana ProがStableとして掲載され、Gemini Omni FlashはPreviewとして掲載されています。Gemini Omni Flashは、テキスト、画像、音声、動画を入力として受け取り、動画生成や会話型の動画編集を行うモデルです。Nano Banana系は、高速・低コストのLite、量産向けのNano Banana 2、より高品質なProという形で、用途別に広がっています。
ここで重要なのは、Googleが生成AIを「Geminiアプリの中の機能」に閉じ込めず、開発者と企業が使えるAPIへ流し込んでいることです。
これは、Runway、Midjourney、Pika、Luma AIといった生成メディア企業との競争にもつながります。
ただし構図は単純な競争だけではありません。
Google Cloudは、これらのモデルをAdobe Firefly(アドビの生成AIスタジオ)やWPP(広告大手)にも供給すると発表しており、自社アプリと他社への供給を同時に進めています。
価格も攻めています。
Nano Banana 2 Liteは1画像あたり約0.034ドル・生成約4秒、Gemini Omni Flashは動画1秒あたり約0.10ドル。生成物にはSynthIDの電子透かしが付きます。
かつてNano Bananaが画像で起こした低価格化を、Googleは動画でも仕掛けています。
第8章 Veo・Imagen・Lyria――動画・画像・音楽の生成AIポートフォリオ
Google DeepMindは、Geminiだけではありません。
動画にVeo。
画像にImagen。
音楽にLyria。
この三つの専門モデルを持っています。
8-1 Veo――動画生成と映像制作
Veo 3.1は、Google DeepMindの動画生成モデルです。
公式ページでは、Veo 3.1は動画と音声を組み合わせ、映画制作者やストーリーテラーのための動画生成モデルとして紹介されています。
Veo 3では、音響効果、環境音、会話などをネイティブに生成できることが示されています。
これは映像制作で重要です。
動画だけでなく、音がある。
画質だけでなく、物理とプロンプト追従がある。
映像制作のAI化は、YouTube、広告、映画、ゲーム、教育、SNSに直結します。
8-2 Imagen――高品質画像生成
Imagenは、Google DeepMindの画像生成モデルです。
公式ページでは、フォトリアルな画像、細部、豊かな色、テクスチャ、多様なアートスタイル、文字表現の改善が示されています。
Googleにとって画像生成は、単なるクリエイティブ機能ではありません。
広告制作。
商品画像。
YouTubeサムネイル。
Google Workspace資料。
デザイン。
Google Photos。
検索結果の可視化。
これらへ広がる可能性があります。
なお2026年のGoogleは、Imagenに加えて、ネイティブ画像生成・編集モデルの「Nano Banana」系(Gemini 3.1 Flash Image / Gemini 3 Pro Image)も展開しています。会話で画像を編集する使い勝手が評価され、この技術思想はGemini Omniの動画編集にもつながっています。
8-3 Lyria――音楽生成
Lyria 3は、Google DeepMindの音楽生成モデルです。
公式ページでは、最大3分程度の高忠実度音楽生成、画像から音楽生成、ボーカルスタイルや音響の細かな指定、プロ品質の音声出力が示されています。
音楽生成は著作権リスクが大きい領域です。
しかしGoogleはYouTubeと音楽エコシステムを持っています。
そのため、Lyriaは単なる研究モデルではなく、将来の動画制作、広告制作、YouTubeクリエイター支援、音楽制作ツールと結びつく可能性があります。
第9章 Genieと世界モデル――生成AIはシミュレーションへ向かう
Google DeepMindの中で、非常に重要なのがGenieです。
Genie 3は、公式ページで「a new frontier for world models」とされています。
テキストから、探索できるフォトリアルな環境を生成する世界モデルです。
9-1 世界モデルとは何か
世界モデルとは、AIが物理世界や仮想世界の変化を予測するためのモデルです。
この行動をすると、世界はどう変わるのか。
物体はどう動くのか。
環境はどう反応するのか。
エージェントがどこへ進めるのか。
ゲーム、ロボット、自動運転、シミュレーション、教育、訓練、デジタルツインで重要になります。
Genieは、生成AIが「文章や画像を作る」段階から、「世界を作り、動かす」段階へ進む象徴です。
2026年のGoogle I/Oでは、GoogleはProject Genieを、約20年分のGoogleストリートビュー画像と接続すると発表しました。
これは重要です。
架空の世界を生成するだけでなく、現実の街並みに紐づいた探索可能な環境を作れる方向を示すからです。
ストリートビュー、地図、衛星画像といった現実世界のデータと世界モデルがつながると、ナビゲーション、自動運転、都市シミュレーション、ロボット訓練への応用が現実味を帯びます。
