ループモール 第四章 6

 ここで長時間過ごすと気が変になりそうだ。僕はここを出るときもまともでいたい。

「子供を殺すだけで、ここから出られるって言ってるだろ!」

 もう一人の僕との距離は数歩なので、大股で飛びつけばそれで終わりだ。

 四本の包丁で爪のように、薙ぐ。

 僕はチョコレートの仮面の内側から、もう一人の僕が恐慌をきたして固く目を瞑るのを他人事ひとごとのように眺める。

 ぐっ。

 鈍い金属音。強烈な痛みが僕の側頭部に走り、攻撃を遮った。頭蓋より硬いそれは、僕の脳を揺らした。足元に何かが転がる。フライパンだ。

 右の眉からこめかみまで鈍く痛む。右側のチョコレートの仮面が欠けて、右目が露になってしまう。おかげではっきりともっちーの姿を認めることができた。

 やはり、一階にいたか。片目で睨みつける。

 もっちーはショッピングカートにフライパンや鍋を入れて持って来た。ループで学習するのは僕だけではなく、もっちーもなのか? しかも、あのカートはかごの部分の先端に割った瓶を取りつけている僕が自作したものじゃないか。

 もっちーは必死の形相で鍋を投げつけてきた。

「こっちに来たら駄目だ!」

 もう一人の僕の制止を聞くような子供じゃないだろう。

 もっちーが投げつけてきた鍋は不意打ちとは違って、今度は僕の目にもはっきり目視できるだけに、横に動くだけでかわせた。それにしても、もっちーはあんなに健気な子供だっただろうか。

「ウダガワ! 今のうちに逃げや!」

「もっちーもだ!」

 もう一人の僕は俊足で逃げた。嘘だろ。ここは僕とやり合うべきだ。僕ならそうするし、そうしたんだ。

 もっちーはすでに中央エスカレーターを駆け上がっている。もう一人の僕が逃げたと見せかけて遠巻きに僕を見ている。やるのかやらないのかはっきりしない。追いかけようとしたら逃げていく。くそ、僕を足止めする気はないらしい。少しは戦え。お前のトートバッグにも包丁が入っていたはずだ!

 このモールで伯父さんと待ち合わせをしているつもりか? 違うだろう? 彩とだろう? そして、彩は今病院にいるんだ。いいかげん思い出せ。お前も僕なんだから、僕と同じ人殺しだ。

 もっちーの姿はもう見えなくなった。あっちを追うべきだった。今からでも遅くはないが。もう一人の僕に釘を刺すように言っておく。

「ガキなんか守って何になる! お前はこれからそいつに苦しめられるんだ。分かってないな。彩がどれだけ子供のことで悩んでいたのか忘れているんだろ。さっさと思い出せよ。彩を苦しめたのは腹の中の子供だ。子供さえいなければ、彩はあんな短気にならなかった! 子供なんかいらないんだって彩が言ってただろ!」

 
 一月の昼の雨だった。ライトイエローの傘を僕が持っていた。

 その日はサーカスのテントへ向かっていた。有名な海外のサーカス団の日本公演が、大阪の鷹井たかい緑地にテントを張って行われている。彩の好きな衣装デザイナーが団員の衣装を手掛けているとのことで、彩に誘われたのだ。

 チケットは後ろの席なら僕でも買える金額なのだが、彩は当然前のS席で見たいらしく僕もS席の一万円を奮発した。

 サーカスなんて子供の見世物だろうと思っていたが、着いてみると場の雰囲気で楽しくなってきた。USJみたいなものなんだな。一方、彩はどこか浮かない顔をしていた。

 彩のお腹ははっきりと妊婦と分かるそれになっていた。彩は朱色のロングダウンコートに、インナーは黒のタートルネックのトップスという格好で、着膨れを気にしていた。

「やっぱり少しきついわね。もうSサイズなんか一生着られなくなるのかもしれないわ。本当は普通のベルトがしたいの。マタニティベルトじゃ、いかにも妊婦って感じになるのよ」

