【Netflix】「とんでもカオス!:お騒がせ市長」不祥事での政治家の「開き直り方」を学べるドキュメンタリー
【概要】
とんでもカオス!:お騒がせ市長
TRAINWRECK : MAYOR OF MAYHEM
2025
16+
ドキュメンタリー
ぶしつけでありながら民衆に愛されるトロント市長として、カナダの政界に衝撃を与えたロブ・フォード。だがコカイン吸引映像の流出をきっかけに、転落の一途をたどることになる。
(Netflix公式サイトより)
【評価】
6月17日に世界公開されたNetflixオリジナルドキュメンタリー。
「とんでもカオス!(TRAINWRECK=大騒ぎ)」というドキュメンタリーシリーズの3本目。
以下、ネタバレあり。
ネタバレ、というか、実際に起こって世間に知られたことなので、ネタも何もないが。
とはいえ、私はこのロブ・フォードという人、初めて知りました。
最初に採点を言うと、100点満点で60点。
そんなにすごいドキュメンタリーというわけではない。
ロブの兄のダグ・フォードが、いまトロント市をふくむオンタリオ州首相なので、カナダでは大いに話題になっているでしょうが。
で、偶然にも、日本も選挙の季節で、タイムリーだったりする。参考になるかもしれない。
それに、1時間以内にサクッと終わるので、気軽に見れます。
ロブ・フォードは、2010年から1期(4年)、トロント市長を務めた人。
トロント市は北米第4位でカナダ最大の都市(カナダの首都はオタワ)。
自動車の「フォード」とは関係ないけど、親父が実業家の金持ちで、2代目だったりする。
政治スタンスは「右派ポピュリスト」。
だから「小トランプ」みたいな感じ。
「左翼マスコミ」を敵に回して、「暴言」で民衆の支持を得た。
Netflixも、番組のサムネイルで彼をトランプっぽく見せている。実際には外見はそんな似てないけど。
それに、そんなに政治的ビジョンも、実力もない。その分、もっと人間的な愛嬌がある人。

トロント市長在任中の2013年、彼がコカインを吸引している動画が出回り、騒動になる。
ロブ・フォードは、最初は否認したが、結局事実を認めた。
しかし、「たった一度の過ち」と開き直って、辞任は拒否。議会、マスコミ、地元警察と大揉めに揉めた。
その時のドキュメンタリーです。
ロブ・フォードの見事な開き直りぶりが見どころです。
ドキュメンタリーの中で、知人が彼を評してこう言います。
「普通、政治家は、不利な情勢では退く。しかし、彼は、不利な時に前に出る。それが彼のスタイル」
政治家の皆さん、ここが参考になるところです。
そして、それは成功して、彼は次の市長選にも出馬、再選を目前としていたのですがーー
ーーという話。
私が面白かったのは、地元マスコミの対応でした。
最初、ロブ・フォードに批判的な地元紙の記者のもとに、市長の「コカイン吸引」動画が持ち込まれる。
この地元紙記者が女性で、しかもすごい美人なのね。イソコも顔負け。それもこのドキュメンタリーの見どころ。

それはともかく、記者は動画を見せられるのだけど、「動画を10万ドルで買え」と言われる。
しかし、
「アメリカのタブロイド紙ならともかく、私たちカナダのメディアはニュースを買わない(ネタにカネを払わない)(`・ω・´)キリッ」
ということで、みすみす特ダネを見逃すわけ。
ネタにカネを払わない、というのは日本でもジャーナリズムの基本ルールですね。もしカネを払うと、カネ目当てでネタを捏造して持ってくる奴がいるから。
まあ、この場合は金額が大きすぎたこともあるけど。金額交渉もルール上、できない。
でも、記者としては悔しいわけです。
そして、数カ月後、同じ動画がアメリカの暴露サイトで扱われた後に、「私も見た」という形で記事にしました。
で、ロブ・フォードがコカイン吸引を「たった一度の過ち」と謝罪したその後、「また吸っていた」という動画が、同じ記者に持ち込まれる。
記者は(新聞社を変わっていたけど)、今度はネタを「買う」わけです。
動画のスクリーンショットを1枚2000ドルで5枚買って、特ダネとして記事にします。
おいおい、ジャーナリズムのルールはどうなった、とツッコミたくなるわけですね。
でも、これはよくわかる話です。
最初の場合は、金額が大きすぎることもあるけど、動画が本物かどうか、確信が持てないわけですね。フェイクかもしれない。
しかし、2度目の場合は、本人が認めた後だから、本物に違いない。
この特ダネ、1万ドルくらいなら、払ってもいい、となる。
日本のマスコミでも、同じような対応になるのではないかと思います。そのあたりがリアルでした。
2度目の動画が発覚したことによって、ロブ・フォードは、相変わらず辞任は拒否しつつ、「依存症施設に通う」と宣言。
自分は薬物依存の「患者」なんだ、と被害者ポジションをとるわけですね。
それが成功して、民衆は「ロブ、がんばれ」となる。
スキャンダルや自分の弱みを、こういうふうに自分の得点にしていくところが、ポピュリストの本領発揮です。
このあたりを、山尾しおりには学んでおいてほしかった。
もともと、このロブ・フォードという人は、政治的ビジョンとか、政策とか関係ない人で。
集会に集まった人に、バーっと名刺を配って、
「なんか困ったことがあったら、連絡して」
と言う。
そして、家の修繕でも、商売の人手不足でも、ロブ・フォード本人が出向いて、手伝うわけです。
そういうところで人気を得た政治家だから、民衆も寛容なんですね。
ロブ・フォードは、不祥事にもかかわらず、市長に再選されそうだったんですが、選挙運動中に難治のガンが発見されました。
治療に専念するため、市長候補は兄のダグ・フォードに譲り(僅差で落選)、自分はトロント市議選に移って、見事当選します。
でも、2016年、46歳で、ガンのため亡くなりました。
不祥事以外、とくに政治的実績はないんですが、なんとなく「いい奴だった」ということでドキュメンタリーは終わります。
*ロブの兄、ダグ・フォードは、上述のとおり現在オンタリオ州首相(進歩保守党党首)で、亡き弟の不祥事を蒸し返したNetflixドキュメンタリー製作陣を「嫌な人たち(disgusting people)」と非難し、自分はドキュメンタリーを見るつもりはないと17日の記者会見で述べています。
<参考動画>
↓ドキュメンタリーに合わせて配信された「ロブ・フォードのキチガイじみた7つの瞬間」
7 Craziest Rob Ford Moments (Watch Mojo 2025/6/19)
*「ボブ・マーレー記念日」にちなんで議場で「ワン・ラブ」で踊り狂う姿など、彼の型破りな面が見られる