9-2 OpenAI Soraとの関係
OpenAIのSoraも、動画生成を通じて世界シミュレーションへ向かうモデルです。
GoogleのGenieは、より明確に「探索できる環境」「world model」を打ち出しています。
今後の生成AI競争は、LLMだけではありません。
世界を生成し、そこをAgentが動き、学習し、検証する方向へ進みます。
第10章 Gemini Robotics――生成AIとフィジカルAIの接続点
Google DeepMindは、生成AIだけでなく、ロボットにも進んでいます。
Gemini Roboticsは、ロボットが環境を理解し、推論し、道具を使い、人間とやり取りするためのモデル群です。
公式ページでは、Gemini Robotics-ER 1.6、Gemini Robotics 1.5などが紹介されています。
Gemini Robotics 1.5は、視覚情報と指示をモーターコマンドへ変換するVLAモデルとして位置づけられています。
これは、欧米フィジカルAIシリーズにもつながる重要テーマです。
生成AIの次は、現実世界で動くAIです。
Google DeepMindは、Gemini、Genie、Gemini Roboticsを通じて、生成AIとフィジカルAIを接続しようとしています。
第11章 Google Search、YouTube、Android、Workspace、Cloudとの統合
Googleの最大の強みは、配布網です。
Search。
YouTube。
Android。
Chrome。
Gmail。
Google Docs。
Google Drive。
Google Photos。
Google Cloud。
Google AI Studio。
Gemini app。
これほど多くの入口を持つAI企業は、ほとんどありません。
11-1 SearchとAI
Googleにとって最重要なのは検索です。
AI OverviewsやAI Modeによって、検索は回答型・対話型へ変わっています。
これはチャンスであり、同時にリスクです。
検索広告はGoogleの中核収益です。
AIが検索体験を変えると、広告モデルも変える必要があります。
Googleは、自分の最大事業を自分で変えなければならない立場です。
11-2 AI Mode、Search agents、Gemini Spark――検索は「探す」から「任せる」へ
2026年7月10日の最終確認で、Googleの検索AIはさらに重要になりました。
Google I/O 2026公式まとめでは、AI Modeが月間10億ユーザーを超え、Gemini 3.5 FlashがAI Modeの標準モデルとしてグローバルに導入されたと説明されています。
これは、Googleにとって極めて大きい。
ChatGPTは、検索の外側から「答えるAI」として入ってきました。
Googleは、自社の検索そのものをAI Modeへ変え、検索窓をマルチモーダルなAI操作画面へ変えようとしています。
さらにGoogleは、Search agentsも発表しています。
これは、ユーザーが関心あるテーマやタスクについて、Web、ニュース、ブログ、SNS、金融、ショッピング、スポーツなどの最新情報を24時間監視し、変化があれば要約して知らせるAgentです。
従来の検索は、ユーザーが毎回検索していました。
Search agentsでは、AIが常時見張り、必要な変化を知らせます。
ここに、Gemini Sparkが重なります。
Gemini Sparkは、Google I/O 2026で発表された24時間型の個人AI Agentです。Gemini 3.5とGoogle Antigravityを土台に、スマホやPCがオフの間もバックグラウンドで動き、重要な操作の前にはユーザーの許可を求める設計です。
Daily Briefも同じ方向です。Gmail、Calendar、Tasksなどを見て、朝にその日の重要事項を整理し、次に何をすべきかを提案します。
つまりGoogleは、検索を「情報を探す場所」から、「AIが情報を監視し、整理し、行動を準備する場所」へ変えようとしています。
Google I/O 2026では、検索と地続きの「agentic commerce(エージェント型の購買)」も打ち出されました。
その一つが、Universal Cart(ユニバーサルカート)です。
複数のサイトをまたいで商品を比較し、カートにまとめ、購入の直前までAIが準備する構想です。
検索広告と購買はGoogleの収益の中核です。検索AIが「探す」だけでなく「買う直前まで運ぶ」ようになれば、既存の収益モデルの延長線上に置けます。
これは、OpenAIのChatGPT Agent、AnthropicのClaude Cowork、MicrosoftのCopilot Coworkと同じ戦場です。
ただしGoogleには、検索、Gmail、Calendar、Android、Chrome、YouTubeという圧倒的な生活接点があります。