 妊婦の見た目の何がいけないのだろう。彩は自分も妊婦なのに妊婦の悪口を平気で言う。

「うざいのよママ友とか。大変よねとか。これからが本番とか、私とあなたは同類よみたいな仲間意識が。妊娠したらみんなめでたいって一括りにされるのが、本当にうざい。妊娠したって、子供ができてうざって思ってる人もいるはずなのに。言うことすら許してくれないでしょ? ママ友とか作るのはあたしには無理ね。嫌よ。あたしにはウダガワくんだけでいいの。それなのに、赤ちゃんを見せて自慢してくるようなママたちと会話したら、蕁麻疹出そう」

「ママ友の会に行くときは、僕も行くよ。とりあえず、産んで考えたらいいと思うけどな」

「嫌よ。あたし、ほかのママたちにウダガワくんを見られたくないの」

「どうして?」

「どうしてもよ。あたしたち貧乏夫婦に見られるわ」

「いいんじゃない?」

「駄目よ。あたしは毎日ブランドものを持ってでかけるわよ。だから、今からお金を溜めないとね」

 妊婦でもできるバイトはあるのだろうか。内職とかだろうか。彩に内職は似合わない。というか、彩はくだんの下着メーカーに内定を取っていた。新入社員の研修までに何かしようというのかもしれない。

 彩は大きな瞳の真っ黒なアイラインを滲ませて涙目になる。

「堕ろせたらよかったのにね」

 ぼやくのはいつものことだ。彩の涙は日常の光景だ。最近は慰めるのも面倒に思う。僕だって行為は嫌だった。嫌というか、主導権がないことが嫌だった。命令に従ったに過ぎないと言い張りたいが、そんなことを口にすれば彩にぶたれるだろう。彩は公衆の面前でも家でやるように、僕を平気で叩くようになっていた。

 サーカステントの前では人がごった返していた。次回のチケットを買い求める男女、ベビーカーを押した女性と、子供を肩車する父親。

 遠い人達だ。僕はあんな風に肩車できるだろうか。彩はベビーカーなんて押すだろうか。子供を外に連れ出すのを面倒だと思うに違いない。出かけるときはきっと一人でだろう。僕は留守番をして彩の帰りを待つ。彩は僕のことを父親として扱わない気がする。ある意味気が楽だが、僕は父親とはただの種馬のことだったか? と怒りたくもなる。だが、彩は自分の子供をどうこうする決断を十六週になってもしていない。色々しなければならないことがあるはずだ。名前を考えたり、どちらの家で暮らすのかとか、両親に報告には行くのか行かないのか。

 まず僕らは、式も挙げていないし婚姻届けも出していない。このまま生まれても、彩は出生届を出すかどうかすら怪しい。

 頭の片隅に乳児遺体遺棄事件のニュースが思い浮かぶ。あるときは女子トイレで、あるときは用水路で、あるときは海水浴場で。

 これらに共通するのは、水のある場所で流していることだ。流産も流れるというが、母親になる女性には、何か本能的に子供は流れていくと思っているところがあるのか。

 この先赤ちゃんを育てる資金源をどうするのか、何も決めていない。決められない。僕らは赤ちゃんが産まれたあとのことを考えないようにしている。

 僕には彩を殺人者にすることはできない。それだけはできない。なんとかしなければいけない。

 入城待ちの列で、僕らの前を行っていたベビーカーを押した女性がつまずく。年若い夫が反射的に抱きかかえる。女性は足をくじいたのか、踵の高くないパンプスを一度脱いで履きなおした。

 彩はふふっとはにかむ。

「やっぱりあたしたちには無理だね」

 憑き物が落ちたように晴れやかだ。彩の今日のヒールは十センチもある。僕の身長を優に超えてしまった彩に今転ばれたら、僕が前に飛び出ても支えきれないだろう。

 子供を育てることが無理だと、はじめから分かっていたんだろとは言えない。彩の太陽のような笑顔を久しぶりに見たからだ。彩の紅潮した頬が冬風で冷えてさらに赤くなる。タートルネックの襟に首を埋めて媚態で僕の肩に彩の肩が寄りかかる。僕はされるままにしていた。僕の頬も赤くなりそうで怖かった。

