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やる気教室第4話 終わらせるより手をつけよう



〈前回までのあらすじ〉

県内有数の進学校である岩晴(いわはれ)高校の1年生の成瀬波 成瑠(なせば なる)は、勉強のやる気がでなくてこまり果て、学校の相談室へと足を運ぶ。

しかし、そこにいたのはネット麻雀をしてサボっている相談員のもぐちゃん先生だった――?

「やる気がでない人間のプロ」だと豪語するもぐちゃん先生の相談室に行き、なるはもぐちゃん先生からやる気の出しかたを学ぶようになる。


成瀬波 成瑠(なせば なる)
岩晴高校1年生。やる気がでず、勉強に手をつけられなくて悩んでいる。1日の平均勉強時間は30分未満で、課題を〆切までにだせないこともある。
かき氷アイスのみぞれ味が好き。


もぐちゃん先生
岩晴高校の相談員。「やる気がでない人間のプロ」を名乗っており、やる気のはなしをすることにやる気があふれている。
デスクワークのやる気がでず、相談室でサボっている。
ハーゲン○ッツのクッキー&クリームしか勝たん。




~ある日の相談室にて~


「数学の課題のやる気がでません……」


「あ~そうだな〜、やる気でないよな~~」


もぐちゃん先生はデスクの椅子をのけぞらせ、上を向いてぼけーっとしている。
もぐちゃん先生も仕事のやる気がでないらしい。


「あ、そうだ。Excelのこの一列だけやったら逃げちゃお。
はいやった。もぐちゃん先生は仕事に手をつけてえらいのでアイスを食べま~す」


そう言うと、もぐちゃん先生は冷蔵庫からアイスを取りだす。


「あ~おいし~~!」


「もぐちゃん先生、生徒が課題のやる気がでなくてこまっているときに堂々とアイスを食べないでください」


「なるも課題に手をつけたらアイスをあげるぞ?」


「それがやる気がでないんですよ。はぁ……」


わたしはため息をつく。


「あ、いいこと思いつきました」


「なんだ?」


「晩ごはんまで先延ばしにして、晩ごはんを食べたらやるんです! それも無理なら、明日の朝早起きしてやるとか! ほら、ギリギリになると火事場の馬鹿力でがんばれることってありません?」


「なる、それは地獄への道だ。やめたほうがいい」


「なんでですか? やる気をだすいい案じゃないですか?」


「短期的にはそれでいいかもしれないが、長期的には自分の脳を傷つけるからだ。

なるが今回の課題をギリギリで勢いでやるとする。このとき、交感神経がはたらいてなるのからだは興奮モードになる。課題が終わったら、興奮モードだったからだは疲れる。するとやる気がだしにくくなる。

そしてまた課題を勢いで終わらせる。課題を終わらせたなるは疲れてやる気がでない。

そういうことを繰り返しているうちに、だんだん課題が自転車操業になってくる。火事場の馬鹿力、つまりストレスホルモンも無限じゃない。これまで交感神経をはたらかせてきたツケがからだに疲労として溜まっていく。結果、脳が傷ついてやる気がでなくなっていくんだ」


POINT:
ギリギリまで先延ばし→火事場の馬鹿力で課題をこなすのは、長期的にはやる気がでない脳を作ってしまう


「でももぐちゃん先生、いまやる気がでないんですよ。数学の課題を終わらせなきゃいけないのに」


「なる、やる気がでない原因はそれだ。『終わらせなきゃ』と思うからやる気がでないんだ


「え? でも、実際課題を終わらせないと提出できませんよね?」


「もぐちゃん先生がさっきなんて言ったか覚えているか?」


「火事場の馬鹿力に頼るのはやめたほうがいい?」


「違う、そのまえ!」


「その前? 『課題をやったらアイスをあげる』?」


「違うぞ、なる。もぐちゃん先生は『課題に”手をつけたら”アイスをあげる』って言ったんだ」


「あっ、たしかに。もぐちゃん先生も、ちょっと仕事に手をつけただけでアイスを食べてました。ぜんぜん仕事が終わってないのに」


「最後の一言にトゲがないか?

いいんだよ、課題を終わらせるにはまず手をつけることが重要なんだ。なる、その課題は何問あるんだ?」


「だいたい10問くらいです」


「いまなるは、その10問くらいをぜんぶ終わらせるイメージを持ってしまっているんだ。そんなのめんどくさいに決まってるだろ。

そうじゃなくて、まず1問目を読むことだけやる意識をもつんだ。それだけやったら、もうやめてしまっていい」


「なんか、こないだ教わったベビーステップに似ていますね」

※ベビーステップについては第3話参照


「いかにも。根本的な考えかたはおなじだ。勉強は手をつけるのがもっとも大変だ。手をつけてさえしまえば、5割終わったも同然なんだ。

『とりあえず問題集だけ開いて逃げちゃおう』
『1問だけ解いて逃げちゃおう』

こういう意識がたいせつなんだ」


「終わらせることを想像しておっくうになるまえに、まず手をつけることがたいせつなんですね」


「『終わらせなきゃ』と思うとしんどいけど、『手をつける』だけなら簡単だろ?

それに、人間ははじめてしまえば終わらせたくなる生き物だ。手をつければつけるほど、課題に取り組むのがらくになる。

量が多い課題も、ひとつひとつこまめに手をつけていればかならず終わる」


「たしかに理にかなってますね。わたし、いままで課題を『終わらせなきゃ』と思って、そう思うと気が重くて……。早くやったほうがいいってわかっていても、課題を開くのを避けてました」


「課題を進めるときも、先延ばしにして一気にやるんじゃなくて、早い段階、できれば課題がでた初日に手をつけて、それから毎日少しずつ手をつけるのがおすすめだ」


POINT:
課題は「終わらせる」のではなく「手をつける」。手をつけられれば5割終わったも同然
課題はできれば初日に手をつけて、毎日少しずつ手をつけよう


「じゃあわたしも、最初の問題だけ解いて、アイスをもらいますね」


そう言って、わたしは問題集の1問目を解いた。


「よくやったじゃないか、なる。ほれ、アイス食べるか?」


「あっ待って。もぐちゃん先生、そのアイスは冷蔵庫に戻してください。せっかく手をつけたのでもう少しやっちゃいます」


「それならがんばれ、なる。

......わたしも仕事しないとなあ」


~今回のPOINT~

POINT①
ギリギリまで先延ばし→火事場の馬鹿力で課題をこなすのは、長期的にはやる気がでない脳を作ってしまう

POINT②
課題は「終わらせる」のではなく「手をつける」。手をつけられれば5割終わったも同然
課題はできれば初日に手をつけて、毎日少しずつ手をつけよう


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