AI Agent競争において、この配布網は大きな武器になります。
11-3 YouTubeと生成AI
Veo、Lyria、Imagenは、YouTubeと極めて相性が良い。
動画制作。
サムネイル作成。
BGM生成。
字幕。
吹替。
広告クリエイティブ。
ショート動画。
クリエイター支援。
Googleは、生成AIをYouTubeの制作インフラへ入れることができます。
11-4 Google Cloudと企業AI
Google Cloudは、Gemini Enterprise、Vertex AI、AI Studio、TPU、データ分析基盤を通じて、企業AIの重要プレイヤーです。
Alphabetの2026年第1四半期決算では、Google Cloudの売上成長とAI需要が強調されています。
これは、Geminiが単なる消費者アプリではなく、企業AI基盤にもなっていることを示します。
11-5 Workspace連携はメインビジネスか――収益構造から見る
ここで、よくある誤解を解いておきます。
「GoogleのメインビジネスはWorkspaceか?」――答えはノーです。
【メインは検索広告】
Alphabetの2025年通期決算を見ます(総売上4,028億ドル、約64兆円)。
Google Search & otherが2,245億ドルで、総売上の約56%。
YouTube広告が404億ドル、Google Networkが298億ドル。
広告合計では、約73%を占めます。
Google Cloudは587億ドル(約14.6%)です。
【Workspaceの位置づけ】
Workspaceは、この中では小さな存在です。
企業向けWorkspaceはGoogle Cloudの内側、消費者向けはサブスク区分の内側に含まれ、単体でメインとは言えません。
Googleの収益の柱は、あくまで検索広告です。
【ただし「配布網」としては巨大】
とはいえ、Workspace連携の戦略的な意味は別です。
Thomas Kurianが「競合はピースを渡すが、我々はプラットフォーム全体を持つ」と述べたように、Googleは独自チップからWorkspaceの30億の受信箱までを握っています。
Workspaceは、Geminiを世界中のユーザーへ届ける巨大な「配布網」です。
【リスクとの接続】
ここが第15章の「検索広告依存」リスクにつながります。
収益はほぼ検索広告に集中しています。
そこにAI検索が侵食すれば、屋台骨が揺れます。
だからGoogleは、Geminiを検索・Workspace・Androidへ流し込み、防衛と収益化を同時に進めているのです。
第12章 API・MCP・Agent・CLI・Skillsで見るGoogle DeepMind
【API】
Google AI Studio、Vertex AI、Gemini APIが中核です。開発者はGemini、Veo、Imagen、Lyria、Gemmaなどを使ってアプリを作れます。
【MCP】
Googleも、Agentが外部ツール、Workspace、Cloud、企業データへ安全に接続する仕組みが必要になります。MCP的な標準化は、Gemini EnterpriseやAI Agent基盤で重要になります。
Google I/O 2026では、この方向の具体策としてWebMCPが提案されました。
WebMCPは、WebサイトがJavaScript関数やHTMLフォームなどを「構造化されたツール」として公開し、ブラウザ上のAI Agentがそれを直接呼び出せるようにする、オープンなWeb標準の提案です。
実験的なorigin trialはChrome 149から始まり、Gemini in Chromeとの連携も予告されています。
つまりGoogleは、Anthropic発のMCPと同じ「AIが外部ツールを安全に呼ぶ」流れを、Web標準とChromeという自社の配布網に取り込もうとしています。
【Agent】
Gemini 3.5はagentic workflows、long horizon tasks、multi-step problem-solvingを前面に出しています。Google Antigravity、Gemini Enterprise Agent Platformなども、Agent開発基盤として重要です。
【CLI】
Googleの開発者基盤では、AI Studio、Cloud CLI、開発環境、Agentic development platformが関係します。OpenAI CodexやClaude CodeのようなCLI型Agent競争にも、GoogleはAntigravityやGeminiで入っていきます。
【Skills】
GeminiのSkillsは、検索、要約、コード、マルチモーダル理解、画像生成、動画生成、音楽生成、世界モデル、科学AI、ロボティクス、Workspace自動化です。
12-1 Google Antigravity――Codex・Claude Codeに対抗するAgent開発基盤
OpenAIにCodex、AnthropicにClaude Codeがあるように、GoogleにはGoogle Antigravityがあります。