 彩を愛していると言えるだろうか。彩にはときどき、かき乱される。感情であったり、私生活であったり、果ては人生であったり。

 僕の人生はもう彩のものになっている。結婚もしていないというのに。このままでいいのだろうか。

 入場が開始されたので、あらかじめ購入していたチケットに従い、僕らはS1席に座った。円形のステージを時計に見立てるなら僕らは七時の方向に座している。

 公演開始時間までにはまだ三十分もある。僕はグッズを見に行きたかったが、彩は高いヒールで足が疲れたと言って席を立とうとしない。そのとき、客席にピエロや動物に扮した団員たちが訪れた。グッズ販売は向こうからやってくるのかと僕は感心したとともに、彩にも同意を求めて微笑んで見せた。

 僕はテント内の弾けるような観客たちの笑い声や、座席を探して歩く人の足音などの雑多な音に胸躍らせながら、団員が近くに来るまで根気よく待った。一番近くにいたのはピエロだ。

 恐ろしく長身痩躯のピエロだった。一メートル九十センチぐらいあると思う。白に塗りたくった顔でも白人だと分かる。紺色の衣装に、同色の羽根が襟の部分や手首足首にあしらわれている。仮面こそつけていないが、ヴェネチアの仮面カーニバルを模したようだった。

 肩には手巻きのオルゴールのようなものを乗せて、見た目に反する軽快なラッパ音を奏でている。音は録音とはいえ、賑やかで雰囲気が出ていて良い。

 手足が長いので観客の顔を見るために腰を落として、首からかけたかごを観客に見せている。かごの中にグッズがあるようだが、遠くて具体的にはどんな商品が入っているのかまではよく見えない。

 やっとピエロが僕らの近くまで来た。彩を挟んだ隣の席のグループの男の子にピエロは商品の一つを手に取って見せている。

「これは運命ノ輪だぁ! プフッ」

 おどけるピエロ。男の子は無表情だ。少しは笑ってやれよ。

 にしても、ただの知恵の輪だった。期待して損した。古臭い玩具だよな。

 ピエロのしわがれた声から、メイクで上手く隠しているが老年なキャストだと分かる。ピエロに定年退職はないんだろうか。

 男の子の顔は、今粘土をこねて作ったかのように丸く、茶色の髪は頭にちょこんと乗っている。鼻はおだんごのようで目も大きい。

「よかったやん、まさくん」

「ガキじゃないんだから。もっちーは買わないの?」

 まさくんと呼ばれた男の子の隣にはもっちーと呼ばれた小学生ぐらいの女の子が股を開いて座っている。艶やかな黒髪のツインテールの丸顔の小学生。言いたいことは全部口にしてしまいそうな大きな口と、力強い目をしていた。

「うちはさっき買ってん。ばばーん。お菓子でできた人形。顔はチョコレートでできてんねんで。マリアも買ったんやで」

 マリアと呼ばれたさらに隣にいる女の子は、もっちーの同級生だと思われた。面長の顔に和毛のような茶色い髪、鼻は小さく遠目にはどこにあるのか分からない。お上品な服装から、お嬢様のように見える。

「まあ。もっちー。わたし、それやっぱりやめたの。食べたらなくなるのは、もったいないかなぁって」

「じゃあ何買ったん?」

「腕時計よ。お母さんったら、いつもわたしにブランドものをつけさせるでしょ? 自分で選んで買ってみたかったの。でも、ここを押したら……」

『ギャハハハハハハハッフゥー』

 女の子の時計にしては少々下品な笑い声を腕時計は奏でた。それを聞いた三人は大爆笑した。

 和やかな雰囲気を眺めていると、彩に鼻で笑われた。ついに、僕らの前にもピエロがやってくる。僕はピエロが差し出すより早く、彼の首からぶら下がった商品かごに手を伸ばそうとした。

