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ビッグバンの時に全て決定している ノーベル賞学者の「量子論は間違ってる」説

量子論は間違っている、と、ノーベル物理学賞をとったオランダの学者が言って、話題になっています。

1999年にノーベル賞をとり、今年「科学のアカデミー賞」と言われるブレークスルー賞をとったヘーラルト(ジェラルド)・トホーフト氏(79歳)です。


量子力学は、量子が確率的に存在するように言っているが、そんなことはありえない、と。

複数の状態が「重なり合って」存在するなんて、ない、ない、と。

生きた猫と死んだ猫が重なり合っている状態などあるもんか。生きてるか死んでるか、どちらかだ。マクロでもミクロでも同じ。

量子論の、非日常的で「神秘的」側面は見せかけだけで、それが人々を惹きつけているのは間違っている、と。


量子力学は、リアルな現実を描いていない。量子力学の波動関数の背後に、真の(存在論的)波動関数が存在する。

ものごとは、確率的に決まるのではない。最初から、ビッグバンの時から、決定論的に決まっている。

「自由意志」は実在しない。すべてはあらかじめ決まっている。

ただ人間が、その決定の初期条件のさまざまな情報を知らないだけだ。

ーーというようなことを言っている。


オレもそう思っていた!

オレも、量子力学とやらは、あやしいとニラんでいた。

でも、オレはバカだから、バカと思われるだけだから、言えなかった。

こんなえらい学者からお墨付きをもらえて嬉しい。


(こういう「超決定論」は、昔は「ラプラスの悪魔」と呼ばれていた。都築卓司のブルーバックスの名著『不確定性原理』の中に出てきた。でも「ラプラスの悪魔」という言葉は、もう使われないようです。)


トホーフトは、以前から同じことを言っていたのですが、今年ブレークスルー賞をとり、さまざまなインタビューで「量子力学は間違っている」論を語ったから、改めて話題になっています。

私は、トホーフトという人も、彼の考えも、今回初めて知りました。

私が彼の考えを知ったのは、以下の動画からです。英語ですが、翻訳ソフトの助けを借りて見ました。

トホーフトの理論を説明した最初の動画は60万視聴を超える人気で、2番目の動画にはトホーフト自身が出演して質問に答えています。


このノーベル賞受賞者が量子力学をナンセンスだと考える理由(Sabine Hossenfelder 2025/5/19)


The Nobel Laureate Who (Also) Says Quantum Theory Is "Totally Wrong"(Curt Jaimungal 2025/8/13)



実際に彼が言っていることを、インタビューから翻訳してみます。(翻訳はグーグル先生ですが)


世界、物理学、そして物理学に関連する他の分野について、私はあらゆるものがもっと論理的で、もっと直接的で、もっと「現実的」であるべきだと考えています。

量子力学の論文を書く人の多くは、量子力学に神秘的な感覚を持ちたがります。まるでこの分野には何か奇妙な、ほとんど宗教的な何かがあるかのように。私はそれは全くの間違いだと思います。量子力学は、ごく普通の物理的効果を記述するために用いられる数学的手法に基づいています。物理世界自体は、ごく普通の、完全に古典的な世界だと私は考えています。

My way of thinking about the world, about physics, about the other disciplines related to physics is that everything should be much more logical, much more direct, much more “down to Earth.”

Many people who write papers on quantum mechanics like to keep some sense of mysticism about it, as if there’s something strange, almost religious, about the subject. I think that’s totally false. Quantum mechanics is based on a mathematical method used to describe very ordinary physical effects. I think the physical world itself is a very ordinary one that is completely classical.