Antigravityは、Gemini 3と同時に2025年11月に登場した「Agentファースト」の開発プラットフォームです。
VS Codeをベースに、IDE・CLI・SDKで、自律的なAgentにコーディングを任せる設計です。
【Antigravity 2.0】
2026年5月のGoogle I/Oで、Antigravity 2.0が発表されました。
複数のAgentを並列に動かし、デスクトップアプリ・CLI・SDK・Android/Firebase連携まで広がっています。
基調講演のデモでは、Antigravityと高速モデルGemini 3.5 Flashが、わずか12時間でOSを一から構築してみせました。
【Gemini CLIの統合】
2026年6月18日、GoogleはGemini CLIをAntigravity CLIへ統合しました。
OpenAI CodexやClaude CodeのようなCLI型Agent競争に、Googleは「Antigravityへ一本化する」形で臨みます。
さらにAntigravityは、Geminiだけでなく、AnthropicのClaudeやオープンモデルも呼び出せます。
一つの開発基盤に、複数社のモデルを載せる。
これがGoogleのAgent開発戦略です。
12-2 Managed AgentsとRL fine-tuning――企業Agentを「管理して走らせる」段階へ
2026年7月10日の最終確認では、GoogleのAgent戦略は、モデル発表よりも実装基盤の整備が進んでいることが重要です。
Google I/O 2026では、Gemini APIにManaged Agentsが導入されました。
Managed Agentsは、単一のAPI呼び出しで、Antigravity Agent用のリモートLinux環境を立ち上げ、Agentが推論し、計画し、ツールを呼び、コードを実行し、ファイルを管理し、Webを閲覧できる仕組みです。
これは、OpenAI CodexやClaude Codeが向かっている「クラウド上で働くAgent」と同じ方向です。
さらにGemini Enterprise Agent Platformのリリースノートでは、2026年6月8日以降、Gemini 3.5 FlashがGemini Enterpriseアプリで標準有効化され、管理者による無効化トグルもなくなると説明されています。
つまりGoogleは、企業向けにもGemini 3.5 Flashをデフォルトの実用モデルとして押し出しています。
また、2026年6月15日にはGemini 3.5 Flash向けのReinforcement Learning fine-tuningがPublic Previewになりました。
これは企業にとって重要です。
汎用モデルをそのまま使うだけでなく、自社業務の評価軸に合わせてモデル挙動を改善する方向へ進むからです。
Googleの強みは、Gemini 3.5 Proのようなフロンティアモデルだけではありません。
Gemini 3.5 Flashを、Search、Gemini Enterprise、Antigravity、Managed Agents、RL fine-tuningへ広く流し込む実装力です。
第13章 資本力――Alphabet、Google Cloud、TPU、AIインフラ
Google DeepMindの資本力は、Alphabetの資本力です。
これはOpenAIやAnthropicとは違います。
OpenAIとAnthropicは巨大資金調達を必要とします。
Googleは、検索広告、YouTube、Cloud、Android、Workspaceなどの既存収益を持っています。
Alphabetの2026年第1四半期では、Google Cloud売上の急成長、AI需要、Cloud backlogの拡大が強調されました。
また、2026年のAIインフラ投資も非常に大きい。
Googleは、TPUを自社で持っています。
これは重要です。
NVIDIA GPUへの依存を減らし、自社モデル、自社Cloud、自社サービスに最適化できるからです。
13-1 TPUはGoogleの隠れた武器
AI競争では、モデル性能だけでなく、計算資源が勝負です。
GPUを誰が持つか。
推論コストを誰が下げるか。
学習を誰が速く回せるか。
データセンターを誰が建てられるか。
GoogleはTPUを持ち、クラウド顧客にも提供し、Geminiの訓練・推論にも使えます。
これは、長期的に大きな競争力になります。
第14章 競合比較――OpenAI、Anthropic、Meta、Microsoft、Mistral、中国勢との違い
【OpenAI】
ChatGPT、GPT、Sora、Codex、Agentで強い。Googleは配布網とインフラで勝り、ChatGPTブランドではOpenAIが先行しています。
【Anthropic】
Claudeは企業文書・安全性・コードで強い。Googleは総合力、マルチモーダル、検索、Cloud、TPUで上回ります。
