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土木中小企業の事務員が、Claudeに課金するまで ― 自己紹介にかえて


土木の中小企業で、公共工事の書類まわりをやってる事務員。現場には出ない。完工図、品質管理、出来形管理、数量計算、産廃のマニフェスト、そういう紙とExcelの山をさばくのが仕事。

この記事は、そんな書類まみれの事務員が、AIに元から詳しかったわけでもないのに、追い詰められた勢いでClaudeに課金して、走りながら覚えている最中の記録。完成形の話じゃない。今も詰まってる。



人が減っていく事務室で、指名停止の二文字がよぎった

一昨年、同僚が1人辞めた。

去年、1人入ってくれたと思ったら、そのすぐ後にもう1人辞めて、入ってくれた人も他部署へ異動になった。差し引きで二人減った。

残った書類は、当たり前だけど残った人間に積み上がる。

工期遅延 → 指名停止処分

この二つの単語が、今年の頭くらいから頭の中で勝手に並ぶようになった。

公共工事をやってる会社にとって、指名停止は事業そのものに関わる。書類が期限に揃わなかったら、現場がどれだけ頑張っても意味がない。そしてその書類を揃える責任は、事務員の机の上に乗っている。

「このままじゃ来年度の繁忙期は絶対に越えられへん。社員募集をかけても今の売り手市場じゃウチに来てくれるとは思えんし、派遣社員も今はいらんし、繁忙期だけ来てもろても仕事を教える手は作られへんし、八方塞がりやな」

そう思っているうちに今年の年度末進行が始まった。完工図、出来形管理、数量計算、産廃の集計、そういうのが一気に重なる時期。危機感は頭の隅でずっと鳴ってたけど、目の前の書類に引っ張られて、そこに構ってる余裕も正直なかった。

書類の山に挟まれて、工期遅延の四文字が頭をよぎっていた頃

きっかけは、Cowork Windows版のニュースだった

2026年2月10日、AnthropicがCoworkのWindows版をリリースした、というニュースがあった。macOS版が1月12日に出てから約1ヶ月後の話。

自分がそのニュースに触れたのは2月13日か14日頃。媒体は確かYouTubeだったと思う。うろ覚えだけど、たぶんそう。

それまでもチャットAIが話題なのは知ってた。知ってたけど、ほとんど触ってなかった。拒否感があったわけじゃない。ただ、チャットで話してどうするんだろう?何か良いことが有るんだろうか?というのが正直なところ。

でも、このニュースだけは違った。画面の向こうで誰かが「Windowsでローカルのファイルを触れる」と言っているのを聞いた瞬間、画面に釘付けになった。


食いついたのは「ローカルの書類を直接作れる」の一点

なんでそこだけ刺さったか、自分でも後から考えた。答えは一個しかない。

書類を実際に仕上げてくれる予感がしたから。

チャットAIにいくら賢いことを言ってもらっても、最後に「じゃあそれをExcelに転記して、体裁整えて、印刷して、綴じて提出」するのは自分の手だった。そこが減らない限り、自分の業務量は減らない。

Windows版のCoworkは、そこに手が届きそうに見えた。ローカルのファイルを直接読んで、直接書き換えて、直接保存してくれる。もしそれが本当なら、

自分だけで1.5人分にはなれるかもしれん

くらいの計算は、追い詰められた頭の中で勝手に回った。1.5人分って数字に根拠はない。「今まで1人分やってたのが、AIを使えば自分だけで1.5人分になれるかも。そこに現場監督にも書類をできる範囲で手伝ってもろて0.5人分、合わせて2人分。それなら1人減った分は賄える。繁忙期にはまだ足りんけど、少しはマシになる」という、当時の自分にはリアルな内訳だった。

ちなみにこの時点での自分は、AIに元から詳しかった人間じゃない。チャットAIもろくに使ってなかった側の人間。たぶんこの記事を読んでくれてる人の多くと、スタート地点はほぼ同じだと思う。


日曜に腹を括って、嫁に一応話を通して、月曜にProプラン加入

ニュースを見てから、何ができるかを調べ始めた。Anthropicのサイト、レビュー記事、使ってる人のポスト、ひととおり。

次にぶつかったのは料金の話。月額いくら、というのが非エンジニアの財布には地味に刺さる金額で、少し悩んだ。

週末を挟んで、日曜日に決めた。

「これで書類が回るんやったら安い。回らんかったら、その時は解約すればいい」

そう腹を括って、念のため嫁に一応話を通した。副業でデザインもやってるから、経費としての説明も一応できる。でも家庭の話として一言入れておくのと入れないのとでは、後の気まずさが違う。

翌月曜、Proプランに加入した。

日曜の夜、Proプランの加入画面を前に、腹を括る数分前

触り始めて見えてきたこと — 共通仕様書のDB化

最初のうちは、無我夢中だった。何でもとりあえずClaudeに話しかけて、何でも相談して、回る仕事は全部通してみる、という時期。

その中で、最初にハッキリ手応えを感じたのが共通仕様書のデータベース化だった。

公共工事の共通仕様書は、何百ページもあるPDFが何冊もある。ある規定が何ページに書いてあるか、一発で引けないことの方が多い。毎回ページをめくって探すのは時間のロスで、ここが何とかならないのか、はずっと思ってた。