問題は、世界が今でも私たちにとって複雑に見えていることです。それが、私たちがこのような状況に陥っている理由です。(中略)

標準モデルは量子力学に基づいており、粒子が互いに接近して散乱すると何が起こるかを教えてくれます。しかし、粒子は様々な方法で散乱し、その散乱方法について多くの選択肢を持っています。標準モデルは、それについて確かな予測を与えません。統計値しか与えません。標準モデルは、物事の統計を扱う素晴らしい理論です。しかし、この理論は自然がどのような選択をするのかを無限の精度で教えてくれるわけではありません。ある確率振幅で、これらの様々な可能性が存在するということだけを教えてくれます。それが私たちが知っている世界です。私たちは自然法則をこのように表現しています。しかし、それは自然の法則そのものではありません。

I’m talking about steps that would exploit the fact that the whole world is very simple and straightforward. The trouble is, the world still appears complicated to us now, which is why we’re in this situation.

You already mentioned the Standard Model, this marvelous discovery from the previous century. It’s an instructive example because, basically, it’s very simple, but if you look deeper, you see there’s something very important missing from it. The Standard Model is based on quantum mechanics, and quantum mechanics tells you what happens when particles approach one another and scatter. But they can scatter in many different ways; they have a large number of choices about it, and the Standard Model doesn’t give any sound prediction there. It gives you only statistics. The Standard Model is a fantastic theory that handles the statistics of what things are doing. But the theory never tells you with infinite precision which choice nature makes; it tells you only that these different possibilities are there at a certain probability amplitude. That is the world as we know it. That’s how we know how to phrase the laws of nature. But it’s not the laws of nature themselves.


私は、私たちはこうした考え方を始めるべきだと言っているのです。量子力学はあまりにも美しくて間違っているはずがないと考えて拒否する人もいますが、私は量子力学は、物体がぶつかったときにどのような基本法則に従うかを最終的に示す正しい方法ではないと考えています。

I’m saying we should start to think in these ways. People refuse because they think quantum mechanics is too beautiful to be wrong, whereas I believe quantum mechanics is not the right way of ultimately saying what basic laws objects obey when they hit each other.

Quantum Physics Is on the Wrong Track, Says Breakthrough Prize Winner Gerard ’t Hooft (サイエンティカアメリカン 2025/4/7)


これは、「神はサイコロを振らない」と言ったアインシュタイン説に戻る、ということですね。

非決定論的な量子力学への不信感を示した言葉ですが、アインシュタインの表現は、ちょっと正確ではない。


われわれがサイコロを振るとき、サイコロの目は「偶然に出た」と思いがちだ。

しかし、実際には、サイコロの出る目は、サイコロをてのひらの中で転がして手から離れた瞬間に決定している。

もし、手の傾きとか、摩擦係数とか、サイコロの微細な物理形状とか、手を離れる瞬間のサイコロの位置とか、床の物理特性とか、あらゆる初期の情報が与えられれば、サイコロの出る目は正確に予測できるはずです。


同じように、われわれ人間の振る舞いをふくめ、宇宙のあらゆることは、ビッグバンの時から決まっている。

自民党の総裁選が前倒しになるかも、誰が新総裁になるかも、もし自民党員すべての生理的・心理的状態に関する完璧なデータが与えられたら、正確に予測できる。その意味では、もう自民党の新総裁も決まっている。

問題は、そういう完璧な情報を、人間は知り得ない。少なくとも今のところは、ということですね。


世界は単純である。でも、人間は無知だから、複雑に見えてしまうだけ。

たぶん、そうだと思うんですね。

我田引水すれば、私が少し前に書いた「人間は「文化の産物」ではない」という記事も、そういうことを言いたかったわけ。


トホーフトは、上の2番目に挙げた動画のインタビューの中で、「単純なものより複雑なものをリアルだと思ってしまう」錯覚について語っています。

誰の言葉だったか忘れましたが、「天才とは、複雑さを理解できないこと」という言葉がありました。


正直、物理学や量子力学の専門的な話になると、私にはちんぷんかんぷんですが。

トホーフトの本とか読みたいと思ったんだけど、日本では出ていないようです。

トホーフトの理論の、専門的なことについては、noteで福岡浩二さんがいろいろ解説してくれてますので、ご参照ください。



<参考>


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