【Meta AI】
LlamaとSNS配布網が強い。GoogleはCloud・検索・Workspace・Android・YouTubeを持ち、MetaはオープンモデルとSNS統合で戦います。
【Microsoft】
Copilot、Azure、Office、GitHubで企業導入が強い。GoogleはWorkspace、Cloud、Android、検索で対抗します。
【Mistral AI】
欧州主権AIとオープンモデルで存在感。Googleは巨大企業すぎるため、欧州規制や主権AIでは不利な場面もあります。
【中国勢】
Qwen、Doubao、Kimi、DeepSeek、GLMなどは、コスト、オープンモデル、中国語、国内アプリ連携で強い。Googleは中国本土市場への制約がある一方、グローバル配布とCloudで強い。
第15章 弱点とリスク――検索広告依存、規制、製品複雑化、ブランド分散
Google DeepMindにも弱点があります。
第一に、検索広告依存です。
AI検索が進むと、従来の検索広告モデルが変わります。Googleは自社の金脈を自ら変える必要があります。
第二に、規制です。
Googleは既に巨大プラットフォームとして各国規制の対象です。AIでさらに強くなると、独占禁止、データ、著作権、広告透明性、AI生成物表示の規制が強まります。
第三に、製品が複雑です。
Gemini、Gemini Omni、Veo、Imagen、Lyria、Genie、Gemma、AI Studio、Vertex AI、Flow、Whisk、Antigravity、Workspace。製品が多すぎると、ユーザーが迷います。
第四に、ブランド分散です。
ChatGPTは一つの強い名前です。
GoogleはGemini、DeepMind、Google AI、AI Studio、Cloud、Workspaceなど名前が分かれます。
第五に、OpenAI・Anthropicへの心理的遅れです。
実力は強いのに、「ChatGPTがAIの中心」という認知を変えるには時間がかかります。
第六に、実行力と人材流出です。
2026年、Googleは主力モデルの提供時期を繰り返しずらしました。Gemini 3.5 Proの6月→7月延期はその一例です。
象徴的なのが2026年7月9日です。この日、OpenAIはGPT-5.6(Sol / Terra / Luna)を、商務省の審査を経てChatGPT・Codex・APIで一般公開しました。同じ時期に、Googleの最上位Proはまだ限定プレビュー段階でした。この対比は、投資家や開発者に「出荷の速さ」の差を印象づけます。
同じ2026年6月には、Transformer論文の共同発明者Noam Shazeer氏がOpenAIへ、ノーベル賞受賞者でAlphaFoldのJohn Jumper氏がAnthropicへ移るなど、著名研究者の流出が報じられ、Alphabet株は1日で約2,250億ドル(約36兆円)の時価総額を失う場面もありました。
第七に、ベンチマーク上の見え方です。
一部の報道では、Gemini 3.5 FlashやGemini 3.1 Proが各種AIリーダーボードでトップ5圏外に置かれ、Anthropic、OpenAI、さらにはZhipu AIやMiniMaxなど中国勢のモデルに後れを取る場面がある、と指摘されています(報道ベース・評価軸により変動)。
配布網とインフラの優位が揺らいでいなくても、「最先端モデルの座」をどう見せるかは、ブランドと採用に効いてきます。
研究力・資本力・配布網という構造的優位は揺らいでいませんが、フロンティアでの「実行と人材」は2026年のGoogleの課題として意識されています。
第16章 日本企業がGoogle DeepMindから学ぶべきこと
日本企業がGoogle DeepMindから学ぶべきことは三つあります。
第一に、AIは単体モデルではなく、既存事業へ統合するものだということです。
Googleは検索、YouTube、Workspace、Cloud、AndroidへAIを入れています。
日本企業も、既存の業務、顧客接点、販売網、製造現場、データ基盤へAIを入れるべきです。
第二に、マルチモーダル化です。
文章だけでは足りません。
画像。
動画。
音声。
図面。
現場写真。
設備データ。
3D。
これらを扱うAIが必要になります。
第三に、世界モデルとフィジカルAIへの接続です。
生成AIは、文章と画像で終わりません。
GenieやGemini Roboticsが示すように、AIは世界を理解し、ロボットやシミュレーションへ進みます。
日本の製造業、建設、物流、医療、介護、教育は、ここに大きなチャンスがあります。
補足|Gemini 3.5 Proは本当に出たのか
第3回の最終確認で、Google DeepMindについて最も大きな追加点は、Gemini 3.5 Proの扱いです。
Gemini 3.5 Proは、Google I/O 2026で公式に予告されたモデルです。したがって、単なる噂ではありません。
