恋するぐっさん
職場に「ぐっさん」と呼ばれている若い男の子がいる。
年齢は20代半ばくらいかな。若い。とにかく若い。
アラフォーの私から見たらものすごく若い。
若いっていいなぁ!なんて思いながら、私は彼をよく観察している。イケメンかと言われるとそうではないような…ただ、目がパッチリしていて綺麗な顔立ちをしている。体型は少しぽっちゃり系。そして、笑うとなんだか可愛い。
そんな彼に最近の私は釘付けだ。そう。最近の仕事での楽しみは、職場でぐっさんの言動を見届けること。あまり親しいわけではないので、彼のことはよく知らない。
人伝に聞いて「新潟出身」ていうことだけは知っている。もちろん本人に直接「ぐっさん」と呼んでみたことはない。どうやら彼に興味津々なのは私だけではないようだ。同僚の女性の何人かは私と同じように気になっているみたい。
ぐっさんは、電話でのお客様対応の業務をしている。元々は営業の仕事がやりたかったみたいだが、叶わなかったそうで。「辞めたい」と思うこともあったみたいだけど、なんやかんやで3年程、この仕事を頑張っているようだ。妙に他の人の何倍も声が大きく張り切っていたり、女子みたいな声の高さやトーンになったり、慌てて噛んでしまったり、途中で言うことがわからなくなって「えー、えー、えー、」と言葉に詰まっていたり。見ていて頼りないような、危なっかしいような場面が多々あるのだが、そこもちょっとププっと笑える。でも可愛らしい。お客さんからクレームを言われて「申し訳ございません」と申し訳なさそうに、泣きそうな声でひたすら謝り続けているところも私は目撃している。でも、ひたむきに、そして真摯にお客様対応をしているぐっさんは、真面目でピュアで頑張り屋さんな子なんだと感じている。今の会社で頑張っていくのかな、出世を目指して!
先日、職場でとある社員の方の送別会を兼ねた飲み会が開催された。私は参加しなかったが、参加した同僚のAさんがぐっさんに「彼女はいるの?」と聞いたのだそうだ。すると、「彼女いないんですよ〜、欲しいんですけどね」と言ってきたのだとか。それをAさんが私に報告してきた。私は、「へぇ〜。いないんだぁ。まだ若いしね。結構ウブそうだし恋愛経験もあまりなさそうだもんね」なんてAさんと話して盛り上がっていた。
ある日の仕事の帰り道、Aさんと帰っているとぐっさんが後ろから追いかけてきた。「どうしたのかな?」と思っていたら、私やAさんに追いつくと足並みを揃えて一緒に歩き出した。すると、彼はいきなり少し恥ずかしそうに自分のことを語り出した。「僕は新潟出身で、子供の頃から野球をやっていました。大学は北海道に行きまして、そこでアメフトをやっていたんです。趣味はスポーツ観戦。野球とかサッカーとかスポーツ全般よく観ます。野球は、巨人ファンなんです。巨人ファンですみません」と聞いていないのだが、自分から一方的にベラベラと話し出した。いきなり自己紹介??そして、「サリーさんはどこの出身なんですか?」とかいきなり矢継ぎ早に私に質問してきた。
「えーっ!?」と私は内心驚いた。「私に興味があるのか?」「もしかして私と一緒に帰りたったのかな?」と色々と頭の中がぐるぐるしてしまった。逆に私も彼に話題を色々振ってみたのだが、いまいち盛り上がらず…つまらなかったのかなと思い、結局その日は、たわいもない話を無難に終わらせて、帰る方向も違うので別れた。
その日を境に仕事中、ぐっさんからの視線を今まで以上に感じるようになった。以前も少しはあったのだが…
でも、直接は話しかけてこない。目が合って微笑んでみると照れくさそうに笑い返してきたり…でも、話しかけてこない。ぐっさんと同い年の同僚女性Rちゃんにはものすごく話しかけていて、いろんな話で盛り上がって楽しそうにしている。口数も多くて、ぐっさんてこんなに喋る人なんだとビックリしたくらいだ。最初はRちゃんのことが好きなんだなと思っていたけれど、そうでもなさそうだ。女性として意識していないからこそ、気楽に話せる相手のようだ。これは自意識過剰とかそんなのではなくて、素直に感じたままを綴っている。私に向けられている視線が他の人と違うのも一目瞭然だ。「一瞬肉食系に見えるけど、なんともわかりやすい草食系男子だわ」と心の中で笑ってしまった。
あと、他の人と話をしている時、彼の声がとても大きくなっている時がある。これは「自分はこういう人間なんです」という私に対しての彼なりのアピールなのかもしれない。最近、急にカッコつけるようにもなった。なんか遠回しのアピールって可愛らしいけど、正直面倒くさい。こんな年になっても若い男の子から想いを寄せられるなんて思いもしなかった。職場にいると彼の言動から性格とかが垣間見えて、典型的な年上好きなんだなと確信した。帰り道に追いかけてきたのも、臆病な彼なりのほんの少しの勇気だったのだろう。
お姉さん嬉しいよ。そんな若い人に好意を寄せられるなんて。年齢差ありすぎるから現実的に有り得ないけどさ。まだまだ捨てたもんじゃないな私も!と自信が余計に増したけど!私は人生を共に生きていこうと、心に決めている男性がかなり前からいるので、進展することはないけど。まぁ見てみぬフリをしておこう。
心の奥底だけで喜んでおこう。
恋してるんだな、ぐっさんは私に。
彼は私の心の中の永遠の恋人。
よっしゃ、私の勝ち。