「子供ね」

 彩がそう呟いて足を伸ばした。ピエロが彩の足に引っかかった。

 ピエロは高身長、しかも意外と老齢。ぐらりと揺らいだ彼はたたらを踏んだが踏みとどまることができず、そのまま前に飛ぶように激しく転倒した。

 さっきの子供ら三人組が爆笑するのも無理はない。僕もピエロの動きはジョークのように思えたからだ。だが、彼の頭頂部が僕らの足元に落ちたとき、鈍い音とともに客席の木造の足場が揺れた。

 それでも、いい年をした大人の心配をする者はいなかった。

「あはははははっ!」

 高らかに彩が嬌声を上げる。

 ピエロは動かない。僕はそれをショーとして見ていた。きっと、がばと起き上がり変な顔をして観客を驚かせようとするに違いない。サーカス団員なんだから。

 だが、ピエロはぴくりともしない。顎から落ちたので脳が揺れて脳震盪でも起こしているのだろう。客席入口から現れた数名の団員が彼に駆け寄る。そのときになって、僕ら客たちは異変に気づいたが、アクシデント一つを取っても僕らには面白おかしく感じられた。彼はただの物売りだろう。ちょっと頭を打ったぐらいじゃサーカスは中止にならない。

 彼は数名の団員に抱えられて客席入り口に向かって出て行った。手を頭にやってよろめいていたが、しっかり生きていた。

「大げさなんだから」

 彩が誰に言うでもなく言ったが、少なからず僕は批判されたような気がした。

 実際、こういう種類のアクシデントが起こったあとのサーカスは客の不安を振り払い、何も起こらなかった場合に比べて盛り上がった。小さなアクシデントが興行に花を添えたとも言える。

 サーカスの終盤に差しかかったころ、僕ら観客の頭には小さなアクシデントのことなどすっかり抜け落ちていた。

 最後の演目。空中ブランコ。

 そこにあの老齢なピエロがやってきた。衣装がそのままだったので見間違いようがない。おいおい、嘘だろ。前座じゃないのか? ブランコに飛び移るつもりか。

 ライトに照らされたピエロの白塗りの顔が、さらに紙のような白さになったのを僕は見逃さなかった。

 隣の彩は少し驚いただけだった。

 ピエロの顔はくしゃりと歪められた。それが、彼の笑顔だと分かったとき、戦慄が背中を駆け降りて行き、尿意をもよおす。彼は負傷している。そう思わずにはいられなかった。

 販売員のピエロがステージに出るなんて思わなかったのだ。のちに知ったのだが、サーカスとは団員がテントを張る土木作業から、グッズ販売、チケット販売まですべてやるのだという。

「ピエロだから、まさか飛ばないよな」

 自分の声が震えていることに驚いた。

「飛ぶわけないでしょ? だってピエロでしょ? きっとぶら下がろうとして、『怖くてできないよ』っていう演技をするだけよ」

 僕も彩もそう信じようとした。僕だけかもしれないが。

 サーカスは客を裏切るからサーカスたり得ているのだろう。ピエロは空中ブランコに飛び移った。

 ピエロは無事に反対側のブランコに順繰りに飛び移って行く。最後の台に降り立ったとき、一瞬足がぐらついたのが見えた。

 演技か。それとも、本当に危なかったのか。

 今度は空中ブランコ乗りたちがやってきた。中央のブランコに余裕で飛び移る。そこで逆さまになってブランコにぶら下がり、ピエロに飛ぶように促している。振り子のように行き来する中央のブランコに向かって、ピエロは馬鹿みたいに嘲り声を発する。『そんなもの簡単にできるよ』というパフォーマンスだろう。