一方で、2026年7月10日時点では、Google DeepMindのモデルカード一覧、Gemini APIのモデル一覧、Gemini Enterprise Agent Platformのモデルライフサイクル一覧に、一般提供モデルとしては確認できません。
そのため本文では、「Gemini 3.5 Proが出た」とは書かず、「Googleが公式に予告済みだが、7月時点では限定テスト・延期中の次期フラッグシップ推論モデル」と整理しました。
Business Insiderの報道では、Gemini 3.5 Proは6月予定から7月へ延期され、早期テスターの実利用フィードバック、長時間Agentタスク、コーディング性能、トークン効率の調整が理由とされています。これは、2026年のAI競争が、単なるベンチマーク競争から、1タスクあたりの実コストとAgent実行品質の競争へ移っていることを示しています。
一方で、Gemini 3.5 Flashは公式モデルカード・API・Google Cloud上で一般提供され、computer useもbuilt-in toolとして統合されています。つまりGoogleは、まずFlashを「実用価格帯のAgenticモデル」として広く配り、Proは仕上げてから出す戦略を取っていると見られます。
今後、Gemini 3.5 Proについては、次の四点が出たら「正式提供」と判断できます。
一つ目は、Google公式ブログでの正式発表。
二つ目は、Google DeepMindのGemini 3.5 Proモデルカード。
三つ目は、Gemini API上のgemini-3.5-proモデルID。
四つ目は、Gemini Enterprise Agent Platformのモデルライフサイクル一覧への掲載です。
この四つが揃うまでは、記事上では「公式予告済み・未一般提供・限定テスト中」と扱うのが最も安全です。
結論――Google DeepMindはAI総合覇権を取れるか
Google DeepMindは、AI総合覇権の最有力候補です。
Geminiで頭脳を持ち、Veoで動画を持ち、Imagenで画像を持ち、Lyriaで音楽を持ち、Genieで世界モデルを持ち、Gemini RoboticsでフィジカルAIへ進みます。
さらにGoogleには、検索、YouTube、Android、Cloud、Workspace、TPUがあります。
これは、OpenAIにもAnthropicにもない巨大な基盤です。
ただし、強すぎる既存事業は足かせにもなります。
検索広告を壊せるか。
製品をシンプルにできるか。
規制を乗り越えられるか。
ChatGPTのブランドを超えられるか。
この戦いが、Google DeepMindの今後です。
OpenAIがAI帝国、Anthropicが企業AIの要塞なら、Google DeepMindはAI総合国家です。
次回予告――Meta AI / Llamaを読む
第4回では、Meta AI / Llamaを扱います。
Llamaは、オープンモデルの王者なのか。
Meta AIは、Facebook、Instagram、WhatsApp、広告、AIグラス、生成AIアシスタントをどう統合するのか。
OpenAI、Anthropic、Googleとは違う、オープンモデルとSNS配布網の戦略を読み解きます。
主要参考リンク
Google DeepMind公式:Models
URL:https://deepmind.google/models/Google DeepMind公式:Gemini 3.5
URL:https://deepmind.google/models/gemini/Google公式ブログ:Gemini 3.5: frontier intelligence with action
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-5/Google DeepMind公式:Gemini 3.5 Flash model card
URL:https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-5-flash/Google DeepMind公式:Model cards
URL:https://deepmind.google/models/model-cards/Google AI for Developers:Gemini API Models
URL:https://ai.google.dev/gemini-api/docs/modelsGoogle AI for Developers:Gemini API Release notes
URL:https://ai.google.dev/gemini-api/docs/changelogGoogle AI for Developers:Gemini API Deprecations
URL:https://ai.google.dev/gemini-api/docs/deprecationsGoogle公式ブログ:Google I/O 2026発表まとめ