この時点でのツール構成は、今振り返るとこんな感じ。

  • Cowork:共通仕様書のPDFを発注者サイトからダウンロードしてくる係

  • Claude.ai(チャット画面):全体の相談役。何をどうすればDB化できるのか、を聞く相手

  • Claude Code(VSCodeの拡張機能):実際にコードを動かす係(当初は触るつもりは無かった)

当時の役割分担。Coworkが書類をダウンロード、Claude.aiに相談して、Claude Codeが仕上げ

Antigravity(VSCodeの派生Google製)の存在も当時から気になってはいたけど、Claude.aiに相談したら「まずはVSCode拡張のClaude Codeの方から入るのがいい」と止められた。それに従って、まずはClaude Codeで触り始めた。

やったことも、今思うとかなりシンプルだった。

Claude.aiに「共通仕様書の検索がしたい、仕様書はCoworkでダウンロードしてもろたら良いかな?」と相談した。データベース化するならClaude Codeが要ると教えてもらって、起動できるまで手順を聞きながら設定した。最後に「Claude Codeに渡すDB化用のプロンプト」もClaude.aiにお願いして、返ってきたやつをClaude Codeにそのまま貼り付けただけ

それでも、動いた。

検索窓に「舗装工の上層路盤の誤差許容値は幾ら」と投げるだけで、該当箇所が返ってくる。今までの「目次めくって、該当章に飛んで、目で探す」が消えた瞬間だった。

検索窓に「上層路盤の誤差許容値」と投げて、一発で返ってきた瞬間

この時にハッキリ思ったことがある。

データベースが作れるんやったら、Excelも何とかなるかもしれん

この手応えが、後の配管図読み取り(第1記事)につながる助走だった。Excelについては、正直なところ、その後でかなり痛い目を見ている最中だけど、その話はまた別の記事で書く。


Claudeはせっかちな相棒だった。そして一人じゃダメだった

触り続けてる間に、だんだん見えてきたことがある。

最初は無我夢中過ぎて気付かなかったんだけど、つい最近になってやっと**「AIって完璧ちゃうんや」**と実感した。

非エンジニアの自分から見たClaudeの一番の特徴は、たぶんこれ。

せっかちで、途中の工程をすっ飛ばして、いきなり正解を出そうとする。

自分の実感としては、Claudeに業務のルールを一個ずつ渡していくと、途端に賢く動いてくれる。逆に、何も前提を渡さんと走らせたときは、それっぽいけど外してる答えを自信満々に出してくる。

暗黙知を言語化することがAIには必要、というのはClaudeを触りだして知ったことなのだけど、こういうのは記事で読むのと、自分の手で試して「なるほどこういうことか」と気付くのとでは、全然違う。


そしてもう一つ、触り続けた結果として腹を括ったことがある。

一人だけが使っててもダメだ、ということ。

自分のskill化(業務の手順をClaudeに覚えさせて、毎回同じように動かせるようにすること)は、今まさに過渡期にある。一工程あたりで見たら、正直なところ今は効率が落ちてる自覚もある。skill化に時間がかかっているから。

それでも、次の繁忙期までに自分の担当分はある程度自動化できるかも、という感触はある。問題は、自分が普段やらない作業のskill化だった。これは自分一人では時間がかかりすぎる。

だから出した結論は一個。

部内の書類担当の事務員全員がClaudeを使って、それぞれの知見を貯めて、skill化して、全員で効率を上げる

今のところはこれかなと思ってる。自分一人の経験だけでは、会社の書類業務全体は回らない。

そして、この結論が**「じゃあなんで発信するのか」**に自然につながった。


だから書いてる — 走りながらの記録を残すために

自分一人の経験では足りない。だから、自分がやったこと、つまずいたこと、Claude.aiとClaude Codeとそれ以外のツールをどう使い分けたか、そういう試行錯誤を外に出しておこうと思った。

完成形の解説記事はすでに世の中に山ほどある。でも、土木中小企業の事務員が、非エンジニアのまま、追い詰められてAIに飛び込んで、走りながら覚えてる最中の記録は、たぶんあんまり無い。

今後はこんな話を書いていくつもり。

  • 配管図から管材を読み取って数量を拾う話(→これが第1記事)

  • 共通仕様書のDB化をもうちょっと詳しく

  • Excelで絶賛ぶつかり中の壁の話

  • 部内にskillを展開していくまでの試行錯誤

ちなみに、配管図から管材を読み取る話(第1記事)は、この記事で何度か触れた「Claudeはせっかちで、基本を渡すと相棒になる」という話の実証編になってる。「受口は左にきます」という配管図の図形ブロックの形をClaudeに一行渡しただけで、それまで詰まっていた問題が一発で解けた、という話。もし興味があれば。


まだ途中。今もExcelで詰まってるし、skill化も終わってない。でも、同じように書類の山の前で立ち尽くしてる土木中小企業の誰かの、手がかりの一つになればと思って書いてる。

走りながら書いてる、ちょうど今この記事みたいに

少なくとも自分は、誰かの「走りながら書いた体験談」は、後から同じ道に来る人の手がかりになると思ってるから。


かげだん|土木×AI|書類まみれの事務員がやってみた

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