 高鳴るドラムロール。

 ピエロが飛ぶ。走ったとき足が変な方に曲がった。ライトが彼を追う。

 ライトに照らされたピエロの額にきらりと汗が光った。S1席は伊達じゃない。はっきりと渋面まで見える。徐々に表情が消えていくのも――。

 彼の指はまったくといっていいほど届いていなかった。軌道がずれている。ブランコは落下する彼から離れていく。

 ネットはあったが、ピエロの細い身体はくじいた足の方に大きく傾いていた。ネットのないところをわざわざ選んだかのように落ちていく。

 ブランコ乗りがピエロの本名らしき名前を叫ぶ。同時に、中央のステージにバンと近くで雷が落ちたような音がした。極度に雷が近いときの鉄板が跳ねたような音だ。

 ステージに血煙が跳ね上がり、落下したのが金属などではなく人体だと分かった。

 そこからは阿鼻叫喚だった。子供たちの甲高い悲鳴がテント内を反響し観客の鼓膜を激しく震わせる。大人もあまりのできごとに席を立ち、前に出る野次馬と後方出口に殺到する者とが現れた。

 中央のステージにはピエロの顔の骨片のようなものや、ライトに照らされた赤々とした血が流れている。心なしか客席の方に流れてきているようだ。

 僕は彩を抱きしめる。さすがの彩でもショックを受けているだろうと思ったが、震えているのは僕だけだった。彩の茶色の瞳は黒く濁って見えた。まじまじとピエロを見つめている。放心状態だったのかもしれないと思ったが、実際はどうだったろうか。彩には表に出ない度胸のようなものがある。

 ステージ上に団員たちが集まる。ピエロを囲んで、安否を確かめている。

 テント内で人々が口々に騒ぎ立てるので、僕は耳がろうするような錯覚を覚えた。観客の悲鳴はやまず、胸を悪くした人の呻き声や咽び泣きも混じりはじめた。

 ピエロが担架で運ばれたときには、罵声も飛んだ。

「子供たちになんてものを見せやがるんだ!」

 出口は我先にこの惨事から逃れようとする客らでごった返していた。前の方のS1席にいる僕らはしばらく出られそうにない。

 公演中止のアナウンスが五分ほどして流れた。彩は無言で席を立ち、僕もそれに続いた。出口に出る間も客たちの悪態と悲鳴は続いていた。

 ほかの客らが一刻も早く事故現場から離れようとしているというのに、彩は帰り際にトイレで化粧を直してきた。きっと涙をごまかすためだろうと思っていたが、彩は見慣れない赤いグロスをつけて艶めかしくなっていた。

「動きの鈍いおじさんピエロなんて、いちいち気にしたら駄目だからね?」

 彩の肝の太さに参ってしまった。僕は自身の鳥肌をなだめるために腕をさすった。

 翌日、コンビニで買い求めた朝刊に『シルクドラディッシュ公演中事故死 サーカス団員の名物ピエロ 空中ブランコで転落死』と載っていた。僕は怖くてテレビを観ることも、スマホで事故のことを調べることもできなかった。

 彩に電話する。出ない。気が塞いでいるわけではないと思う。彩は自分のせいではないと思っている。ピエロが踏み切りに失敗したのを僕も見た。だが、その失敗の要因の一つに脳震盪は影響していなかったか?

 僕は怖いとは思いつつ、彩に連絡がつかない以上は自分で事故のことを調べるしかなかった。一語一句逃すまいと、手汗で新聞が濡れるぐらいに緊張しながら紙面を読み漁った。

 ピエロの死因は脳挫傷。落下によるダメージであることは明解だ。だが、もしあのとき彩がわざと足を伸ばさなかったら?

 一時的には脳震盪を引き起こしていたのだ。それが因果となり集中力を欠いたに違いない。直接的な死因と関わっていなくとも、彩がピエロを殺したのも同然だ。

 それからだ。僕が彩とLINEで積極的に連絡を取り合わなくなってしまったのは。

#創作大賞2025 #ホラー小説部門

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