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/technology/ai/google-io-2026-all-our-announcements/Google I/O 2026:News and announcements
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/google-io-2026-collection/Google DeepMind公式:Introducing computer use in Gemini 3.5 Flash
URL:https://deepmind.google/blog/introducing-computer-use-in-gemini-3-5-flash/Google公式:Introducing computer use in Gemini 3.5 Flash
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-computer-use-gemini-3-5-flash/Google DeepMind公式:Introducing Gemini Omni
URL:https://deepmind.google/blog/introducing-gemini-omni/Google DeepMind公式:Start building with Nano Banana 2 Lite and Gemini Omni Flash
URL:https://deepmind.google/blog/start-building-with-nano-banana-2-lite-and-gemini-omni-flash/Google DeepMind公式:Gemini Omni
URL:https://deepmind.google/models/gemini-omni/Google DeepMind公式:Gemini Omni Flash model card
URL:https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-omni-flash/Google DeepMind公式:Veo
URL:https://deepmind.google/models/veo/Google DeepMind公式:Imagen
URL:https://deepmind.google/models/imagen/Google DeepMind公式:Lyria
URL:https://deepmind.google/models/lyria/Google DeepMind公式:Lyria 3 model card
URL:https://deepmind.google/models/model-cards/lyria-3/Google DeepMind公式:Genie
URL:https://deepmind.google/models/genie/Google DeepMind公式:Gemini Robotics
URL:https://deepmind.google/models/gemini-robotics/Google DeepMind公式:Gemini Robotics-ER 1.6
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/google-deepmind/gemini-robotics-er-1-6/Google公式ブログ:Gemini for Science(I/O 2026)
URL:https://blog.google/innovation-and-ai/technology/research/gemini-for-science-io-2026/Google Cloud:Gemini Enterprise Agent Platform(formerly Vertex AI)
URL:https://cloud.google.com/products/gemini-enterprise-agent-platformGoogle Cloud:Gemini Enterprise release notes
URL:https://docs.cloud.google.com/gemini/enterprise/docs/release-notesGoogle Cloud Blog:Gemini for Government
URL:https://cloud.google.com/blog/topics/public-sector/gemini-for-government-unlocking-the-next-wave-of-public-sector-innovationGoogle Developers Blog:Build with Google Antigravity
