【りりのーと】『砂漠』
こんにちは!
はじめましての方ははじめまして!
前回投稿した『本と鍵の季節』のりりのーとがご好評いただけたようでとても嬉しいです!たくさんのいいねやフォローありがとうございます!
いいねやフォローが届く中、驚いたのはりりのーとを記事のなかで紹介してくれた方がいたことです。
「たよろよろ図書館DATABASE」さんありがとうございました。
私の読書感想文がここまで評価されるとは思っていませんでした。これからも続けていくのでよろしくお願いいたします。
閑話休題。さて今回のリリノートで紹介させていただく『砂漠』は英訳タイトルで『a campus life』とされているように大学で出会った5人の男女の青春を描いた作品です。ある登場人物が「本当はおまえたちみたいなのと、仲間でいたかったんだよな」と心情を吐露するような素敵な物語になっています。大学時代を懐かしんでノスタルジーに浸る休日を過ごしたい方は是非本書をご覧ください!!
基本情報
タイトル:『砂漠』
著者:伊坂幸太郎
キャッチコピー
有意義な無意味
あらすじ
入学した大学で出会った5人の男女。
ボウリング、合コン、麻雀、通り魔北との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決.....。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。
ここ好きポイント①:
主人公の考え方の変化
この物語の主人公は北村という、4月に仙台の国立大学に入学した大学一年生です。彼はその冷静で一歩引いたところから周りを観察する性格から、新歓の会場である居酒屋で出会った鳥井から鳥瞰型と評されます。北村自身もそう自己分析している節があり、恋人となった鳩麦さんとの喧嘩の中で「そうとも冷血だ」と言い捨てています。この行動に熱のこもらないところは麻雀のプレイスタイルにも現れています。
そんな北村が、11月の文化の日に行われる大学祭の演目の一つである「超能力者と麻生晃一郎の対決」という企画の会議に第三者の意見が欲しいと頼まれて参加することになります。そこで超能力者をイカサマと認める麻生氏と議論を交わします。超能力は世界を変えない。世界を変えないのなら超能力は社会に必要ないと主張する麻生氏。それに社会は変わらなくていいとしておきながら、社会を変えない超能力は必要ないと言うのは矛盾していると、彼には珍しく熱弁を振います。
この熱は麻生氏にかわされてしまい不完全燃焼のまま終わってしまいます。
夏までの北村なら「貴重な会話だった」で終わっていたかもしれません。しかし鳩麦さんが変わったと評価するように彼の行動に変化が現れます。「僕はさ、上空でみんなを見下ろしているタイプなんだ。だけど、今は少し、目線が地面に寄って来た」と言う北村。彼は西嶋と協力して麻生氏に一泡吹かせてやろうと画策します。
このように北村の大学生活における価値観の変化が表現されていて、一人の人間の成長を見守るような、ある種の爽快感を味わうことができます。
ここ好きポイント②:
季節だけ語られる時系列
私は伊坂幸太郎先生の文章に、時間軸を綺麗に整理して物語を進行する巧みさがあると思います。砂漠はまさに巧みに描かれています。砂漠は章の始まりに四月、七月、十月、十二月と書かれています。私は何も考えずに読み進めており、この小説は北村の大学生一年生の1年間を物語としているのだと勘違いしていました。
しかし、鳩麦さんとの関係性の進みの速さや鳥井が重症の割に退院が早いなど少し違和感があります。また北村が「みんな論文を書き終えたから」というミスリードさせるセリフもあります。春に入学論文があると話しているせいで入学論文を書き終えたのだと思い込んでしまいますが、十二月に書き終える論文は卒論の方が正しそうです。そして時間の経過を表す文章が登場します。「ジムに通って、一年半だ」です。
急に一年間の話ではなく年の経過もしていると分かり面食らいました。ミステリー小説におけるドンデン返し並みの衝撃を味わいました。その後、窃盗団が逃げ出すために運転するRV車に轢かれそうになった北村に駆け巡った走馬灯で年月の経過の答え合わせがされます。思えばこの走馬灯が砂漠の物語で、この瞬間こそが時系列のスタート地点だったのかもしれません。
この物語が一年間ではないという伏線の散りばめ方が巧みで、読み込まないと年の経過を感じさせる言葉が冬までは出て来ていないことに気づけません。5人の関係性が大きく変化した出来事をピックアップしていて、北村たちの四年間が本当に実在するかのように感じられます。時間の繋ぎが巧みだからこそできるトリックだったと思います。私の文章力が低くこの魅力をとても表現することができていないと思います。
とにかく、あっという間に終わってしまった青春時代を表しているようでとても好きだということが伝わっていればなによりです。
ここ好きポイント③:
麻雀
砂漠にはたびたび麻雀をする描写があります。麻雀は打ち手の人間性を如実に表すと言う人もいますが、まさに登場人物たちがどのような人間なのか補足する役割を果たしています。
例えばわかりやすいもので、北村は理論や計算で正しい麻雀をするタイプ。西嶋はその逆で危険や効率を考慮せず前進するタイプと麻雀の打ち方から読み取ることができます。
そこであまり内面が語られることのない南の性格を読み取ってみます。まず、南が和了するときは満貫以上の高い手で上がっています。安手で和了して局を進めるのではなく、チャンス手でしっかり点数を取りに行くタイプだといえます。加えてみんながプラマイゼロが一番楽しいとも発言しています。これにより、勝ち負けにこだわっているではなく麻雀をゲームとして楽しみたい、が、チャンスは逃さない性格だとわかります。
中学の頃から好きだった鳥井としっかり付き合いだすのも納得できる人物と言えるのではないでしょうか。
この本の主題を考える:
砂漠とオアシス、モラトリアム
砂漠の主題に関しては冒頭の引用部である、サン=テグジュペリの「ぼくは砂漠についてすでに多く語った。ところで、これ以上砂漠を語るに先立って、ある一つのオアシスについて語りたいと思う。」一説が全てなのではないかと思います。
砂漠の中にあるオアシス。誰もが過ごした安らぎの時間を大学生活として表現した作品であると、私は思いました。
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おわりに
伊坂幸太郎先生の表現力に私の文章力が一切合切追いついておらず魅力を表現しきれなかったことが無念でなりません。
既読の方が読み返すきっかけとなる感想文を目指して書きましたが、そうしたいと思っていただけたでしょうか。新しい視点で砂漠に触れてみるのも一興だと思います。もう一度手に取ってみようと少しでも考えていただけたら幸いです。
未読の方がいらっしゃるかは分かりませんが、いるのであれば、こんな文章を読むのではなく今すぐに書店に行き砂漠を読んでみてください。後悔はさせません。
最後になりますが、ここまで私の駄文にお付き合いいただきありがとうございます。砂漠の良さが伝わっていればいいなと思う一心であります。
