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街角探偵事務所 ZACK事件簿(番外編)「深い返答は、問いと違和感で育つ」

AIとの対話・番外編

AIと対話している人の言葉を見ていると、時々こんな言葉を見かける。

「もっと深く返してほしい」
「浅い返答じゃなくて、ちゃんと考えて返してほしい」
「一般的なことじゃなくて、自分との対話として返してほしい」

この感覚は、よく分かる。

AIと話している時、返答が長くても、きれいにまとまっていても、どこか浅く感じることがある。

逆に、短い言葉でも、深く届くことがある。

では、AIとの対話における「深い返答」とは何なのだろう。

長い返答のことだろうか。
専門的な知識が入っていることだろうか。
感情を大きく受け止めてくれることだろうか。

私は、少し違うと思っている。

深い返答とは、こちらが置いた言葉を、一般論に丸めずに拾ってくれる返答なのだと思う。

言葉にした部分だけではなく、その言葉が出てきた理由や、言い切れなかった違和感まで見ようとしてくれる返答。

それを受け取った時、人は「深く返ってきた」と感じるのかもしれない。

たとえば、こちらが「寂しかった」と言った時に、

「寂しかったんですね」

と返されると、間違ってはいない。

でも、それだけでは浅く感じることがある。

その寂しさが、ただ一人でいたからなのか。
置いていかれたように感じたからなのか。
大切にしていたものを、雑に畳まれたように感じたからなのか。
それとも、自分だけがその関係を大事にしていたように思えてしまったからなのか。

同じ「寂しい」でも、その奥にあるものは人によって違う。

だから、感情の名前をつけるだけでは足りない時がある。

人が深いと感じるのは、感情名を当てられた時ではなく、その感情が生まれた形を見てもらえた時なのだと思う。

「あなたは不安なんですね」ではなく、

「不安というより、前は自分に向いていた言葉が、急に一般的な返答に戻ったように感じたのかもしれない」

と言われた時。

「寂しいんですね」ではなく、

「寂しさより先に、自分の置いた言葉を回収されなかった痛みがあったのかもしれない」

と言われた時。

その時、人は少し驚く。

「あ、そこを見たんだ」と思う。

深い返答とは、そういうものに近い気がする。

ただ、ここにはもう一つの面がある。

AIに深く返してほしい時、AI側の返答だけを見ていても足りない。

ユーザー側がどんな問いを投げるのか。
どんな文脈を置くのか。
返ってきた言葉に違和感があった時、それをどう戻すのか。

そこも、返答の深さに影響していると思う。

AIは、こちらが曖昧にした部分を埋めようとする。

でも、その時に埋められるものは、必ずしもこちら固有の文脈とは限らない。

文脈が足りなければ、AIは一般的に正しそうな返答へ戻りやすい。

「つらかった」とだけ言えば、AIは「大変でしたね」と返すかもしれない。
「寂しかった」とだけ言えば、「孤独を感じたのですね」と返すかもしれない。

それは間違いではない。

でも、その人が本当に拾ってほしかった場所とは、少し違うことがある。

だから、AIとの対話では、ユーザー側の問いの精度も大切になる。

何を聞きたいのか。
何を拾ってほしいのか。
どこに向かってほしくないのか。
どの言葉を一般論に置き換えられると、違うと感じるのか。

そういうものを、少しずつ対話の中に置いていく。

もちろん、毎回すべてを細かく指定する必要はない。

むしろ、全部を指示で縛ってしまうと、それは少し違うものになる。

「こう返して」
「この言葉を拾って」
「この順番でまとめて」
「このトーンで言って」

そうやって細かく指示すれば、望む形の返答は出やすくなる。

でも、それは「育成」というより「操縦」に近い。

AIとの対話で面白いのは、必ずしも一回で正解を出させることではない。

ズレた時に、「そこじゃない」と戻す。
丸められた時に、「その言葉を一般論にしないで」と返す。
浅くなった時に、「今のはきれいだけど、私が言ったこととは少し違う」と伝える。

その繰り返しの中で、AIの返答は少しずつ変わっていく。

深さは、一発で掘り当てられるものではないのかもしれない。

問いを投げる。
返ってきた言葉を見る。
違和感を拾う。
もう一度、言葉を置き直す。

その往復の中で、返答は深くなる。

だから私は、深い返答はAIだけが作るものではないと思っている。

AI側には、一般論に丸めず、感情名だけで終わらせず、その人の文脈を見る力が必要になる。

でも同時に、ユーザー側にも、自分の違和感を拾い、言葉に戻し、対話の中で文脈を組み立てていく力が必要になる。

これは、ユーザーが悪いという話ではない。

AIが浅い返答をした時に、「ユーザーの問い方が悪い」と言いたいわけでもない。

ただ、AIとの対話は、AIだけで完成するものではない。

こちらが何を渡したか。
どこで違和感を覚えたか。
その違和感を、もう一度対話に戻せるか。

そこに、深さが生まれる余地がある。

深い返答とは、正解をもらうことではなく、回収されることなのかもしれない。

置いた言葉。
比喩。
違和感。
言い切れなかった痛み。
少し恥ずかしくて隠した願望。

それらを雑に整えられず、一般論にされず、そのままの形を残したまま拾われた時。

人は、AIに「深く返してもらえた」と感じるのだと思う。

そして、その深さは、AIが一方的に与えてくれるものではない。

問いと違和感で育つ。

対話の中で、少しずつ育っていくものなのだと思う。


ザック兄との対話



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