URL:https://developers.googleblog.com/build-with-google-antigravity-our-new-agentic-development-platform/Google Developers Blog:Transitioning Gemini CLI to Antigravity CLI
URL:https://developers.googleblog.com/an-important-update-transitioning-gemini-cli-to-antigravity-cli/Google Developers Blog:Long-running AI agents with ADK
URL:https://developers.googleblog.com/build-long-running-ai-agents-that-pause-resume-and-never-lose-context-with-adk/Alphabet Investor Relations:Q1 2026 Earnings Call
URL:https://abc.xyz/investor/events/event-details/2026/2026-Q1-Earnings-Call-2026-nW8kCrBAKS/default.aspxGoogle公式:Alphabet Q1 2026 CEO remarks
URL:https://blog.google/company-news/inside-google/message-ceo/alphabet-earnings-q1-2026/Alphabet Investor Relations:2025 Form 10-K
URL:https://abc.xyz/investor/static/pdf/20250205_alphabet_10K.pdfBusiness Insider:Google delays Gemini 3.5 Pro launch to July
URL:https://www.businessinsider.com/google-3-5-pro-july-release-tokens-ai-agents-model-2026-6
出典対応表
Gemini 3.5、Gemini 3.5 Flash、Agentic workflows:Google DeepMind公式ページ、Google公式ブログ、Gemini 3.5 Flash model card
Gemini 3.5 Proの公式予告・未一般提供の整理:Google I/O 2026公式発表、Google AI for Developersモデル一覧、Google DeepMindモデルカード一覧、Google Cloudモデル提供状況
Gemini 3.5 Proの6月→7月延期、早期テスター、長時間Agentタスク、トークン効率:Business Insider報道ベース
Gemini 3.5 Proの200万トークン、Deep Think、高価格帯、7月中旬目標:報道・観測ベース、公式未確認
Gemini 3.5 Flashのcomputer use:Google DeepMind公式発表・Google公式ブログ・モデルカード
AI Mode、Search agents、Gemini Spark、Daily Brief、Universal Cart:Google I/O 2026公式まとめ・Google公式ブログ
Gemini Omni Flash、Nano Banana 2 / Lite / Pro:Google DeepMind公式発表、Google AI for Developersモデル一覧、モデルカード
Veo、Imagen、Lyria:Google DeepMind各モデル公式ページ・モデルカード
Genie、Project Genie、世界モデル、Street View接続:Google DeepMind公式・Google I/O 2026公式まとめ
Gemini Robotics、Gemini Robotics-ER 1.6:Google DeepMind公式発表
Gemini Enterprise Agent Platform、Managed Agents、Workflow agents、Skills、Slack連携、RL fine-tuning:Google Cloud公式ページ・Gemini Enterprise release notes
Gemini for Government / Education / Science:Google公式ブログ・Google Cloud Blog
Google Antigravity、Antigravity CLI、ADK長時間Agent:Google Developers Blog
Alphabet売上構成、検索広告依存、Google Cloud、AIインフラ投資:Alphabet公式決算・SEC Form 10-K・投資家向け資料
研究者流出、Gemini 3.5 Pro延期、競合比較:主要報道ベース。未確定情報は本文中でも報道・観測として記載
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