神護寺へ行ってきた話
圧倒的文化財と静けさに包まれて——京都 「神護寺宝物虫払行事」体験記
5月5日、京都市右京区にある高雄山・神護寺へ行ってきました。
目的は、毎年この時期に行われる「神護寺宝物虫払行事」。お寺の宝物を虫干しがてら公開するという、ひとことで言えば素朴な行事。でもその中身が、ちょっとした展覧会どころではないのです。
早朝の大阪から、緑深まる高雄へ
朝7時44分、大阪・梅田を出る準特急に乗って京都・西院駅へ。 そこから少し歩いた西大路四条のバス停で、市バス8系統「高雄・栂ノ尾行き」に乗ります。市街地を抜け、住宅街を過ぎ、バスはぐんぐん山道を登っていきます。40分ほどで高雄に到着。
清滝川にかかる高雄橋を渡り、新緑がまぶしい山道を進んでいきます。しばらく階段を登ると、ようやく神護寺の山門が見えてきました。


偶然出会った修行僧たちの声に耳をすます
拝観料を支払い、山門をくぐると広がるのは静かな境内。
まずは金堂へ向かいます

金堂に入ると、ちょうど若い修行僧たちが10人ほど見学に訪れていて、お経を唱えている場面に偶然居合わせました。その若く澄んだお経が堂内に心地よく響く。お経を読む修行僧たちの後方に正座し、お経に耳を傾ける。思いもかけず心穏やかな時間を過ごさせていただく。
さらに、神護寺の僧侶が修行僧たちにご本尊の由緒や、神護寺の歴史について説明している場面にも立ち会うことができました。一般の拝観ではなかなか得られない、貴重な空気に触れる機会となり、静かな感動が胸に残りました。

絶景の中で「厄除けのかわらけ投げ」
境内の奥にある「かわらけ投げ」は、ちょっとしたお楽しみ。3枚200円の素焼きの皿を山の斜面から谷へと投げます。願いを込めて投げると、眼下に広がる新緑の景色と相まって、心がすーっと晴れていくような気がしました。


圧倒される「虫払行事」の宝物たち
そして今回の最大の目的、「宝物虫払行事」へ。書院に入り、拝観料1000円を支払って畳敷きの部屋へと進みます。ここで目にしたものは、まさに「文化財の宝庫」でした。

【国宝】
・弘法大師筆「灌頂暦名」
・源頼朝像
・平重盛像
・釈迦如来像
【重要文化財】
・源頼朝の書状
・北条政子の書状
・後宇多天皇の御宸翰
・神護寺絵図
ほかにも、後白河法皇尊影、後水尾天皇御影や、徳川家康・豊臣秀吉の朱印など、歴史の教科書レベルどころか、それ以上のものが並びます。
また思いもかけず、伊藤若冲の仁王像(双幅)が展示されていた。個人的に伊藤若冲が大好きなのです。皇室にゆかりがあり真言宗の神護寺に、伊藤若冲の仁王像があるのは若冲の経歴を考えても驚いた。ただ、作品自体はちょっとほっこりする仁王像二幅でした。ネットをいくら探しても情報も画像も出てこない幻の作品です。どのような由緒で神護寺にたどり着いたのか。想像するだけでも面白い。
ほとんどの宝物が、ガラスケースにも入っていない。ほんの数十センチの距離からじかに見られるのです。
「源頼朝像」の目の力強さを表すのが眼球の描き方にあると発見出来たりする。他にも、「源頼朝像」と「平重盛像」の着物の柄が明らかに違っていることが容易に比較できる。それも、これら宝物がまるで知人の家で見せてもらっているかのような親密さで観賞できてしまうからである。ちなみに、「平重盛像」といえば、あのフランスのルーヴル美術館がミロのヴィーナスと引き換えに貸出を希望した超一級の国宝である。
そして、訪れていた見学者の少なさも信じられないものでした。世界遺産級の宝物を数人で独占するような体験——これは正直、「やばい」です。
感動と混乱が同時に押し寄せる
すべてを見終えたとき、ふと立ち止まって息を整えました。あまりの情報量と感動に、めまいがするほどでした。 「お寺のちょっとした行事ですよ」といった顔をして、実は国宝のオンパレードを惜しげもなく見せてくれる神護寺。そのギャップもまた魅力です。
静けさと新緑に包まれる、特別な時間
5月、ゴールデンウィークの神護寺は、新緑が目にまぶしいほどに美しく、山寺の空気を一層清々しくしてくれます。
同じ京都市内とは思えないほど、都心部の喧騒とは無縁の場所。ただしアクセスは決して便利とは言えず、山道をしっかりと歩く必要があります。周囲に飲食店は少なく、コンビニも見当たりません。そのせいか、観光客も限られていて、ここにはまだオーバーツーリズムの影すらありません。
あまりに素晴らしすぎて、「だから気軽には来ないでください」と、つい口にしたくなるような、静かで大切にしておきたい場所です。
なお、神護寺の宝物虫払行事は、毎年5月1日から5日までの期間に行われています。
弘法大師霊場 遺迹本山 高雄山 神護寺
京都市右京区梅ヶ畑高雄町5番地
[アクセス]
JR京都駅からJRバス「高雄・京北線」で約50分
阪急烏丸駅、地下鉄四条駅から 市バス8号系統で約45分
ともに「高雄」下車、徒歩約20分

